時代をつないで 大阪の日本共産党物語

第67話 リクルート・消費税・天安門事件

リクルート疑獄  

――吉井 江副氏は、あなたとは特別の関係にある。リクルートコスモスの非公開株の譲渡については、話を聞いておられたんじゃないですか。
――宮沢 秘書の友人の河合という人が、名前を使わしてくれないかといったので、私の方からしたことではない。
 88年8月予算委員会。リクルート疑惑を追及する吉井英勝に、冷静な答弁で知られる宮沢喜一蔵相(当時)が顔色を変えて興奮し、たしなめられる場面がテレビに映し出されました。
 リクルート社の会長が86年、子会社の未公開株を、自民党首脳をはじめ日本共産党以外の議員や官僚らに譲渡し〝濡れ手に粟”の大儲けをしたリクルート疑獄。上田卓三衆院議員(社会党)、原田憲衆院議員(自民)、矢野絢也(公明)、塩川正十郎(自民)など多くの大阪の政治家も事件に名を連ねました。

消費税への怒り  

 消費税を許さない追及の最中に発覚した疑獄。「与党をリクルートで攻め立てて、消費税導入なんか強行できない情勢をどうつくるかということで頑張った」と吉井は振り返ります。党国会議員団は、関係者の証人喚問や株譲渡者の名簿公表を求めるなど疑惑の解明を求め、政府・自民党を追い詰めます。しかし政府は実質150日間もの会期延長まで行い、88年12月、消費税導入を強行。金権腐敗への怒りと相まって、国民からごうごうたる批判が起こりました。
 89年3月の千葉県知事選、4月の名古屋市長選で日本共産党だけが推薦する候補が「オール与党」と対決し、4割以上を獲得、竹下登内閣に衝撃が走ります。メディアは「地殻変動」と書きました。

「天安門」の逆風  

「リクルート疑惑解明」「消費税許さん」と8万人が怒りの唱和をした府民総決起集会と、集会後のデモに立つ日本共産党の国会議員ら=88年
10月30日、大阪城公園

 7月の参院選で府党は、「消費税廃止の確かな力」「きれいな政治は大阪から」と吉井再選を目指します。しかし吉井への「追い風」と言われた空気は、89年6月4日、中国指導部が、民主化を求める学生や市民の平和的デモを武力弾圧した「天安門事件」で「逆風」に一変します。
 日本共産党は5日付「赤旗」で声明を発表し、中国の党と政府を厳しく批判。府党組織は連日、「社会主義的民主主義をふみにじる中国党・政府指導部の暴挙糾弾」「武力弾圧をただちに停止せよ」と訴え、党中央声明を載せた「赤旗」号外を配布。6日夜の「参院選勝利6・6青年学生総決起集会」(中之島公会堂)でも抗議文を採択。大阪安保や日中友好協会は中国領事館(大阪市西区)へ抗議に。大阪府立大学生自治会連合は中央執行委員会名で抗議声明。17日、靭公園(同西区)に300人の青年学生が緊急抗議集会に集まります。
 他党は「内政干渉はしない」「収拾過程を見極めよ」など中国には及び腰の一方で、「共産党の恐るべき姿を見せつけられた」(自民)「これが共産党の本質」(公明)など、参院選で事件を最大限利用します。「自由新報」号外は、天安門広場の写真を載せ「自由を弾圧する共産主義」とする異常なものでした。
 投票日6日前の緊急府活動者会議で菅生厚府委員長は、「中国問題を甘く見てはならない」として、天安門事件への踏み込んだ解明の必要性を強調。党中央発行パンフレット『中国の野蛮な流血をつく―日本共産党と中国共産党はどこが根本的にちがうのか』の内容を身につけ、党の素晴らしさを語り広げようと呼びかけます。しかし60万2777票(15・5%)獲得し健闘したものの及ばず、大阪選挙区の議席を失いました。(次回は「大阪労連結成」です)

(大阪民主新報、2021年11月14日号より)

 

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