時代をつないで 大阪の日本共産党物語

第24話 レッドパージ

突然の解雇通告  

 1950年10月25日、山本一一(レッド・パージ反対大阪連絡センター共同代表)は職場である新田帯革の総務部長に突然呼び出され、通知書を手渡されます。「退職を奨め、もし退職届を出さないときには解雇として扱う」「本日以降一切工場内には立ち入りを禁止する」。山本は47年入社。労組で副組合長、青年部長を歴任。49年1月に日本共産党に入党したばかりでした。
 中辻トヨ子は8月1日に呉羽紡績本社3階労組事務所にいたところ、警官10人が現れ逮捕されます。2週間前、JOBK(NHK大阪放送局)で、米軍放送組織の放送隊長が銃をもった兵隊をともなって現れ、「共産党員とそのシンパを今から2分以内に建物から追い出す」と21人が職場から追放される事件がありました。中辻がそれをビラで知らせたのが理由でした。10月、米軍事裁判所は「米軍を中傷誹謗、占領政策に違反した」と重労働判決を下します。数日後、中辻を含む12人が職場を追放されました。いずれも日本共産党員だからでした。
 大阪で最大130人の被害者をだした電産労組(関西配電)は、「非協力者」「破壊分子」の名目で職場を追われました。

戦後最大の人権蹂躙

 朝鮮戦争前夜から吹き荒れたレッド・パージ。大量の人員整理の際に意識的、計画的に共産党員、組合活動家の解雇が強行されました。犠牲者は推定約4万人。しかし全体像がわかる資料はありません。
 大阪府労政課の月報には50年7月以降、「特別人員整理(レッド・パージ)」の項目があり、解雇者数が企業別に1千11人と記します。大阪では中小企業にまで徹底されました。
 日弁連は2008年10月、「このような人権侵害は、いかなる状況下においても許されるものではないが、52年の平和条約発効後は、被害回復措置を容易に行うことが出来たにもかかわらず、今日まで、これを放置してきたことの責任は重い」「被害の回復のために、名誉回復や補償を含めた適切な措置を講ずるよう」総理大臣に勧告します。大阪では2012年4月14日、被害者27人を含む145人が「レッド・パージ反対大阪連絡センター」を結成。翌年5月29日、山本らは大阪弁護士会に「人権救済申立書」をだしました。

党へ、民主運動へ

 職場を追われた山本は再就職先を探しますが、「10月の退職」と聞くと担当者の顔が硬くなり「後日連絡」で断られました。その後、民医連に勤務、日本共産党専従者の道にすすみます。
 山本は最近、あるメディアから「レッド・パージは個人の人生を狂わせた。また日本社会に生じた『気に入らないものは組織から排除する』という風潮はいまでも社会的弱者を苦しめている。このことを社会的に提起したい」と取材を受けました。
 日立造船を追われた緋田吉郎(元党大阪府委員長)らも、それぞれが党と民主運動の幹をきずく役割を果たしました。
 パージから70年、たたかいつづける人々とともに、当時のきびしい政治状況のなかで語ることのできなかった多くの被害者がいます。こうした方々を含め、「数万名のレッドパージ被害者全体の名誉回復をめざす」と明神勲(北海道教育大学名誉教授)は語ります。(次回は「50年問題」です)

大阪でのレッド・パージの状況

業種 人数 主要事業場名・人員
新聞放送 88 NHK16、朝日38、毎日19、産経6、大阪5
映画演劇 10 東宝4、松竹7
電気 122 日本発送電42、関西配電80
日通 17  
私鉄 108 京阪神31、阪神23、近鉄26、京阪20、南海14
運輸 3 東運送3
鉄鋼 101 淀川製鋼53、中山製鋼12、住友製鋼3、大谷興業恩賀島12、国光製鋼6、大阪特殊製鋼3、榎本鋳造9
非鉄金属 16 高田アルミ10、豊崎伸銅6
機械器具 94 汽車会社22、発動機18、大阪製鎖14、久保田鉄工13、椿本チェーン10、天辻鋼球大和田7、田中機械2
電機器具 21 松下電器12、東芝5、松下電工4
造船 117 日立造船(桜島67、築港8、設計7、大淀4)、藤永田造船18、名村造船3、川崎重工岡田浦10
化学 135 武田薬品25、塩野義10、田岡染料15、田辺製薬9、旭硝子淀川10、大五栄養化学10、日新化学5、大阪ガス5、新田帯革6、大日本セルロイド6、藤沢薬品5、徳永ガラス7
ゴム 16 東洋ゴム4、新田ゴム5、シードゴム5、大津ゴム2
セメント 27 日本セメント22、ヨーギヨセメント5
硫安 2 新日本窒素2
繊維 26 鐘紡6、日紡貝塚4、日紡山崎4、呉羽4、近江絹糸岸和田2
医療 5 淡路新生病院5
印刷 4 凸版印刷4
銀行 1 帝国銀行西支店1
公務 98 国鉄49、電通38、郵政4、造幣4、労基局3
合計 1,011  

(『大阪社会労働運動史』第3巻より作成)

(大阪民主新報、2020年12月27日・2021年1月3日号より)

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