時代をつないで 大阪の日本共産党物語

第87話 橋下「財政再建プログラム」とのたたかい

「破産会社」

 2007年12月、「朝日」が太田府政の「赤字隠し」(減債基金からの借り入れ問題)を大きく報道しました。これを最大限利用して知事選に勝利した橋下徹は、08年2月6日、大阪府知事として初登庁すると、職員に「皆さんは『破産会社』の従業員である」とあいさつしました。
 就任記者会見では「財政非常事態宣言」をおこないます。その後、08年度府予算案を白紙に戻し、7月までの暫定予算にし、「維新改革プログラム案プロジェクトチーム」を組織します。
 4月11日に「財政再建プログラム試案」がでます。高齢者・障害者・乳幼児・ひとり親家庭の医療費助成制度は自己負担を定率1割に。私学助成は3割削減、小学校1・2年生の「35人学級」は廃止。救命救急センターへの府の補助金は廃止。国際児童文学館など府立8施設の廃止をうたいます。府民向け施策への総攻撃でした。
 日本共産党大阪府議団はただちに反撃します。「財政危機をつくりだした大型開発事業と同和事業は残し、府民向け施策だけは大ナタをふるう。真の要因にメスをいれ、国にも財政措置を求め、府民向け施策は守れと徹底論戦した」と宮原威は語ります。

PTAぐるみの反撃

「『子どもが笑う』というのはみなさんを笑わせるためではない」――「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」との懇談で暴言を繰り返した橋下知事=2008年10月23日、府庁内

 「子どもの笑顔が輝く大阪」をうたって知事になった橋下が「35人学級見直し」などをうちだしたことに、府PTA協議会が「35人学級・警備員存続署名」を提起します。大阪府小学校校長会・中学校校長会が全面的に賛同。大阪教職員組合は「立場の違いや考えのちがいをこえてすべての教職員、すべての教育関係者が力をあわせよう」とよびかけます。短期に100万をこえる署名が集まり、少人数学級は守られました。
 私学助成の削減に対しては、私立に通う高校生たちが「私たちに笑顔をください」と「会」をつくり、08年10月、知事交渉に臨みます。しかし、この場で、橋下は冷たく言い放ちました。「『子どもが笑う』というのはみなさんを笑わせるためではない」「あなたが政治家になってそういう活動やってください」「僕の考え方がおかしかったら知事には選ばれない」。

府庁移転をめぐる攻防        

 08年8月、橋下は突如、府庁を大阪市の破綻事業、WTC(ワールド・トレード・センター)に移転すると言い出しました。6月にだされた「財政再建プログラム案」には、「大阪府解体」と「関西州づくり」が書き込まれていました。橋下はWTCを視察した日、ここを「州都」にすると「宣言」します。
 府議会は大揺れでした。日本共産党府議団は、事業費のうえからも、防災対策のうえからも問題だと追及。「財政試算」にウソが含まれていることも暴露します。自公与党からも疑問が続出。2月議会で「府庁移転案」は24日未明、反対65、賛成46で否決されます。
 橋下は「僕がずれていた」とのべました。ところが、9月議会には「不退転の決意」として、再び「府庁移転条例案」を、WTCを府が85億円で購入する案とセットでだします。与党は再び揺れますが、「府庁移転案」は反対60、賛成52で再び否決しました。しかし、「WTC購入案」は、自民党府議団で離団者がでるなど対応が割れ、可決されてしまいます。
 この問題を一つの契機に、橋下が府議会や自民党府議団に手を突っ込み、「維新の会」を結成へと流れます。(次回は「自公大敗、民主党政権へ」です)

(大阪民主新報、2022年4月10日号より)

 

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