時代をつないで 大阪の日本共産党物語

第27話 川上貫一のたたかい

「白髪の青年」  

国会で演説する川上貫一

 1949年以来、旧大阪2区から6回にわたって国会に送りだされ、日本共産党衆院議員団長を務めた川上貫一(1888―1968)。「白髪の青年」といわれ、変革の情熱にみちた演説が聴衆を魅了し、「私の川上はん」と、誰もがほおっておけない人柄が多くの人に語り伝えられています。
 51年1月、衆院本会議で「日本の独立、平和は、全面講和の締結と占領軍の即時かつ完全な撤退によって実現される」と主張し、米日反動勢力の犯罪的なたくらみを糾弾しました。これが「国会の品位を汚した」と「懲罰委員会」が「陳謝」を求めますが、川上は敢然と拒否します。それを理由に、3月29日、賛成239、反対71で除名処分を下します。
 反対討論には大阪4区選出の加藤充がたちました。「院内多数の暴力をもって、真の愛国者である川上君を除名することはできるかもしれない。しかし、全日本、全世界の平和と自由を熱望する10億の人々を除名にすることは断じてできません。裁かれる者は、このファッショ的陰謀を計画し、遂行した者自体であります」。社会党の猪俣浩三も「ファッショに対して民主政治の殿堂を守り抜きたい」と反対しました。
 川上演説の内容は、一般新聞では報道されず、「赤旗」も発行停止されているもとで、「国会情勢」としてひそかに配布、販売されました。
 川上は、53年の総選挙で国会に返り咲きます。それは大阪2区有権者が川上除名処分に突き付けた回答でした。

戦前、大阪府の幹部として    

 川上は岡山県に生まれます。子ども時代は「ひとうて子」(人見知り)でした(『自伝前編 とおいむかし』)。岡山県庁の産業主事当時、のちに「大逆事件」で処刑された森近運平とも触れあっています。北海道庁をへて、大阪府庁へ。米騒動のあと、方面委員制度(民生委員の前)確立に尽力した小河滋次郎が、岡山時代の川上を評価して、府に引っ張ったといわれ、社会事業主事として日本初の本格的な小児保健所の開設をはじめ実績を積み上げます。
 川上は、その傍ら、『経済学のABC』『「資本論」 読本』などを著し、「川上学校」を主宰し、無産者診療所運動の理論的支柱の役割を果たすとともに、戦後の民医連運動に参加する多くの医師を育てます。人民戦線運動にも深くかかわります。日本共産党を募金でささえ、これが「治安維持法違反」だとして、2度投獄されます。しかし、節を曲げず、45年日本共産党に飛び込みます。

「選挙のオニ」

 川上は、「選挙のオニ」とも称されました。79歳で挑んだ67年1月の総選挙。寒風のなか、川上が候補者カーのフロントガラスを外し、身を乗り出して運行した話は有名です。「淀川大橋を渡るときは声が凍った」と語るアナウンサーの女性に、川上は自分のマフラーを外し肩にかけてあげました。
 川上の著書、『話のはなし』は候補者演説のバイブルとして活用されます。くつぬぎタケ子(のちに参議院議員)は川上に、「君みたいに、口から出まかせに話すのは、あかんねん」「演説というのはね、ぺろぺろしゃべれるだけが能じゃないんだよ。具体的な話をしながら、その中に哲学がきちんと位置づけられていなきゃいかんのだ」と鍛えられたといいます。
 63年9月、中之島公会堂での演説がテープに残ります。それは、心を打つとともに、聞く人を行動にたちあがらせずにおかないものでした。

各界から惜しまれて       

 68年9月、川上は和泉市議選支援中に倒れます。西淀病院の病床で、死とたたかいながら、細川頼之の漢詩になぞらえ、「八十にして功なきを愧(は)ず」と語りつつ、「若人よ 清風を起こし」奮い立てと口にしました。
 9月16日、大阪府厚生会館での葬儀には、二千数百人が参列しました。中央委員会の弔辞には、「白髪をふりかざして支配階級の悪政と腐敗を徹底的に追及し、共産党の政策を明快にじゅんじゅんと訴える川上同志のすぐれた説得力と、迫力にみちた弁論は、革命的政治家としてのすぐれた資質をしめすもの」「党の大衆宣伝活動を発展させるうえでも、一つの模範をしめした」とありました。アメリカの北爆を糾弾し、佐藤栄作首相に迫った国会質問、最後の和泉市議選での応援演説が流されました。
 国会では12月10日、同じ大阪2区でたたかった自民党の中山マサ衆院議員が「先生がかたい信念とあたたかい人間性をもってひたすら大衆のために献身された政治姿勢に対して、私は主義主張を超えて畏敬の念を抱いておりました」と追悼演説しました。

 幾山河
 越へゆく毎に
 山の辺の
 夏ふかむ花を
 見でゝゆくか那貫一

西淀病院にある川上貫一記念碑

 いまも西淀病院右手に79年、没後11年の夏に建てられた川上貫一記念碑があります。(次回は「綱領論争」です)

(大阪民主新報、2021年1月24日号より)

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