おおさかナウ

2023年12月16日

街路樹・公園樹を大阪市が大量伐採
見直し求め市民が陳情・署名
CO2削減、緑化推進に逆行

 大阪市が「市民の安全・安心に影響を与える」として、大量の街路樹や公園樹の伐採撤去計画を進めていることに対し、市民が待ったをかけています。撤去対象の木を調査した樹木医も「選定に合理的根拠がない」と疑問視する中、「大阪市の街路樹撤去を考える会」は、伐採の延期などを求める陳情書を今市議会に提出するとともに、7日には、事業見直しを求めるオンライン署名約7千人分を、横山英幸市長(大阪維新の会幹事長)と寺川孝大阪市建設局長宛てに提出しました。(関連記事

伐採された木の切り株=13日、大阪市天王寺区内

どっしりケヤキも伐採の対象にされ

 3日午後、大阪市北区の扇町公園には多くの市民が訪れ、ひとときを過ごしていました。人気の遊具もそろう小高い丘に、紅葉したケヤキの木がどっしりと立ち、木の下でおしゃべりしたり、通りがかりに木に触れて行ったりする子どももいました。
 木には、黄色のテープが貼られていました。公園事務所によると、業者が伐採対象の木に付けているとのこと。立派な樹形の木を切る必要があるのか尋ねたところ、対応した職員は、「〝たられば〟の話になってしまうが、大木でも、倒れて園路や遊具をふさぐ可能性があるので」と話しました。

樹木医が「非常に良好」と診断したのに伐採対象になっている扇町公園のケヤキ=3日、大阪市北区内

「安全対策」と称し1.9万本の伐採計画

 大阪市は、2015年から17年の3年間で、大阪城公園の開発のために、公園の樹木1714本を伐採しました。さらに18年の台風21号で「健全な木さえも倒木し」、「市民の財産に被害を及ぼすなど、自然災害により重大な被害が発生するリスクも顕在化」しているとし、「公園樹・街路樹の安全対策事業」と称して、18年度から24年度までに、市内の街路樹約1万2千本と公園樹約7千本を伐採撤去する計画を進めています。23年度までの総事業費は約55億円です。

撤去予告は突然でイチョウの並木が

 東住吉区に住む渡辺美里さん(35)と谷卓生さん(58)は去年秋、自宅近くのイチョウ並木を見て驚きました。「道路標識の見通しの妨げになりやすい」と撤去予定の張り紙がされていました。公園事務所に「撤去理由に納得できない。伐採しないで」と言いましたが、22本切られました。
 2人は、「大阪市の街路樹撤去を考える会」を結成。各地の樹木を見て回って疑問に思ったことをSNSで発信。今年9月に、樹木医に撤去対象の36本を調査してもらうと、「市民の安全・安心に影響を与える」と推察されたのは6本で調査樹木の17%、先の扇町公園のケヤキは、「活力・樹形ともに非常に良好」「安全・安心に支障をきたす事情は特に見当たらない」と評価され、市の「安全対策事業」の対象樹木の選定は、「根拠に合理性を欠いているものが多く含まれている可能性が高い」と鑑定されました。

対象外のはずの樹木も切り倒されて

 渡辺さんらは、市に委託されたコンサルタント会社が、樹木医の診断を基に作成した報告書も入手。それによると〝公園樹の健全度〟を「a」から「g」までの7段階に分類し、伐採が必要な木は「f」と「g」だとしています。これに基づいて調査樹木2481本のうち、伐採必要なしと判定されたのは7割でしたが、市が伐採対象とした木も約600本ありました。
 市は、植栽環境なども加味して総合的に判断していると説明しますが、伐採の基準はあいまいです。
 さらに、伐採対象の木には撤去理由を示した張り紙がされていますが、周りに木はないのに「植栽密度」を理由にしているなど、撤去理由が誤って伝えられているケースも相次いでいます。
 倒木などのリスクが小さい木の伐採もなぜ急ぐのか。「考える会」との懇談で市の担当者は、「少子高齢化の時代で、今後は今回の安全対策事業のような形で予算が確保できるかどうか分からない」と語ったといいます。

リスクだけ反応してメリットを無視

 谷さんは、「切る必要がある木まで伐採に反対しているわけではない」とした上で、「木は市民の財産。CO2(二酸化炭素)削減、ヒートアイランド対策になる緑陰効果など、樹木のもたらす多大なメリットを無視して、少しでもリスクがあればと、リスクに過剰に注目するのはおかしい」と強調します。
 大阪市は、中馬馨市長時代の1964年に「緑化百年宣言」を行い、「大阪をうるおいのある健康な街にするために」、「強力な緑化運動」を開始。「今後百年間継続する」と決意を表明し、「公共緑化の推進」などと共に「樹木保全事業」も大きく位置付けてきました。
 市が2015年に立てた「おおさかヒートアイランド対策推進計画」でも、「緑を増やすこと」を挙げています。これらに逆行するのが今の大阪市です。

木造リング350億円は維持費35年分に

署名を提出する(右から)谷さん、渡辺さん=7日、大阪市役所内

 街路樹や公園樹を維持管理する事業費は、1993年度は約12億円でしたが、この10年来約10億円で推移。その間に人件費などが上がり、維持管理本数を半減させていることで、市自らが「市民の安全・安心に影響を与える」木にしている可能性も否定できません。
 2025年の大阪・関西万博では、開催半年後に解体する木造大屋根リングを350億円かけて建設するとされています。
 渡辺さんは、「大阪市の街路樹・公園樹の維持管理費10億円の35年分。それだけあるのなら、もっと丁寧な剪定をして、きちんとした樹形を作るとか、できるだけ高木を植えるとか考えてほしい」と話します。
 今年度、伐採予定の木は約2700本。今も市民の財産の木が切られようとしています。

(大阪民主新報、2023年12月17日号より)

 

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