おおさかナウ

2020年03月14日

大阪市「小学校つぶし条例」審議資料
区民の声を恣意的改竄 訂正を
統廃合立ち止まれ 生野区民が陳情

 学級数が11学級以下の小学校の統廃合を教育委員会主導で進められるようにする「大阪市立学校活性化条例」の改正案が2月21日、大阪市議会で、維新・公明の賛成多数で可決しました。審議過程で教育委員会事務局資料の捏造疑惑が発覚。条例の強行突破が区民の不安と混乱を招いているとして、生野区民らが小学校統廃合計画は立ち止まれと3月3日、市議会議長に陳情書を提出しました。

松井市長〝事実確認必要ない〟

 陳情書を提出したのは、「生野区の学校統廃合を考える会」です。陳情書では、1月15日の大阪市総合教育会議で、条例化審議の基礎資料として教育委員会事務局が提出した文書の中で、地元の声が「恣意的」に改ざんされたと指摘。事実確認、文書の訂正と共に、区内の学校統廃合計画はいったん立ち止まるよう求めています。

合意得られず計画ストップ

 同区では、2016年に「生野区西部地域学校再編整備計画(案)」が発表され、19年4月から統廃合後の新校が開校される予定でした。
 同区内では、子どもたちの教育環境や安全問題、災害時の避難所にもなる小学校のあり方などについて十分な話し合いがされていないとして、地元の合意を得られず計画がストップ。こうした中で大阪市議会では、維新議員が生野区の再編整備計画が進まないことを批判し、対策を求めていました。
 改正条例では、各小学校の学級数の適正規模を、12学級以上24学級までと明記。11学級以下の学校を統廃合の対象にし、教育委員会の主導で計画を進めるとしています。この通り進むと、いまある市内の小学校の3分の1が、統廃合の対象となります。
 これまでは学校統廃合を巡って、地域や保護者などの合意が必要とされてきましたが、改正条例では、保護者等の意見を聴くことだけが義務付けられ、合意の必要性については触れていません。

ルール化は行政責任を放棄

 2月15日の教育こども委員会で、日本共産党の長岡ゆりこ議員が質問。教育委員会が「(統廃合を巡って)意見がまとまりにくく、学校再編が難しい状況が生じる可能性がある」ためルール化するとしたことに対して、長岡議員は、「まとまらないから条例でルール化して行政が強行できるようにするのは、大阪市が行政としての責任を放棄することで、許されない」と批判しました。

当事者が捏造されたと抗議

 自民党の木下吉信議員は、条例化することを決めた1月の大阪市総合教育会議で、教育委員会事務局が提出した「学校配置の適正化の今後の進め方について」の文書に、地元の声を捏造して記載したのではないかと追及しました。
 捏造が指摘されたのは、「生野区西部地域学校再編整備計画の進捗と課題」として報告されている「合意形成の状況と課題」の部分です。
 文書では、生野区中学校区で統廃合の対象になっている舎利寺小学校の保護者の声として、「地域の合意は困難と思われることから、行政の決定事項として進める方がよいとの意向」と記されました。
 また、田島中学校区の田島小学校の統廃合についての地域の意向として、「地下鉄の延伸(今里筋線)がされなければ再編を認めないとの立場」と書かれました。
 木下市議は、発言当事者2人から山本晋次教育長宛てに寄せられた抗議文を紹介しました。舎利寺小学校のPTA会長は、区PTA協議会意見交換会で統廃合問題で否定的な発言をしたところ、区の担当者から「行政が決定事項として進めても良いのか」と尋ねられ、「私の立場ではとやかく言えることではない」と述べたことが、報告文書では、「行政の決定事項として進める方がよい」と改ざんされたと主張。田島連合振興町会会長も、「地下鉄の延伸と再編問題を交換条件として取り上げることは到底ありえない」とし、「発言が改ざんされ不愉快」としました。

事実確認さえ行わない行政

地域振興町会の掲示板に張られているポスター=2月、大阪市生野区内

地域振興町会の掲示板に張られているポスター=2月、大阪市生野区内

 委員会での木下議員の追及に対して、区の担当者は「(資料の記載に)間違いない」と主張。松井一郎市長は、「録音がなく、どちらがうそをついているかは議事録しかエビデンス(証拠)がないので分からない」とし、事実確認の必要性は認めませんでした。
 「生野区の学校統廃合を考える会」の陳情書では、当事者2名の抗議に対して、事実確認さえ行われていないことを批判。また、総合教育会議で出された資料には、再編推進者の声が列挙された上、各小学校区ごとの地域、保護者の統廃合に対する評価が○×式で記載されるなど、「あまりにもずさん」な内容で、「会議の見識・品位が問われる」とも指摘。
 その上であらためて、会議資料が「恣意的」文書だとする指摘についての事実確認と、文書訂正を求めるとともに、地域、保護者の合意が得られていない現状で、「生野区西部地域学校再編整備計画(案)」を強引に進めず、いったん立ち止まるよう求めています。
 市も教育委員会も区も、学校統廃合を進めるにあたり、地元への「丁寧な対応」を繰り返しますが、まずは条例制定の根拠とされた資料の捏造疑惑を巡る事実確認と説明責任が厳しく問われています。

(大阪民主新報、2020年3月15日号より)

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