おおさかナウ

2020年01月12日

第31回法定協 「基本的方向性」を確認
大阪市廃止・分割の「協定書」案へ
/山中大阪市議団長と石川府議団長が記者会見
/山中智子団長の意見表明(大要)
/日本共産党 柳利昭府委員長が見解

 大阪市を廃止して「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想を巡る情勢が重大な局面に入る中、新しい年が始まりました。昨年12月26日に開かれた大都市制度(特別区設置)協議会(法定協)で、「特別区設置協定書」案の作成に向けた「基本的方向性」なるものについて起立採決が行われ、大阪維新の会と公明党の賛成多数で確認。日本共産党と自民党は反対しました。ことし11月に住民投票の強行を狙う吉村洋文知事(大阪維新の会代表代行)は府職員への年頭あいさつ(6日)で、「都」構想を「何としても実現させる」と表明。これに対し、明るい民主大阪府政をつくる会(明るい会)、大阪市をよくする会(よくする会)は、党派や立場を越えた共同の力で大阪市廃止・分割を許さないために総力を挙げた取り組みを始めています。

維公が強行 日本共産党は反対

「特別区設置協定書」案の作成に向けた「基本的方向性」の起立採決で、賛成する維新、公明の議員=2019年12月26日、府庁内

「特別区設置協定書」案の作成に向けた「基本的方向性」の起立採決で、賛成する維新、公明の議員=2019年12月26日、府庁内

 「基本的方向性」は、大阪市を廃止して「淀川区」「北区」「中央区」「天王寺区」の4「特別区」を設置するとともに、「特別区」議会の議員定数や、「特別区」と府の事務分担や財政調整、組織体制などをまとめたもの。今後、維新は国との協議と並行して制度案づくりを急ぎ、府・市両議会での議決を経て11月上旬(1日か8日)に住民投票を実施。賛成多数になれば、2025年1月から「特別区」に移行することを狙っています。
 法定協での採決に当たり、日本共産党の山中智子大阪市議団長は、大阪市を廃止し4つの「特別区」に分割することは、まさに百害あって一利なしと強調。住民投票が実施されたとしても、党派を超えた幅広い多数の市民の皆さんと力を合わせてきっぱりと否決し、文字通り終止符を打つために全力を挙げると述べました(大要は別項)。
 自民党の川嶋広稔大阪市議は、「特別区」移行後のリスクが示されていないことなどを批判。住民サービスの低下など、制度案は府民・大阪市民双方に利益にならないとして、反対を表明しました。
 維新の山下昌彦大阪市議は、「よりバージョンアップされた協定書の方向性がまとまった」「『都』構想はもはや単なる政治闘争ではなく、民意を踏まえて行政が実現を目指す行政課題だ」などと強弁。公明党の肥後洋一朗府議は「住民サービスを低下させない」「設置コストを最小限に」など4つの条件を主張し、反映されたとして賛成を表明しました。

スケジュールありきの異常事態
山中大阪市議団長と石川府議団長が記者会見

府政にも重大な影響

記者会見する(右から)山中氏、石川氏=2019年12月25日、大阪市役所内

記者会見する(右から)山中氏、石川氏=2019年12月25日、大阪市役所内

 法定協前日の25日、日本共産党の山中氏と石川多枝府議が大阪市役所内で記者会見し、法定協の異常な運営や大阪市廃止・分割が府政に与える影響について発言しました。
 山中氏は、「基本的方向性」についての本来いらないはずの起立採決を行うことは、「今後の議論をいっそう封じ、勝手に進めようということだ」と指摘しました。
 昨年春のダブル選後に再開された法定協は、突然浮上した「合同庁舎」案の議論がわずか24分で打ち切られるなど、「議論と呼べるものではなかった」と指摘。2020年11月の住民投票実施という「スケジュールありき、結論ありきのひどい事態だ」と述べました。
 大阪市を廃止して市町村の仕事(消防・上下水道)を府に持っていくと、広域に責任を持つべき府が、旧大阪市域という一部分だけ基礎自治の任務を持つといういびつなことになり、府全体に対する仕事がおろそかになると指摘。「市民、府民と手をつなぎ、(『都』構想が)地方自治や暮らし・安全を壊すひどいものだということを大いに知らせて、一緒に頑張っていきたい」と語りました。
 石川氏は、子ども医療費助成が、府制度では就学前という低水準にとどまっているなど、「府が広域行政としてやらなければならない仕事が、現府政でおろそかにされている」と強調しました。「法定協では、大阪市のことばかり議論され、府全体の仕事が府でできなくなる懸念を持たざるを得ない」と語りました。

大阪市廃止・分割は百害あって一利なし
山中智子団長の意見表明(大要)
第31回法定協

 第31回法定協(2019年12月26日)で、「特別区設置協定書」の作成に向けた「基本的方向性」の採決に当たって、日本共産党の山中智子大阪市議団長の意見表明(大要)は次の通りです。

地方分権に逆行最悪の自治破壊

 前回まで30回にわたる法定協での議論を通じて、大阪市廃止・分割、いわゆる「都」構想が時代錯誤の代物であり、いかに市民にとって有害無益なものであるかが、よりはっきりしました。
 そもそも「都」構想とは、ただただ大阪市を廃止して、市の持つ財源・権限を府に取り上げるものに他ならない。ここに本質があります。それは、かつて橋下徹氏が、知事を辞職して市長選に出馬する際、「大阪市をぶっつぶす」と繰り返したことに象徴されていますが、この間の議論で、まさに、「特別区」や「特別区民」がどうなるかなどはどうでもよく、大阪市をつぶすことがすべてだということが、いっそう、はっきりしました。
 国から地方へ、府県から基礎自治体への地方分権、権限移譲の流れの中で、当然、全国の基礎自治体がより権限の獲得・拡充に努め、今や政令市は20市にも及び、中核市も全国58市に達しています。この中で、こともあろうに人口規模で全国第2の政令市を取りつぶすなどということは、地方分権の流れに逆行する最悪の地方自治破壊の暴挙です。

府に移管してもプラスにならぬ

 「広域的」というレッテルを貼って、大阪城や天王寺動物園、鶴見緑地、長居競技場、博物館、美術館など貴重な財産と共に、消防や水道や下水道など基礎自治体本来の業務までも含む428もの事務事業を府に移管する。しかし個々の事業の権限や予算が増えるわけではありませんから、充実するわけでもなんでもなく、何ら府民にとってプラスにはなりません。
 それどころか、大阪府内全体の広域行政に責任を負うべき府が、大阪市域のみに限定される消防、水道、下水道などの基礎自治体の事務事業まで担うことになるという、非常にいびつな体制ができあがるのです。
 もとより、このような制度いじりで大阪の成長や活性化が図られるものではなく、ましてや府と市が並立しているゆえに発展しないなどと言うのは、全く根拠がありません。そんなことを言えば、横浜市も名古屋市も京都市も神戸市もつぶさなくてはならないという理屈になってしまいます。

一般市に満たぬ半人前の自治体

 一方、大阪市をなくして4つに分割して設置される「特別区」は、人口平均67万人と、堺市を除く府内のどの自治体よりも大きな基礎自治体であるにもかかわらず、市町村の基幹税目である固定資産税や法人市民税等を府に持っていかれるとともに、地方交付税すら直接あたらないなど、極めて自主財源が乏しい上に、自ら水道・下水道などの事業も運営することもできなければ、消防組織も持てないという、まさに一般市にも満たない“半人前の自治体”に成り下がります。
 その上、330人の職員増や、住基ネット等のシステムの改修とその運用経費の増など、市民にとって全く無駄な費用が発生し、いきおい住民サービス等は削らざるを得なくなります。
 まさに踏んだり蹴ったりで、たとえ府から毎年20億円を10年間補填されたとしても、コスト増の穴埋めさえできないし、いくら「住民サービスは維持するものとする」などと協定書に書いたとしても、「特別区」としては、ない袖は振れないということになります。

自前の庁舎なく自治体の体なし

 加えて、なすべき庁舎建設も行わず、各区役所などに職員を詰め込んだ上、なお入りきれない職員は中之島庁舎に配置し、都合3つの「特別区」の職員を同居させる、間借りの「合同庁舎」などというに至っては、もはや何をか言わんやだと申し上げたい。
 災害時どうするのか、日常業務ができるのか、ということもありますし、住民はいったいどこへ行けば目的が果たせるのか、右往左往しなくてはなりません。何より地方自治体の職員は、住民と共にあるべきなのに、その自治体に住んでもいなければ通勤もしない、その自治体に足を踏み入れることもなく暮らしている。そんなことで、地域の問題点や住民の願いや思いがわかるはずがありません。 
 「特別区」議会議員の定数も、現行市会定数の83にとどめるという始末で、中核市や東京特別区の3分の1以下なわけですから、区民の声を区政に反映しづらくなるということにほかなりません。
 結局、住民サービスを維持できなくなることといい、自前の庁舎を持てないことといい、二元代表制のもと、一方の区民代表である議員の定数が少なすぎることといい、「ニア・イズ・ベター」は看板倒れどころか、地方自治体の体すらなしていません。なお東京特別区が、せめて一般市にと長年、運動し続けていることを想起すべきです。

市民と力合わせ終止符へ全力で

 最後に、「都」構想すなわち、大阪市を廃止し、4つの「特別区」に分割することは、まさに百害あって一利なしです。仮に住民投票が実施されたとしても、党派を超えた幅広い多数の市民の皆さんと力を合わせ、きっぱりと否決して、文字通りピリオドを打つために全力を挙げることを表明して、「基本的方向性」への反対といたします。

市民多数との矛盾はさらに
市廃止・解体へ総力挙げる
日本共産党 柳利昭府委員長が見解

 日本共産党の柳利昭府委員長は12月26日、見解を発表しました。今回の制度案は、2015年の住民投票で否決された案の「バージョンアップ」どころか、矛盾と破綻があらわだと指摘。法的拘束力のない「基本的方向性」を数の力で押し付けたものであり、「大阪市廃止・分割」をごり押しする維新・公明と、それを許さない市民多数との矛盾はいっそう広がるとしています。
 今回の採決に至った最大の背景は、昨年春のダブル選後、公明党が衆院議席欲しさに維新に屈服し、「都」構想反対から賛成へと態度を豹変させたことにあると指摘。公明党は賛成に転じた理由を、維新が「4条件」をのんだからとしているが、「住民サービスの維持」は「特別区設置の際は維持する」「その後は維持するよう努める」としただけで、権限や財源は何も担保されないと批判しています。
 「設置コストを最小にするとして持ち出された「中之島合同庁舎案」は、既存庁舎に入らない職員をすべて一つに集めるというもので、住民の暮らし・福祉・防災などの面で、自治体としての体をなしていないと指摘します。
 さらに「特別区」は主要な財源が府に奪われ、地方交付税も直接入らず、消防・上下水道・介護保険も所管できないことや、大阪市解体が大阪経済に打撃を与え、大阪府の大変質にも通じるなど、問題は山積していると強調。「協定書」案づくりにきっぱり反対し、仮に「数の力」で住民投票を強行するなら、政党や団体などの立場を越えた広範な共同の力で、「大阪市廃止・解体」を許さず、「NO!」を突き付けるために、総力を挙げると表明しています。

(大阪民主新報、2020年1月12日号より)

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