おおさかナウ

2018年12月23日

米軍新基地建設 土砂投入の無法
「勝つまでたたかおう」
大阪革新懇・不戦誓うつどい
宮本憲一大阪市大名誉教授が講演

 1941年12月8日のアジア・太平洋戦争開戦から77年に当たって、進歩と革新をめざす大阪の会(大阪革新懇)が15日、大阪市北区内で「不戦を誓う 文化と講演のつどい」を開き、200人が参加しました。「沖縄と朝鮮半島に思いを寄せて」のスローガンを掲げて開かれた集会では、大阪朝鮮歌舞団が朝鮮民謡「アリラン」や舞踊「扇の舞」を披露。大阪市立大学名誉教授の宮本憲一さんが「オール沖縄の行動に学ぶ―平和・環境・自治」と題して講演し、9月の沖縄県知事選で玉城デニー選対本部長を務めた、元「オール沖縄」衆院議員の仲里利信さんがあいさつしました。

土砂の投入は無法な暴挙だ

 安倍政権は14日午前11時、沖縄県名護市辺野古への米軍新基地建設に反対する沖縄県民の民意を踏みにじり、辺野古での埋め立て土砂投入を強行しました。宮本氏は講演の冒頭、「無法な暴挙だ」と厳しく抗議するとともに、建設を中止させることは可能であり、辺野古新基地は沖縄だけではなく、アジアと世界の平和に関わる重大問題だと述べました。

 沖縄県の故翁長雄志前知事は生前、沖縄県民が自由・平等・自己決定権をないがしろにされてきたことを「魂の飢餓感」と表現し、「日本には本当に地方自治や民主主義は存在するのか。沖縄県にのみ負担を強いる今の日米安保条約は正常なのか。国民の皆様すべてに問い掛けたい」と述べたことを紹介。「この問いにどう答えるかを考えたい」と話しました。

沖縄が受けた歴史的な差別

大阪革新懇が開いた「文化と講演のつどい」で話す宮本憲一氏=15日、大阪市北区内

大阪革新懇が開いた「文化と講演のつどい」で話す宮本憲一氏=15日、大阪市北区内

 宮本氏は「なぜ沖縄は辺野古新基地の建設に反対するのか」と提起し、日本政府が沖縄を属領のように構造的に差別してきた歴史を詳述。明治維新後の1872年に日本政府が琉球王国を廃絶して琉球藩とした後、軍隊の圧力で沖縄県制を敷いた(琉球処分)が、大日本帝国憲法下での地方自治制度の適用は本土の30年後、地方政治や産業・医療・福祉などの近代化も遅れる中、沖縄戦で未曾有の犠牲がもたらされたと述べました。

 戦後は日米安保条約と地位協定により、米軍基地の拡張が進み、日本の米軍専用施設の70%が沖縄本島に集中するという異常な実態になっていると指摘しました。1972年の沖縄返還で、沖縄県は戦後地方自治制に入ったが、開発や振興に最重要な本島中南部を米軍が占め、日本政府は基地温存と引き換えに交付金を配る「沖縄振興政策」で支配。宮本氏は「もはや『基地か経済か』ではなく、基地の縮小・廃棄以外に沖縄の自立はない。これが歴史的差別から解放される第一歩だ」と語りました。

明白な自治体行政権の侵害

 宮本氏は、安全保障と地方自治の関連をめぐり、戦争・戦闘行為は国の権限だとしても、基地の新設・変更は地元自治体の納得・承認が必要だと指摘しました。地位協定により米軍基地は治外法権となり、自治権が及ばないだけでなく、基地外にも公害や軍用機墜落、米兵などの犯罪が発生。これらは「明らかに自治体の行政権の侵害だ」と断じました。

 全国知事会が戦後初めてまとめた「米軍基地負担の提言」(ことし7月)は、日米地位協定の抜本見直しや、基地の整理・縮小・返還を積極的に促進することなどを提案。これを機会に全国知事会など地方六団体が政府に対して積極的に基地の整理を求めるべきだと話しました。

 また、イタリアの米軍基地はすべてイタリア軍司令官の下に置かれ、ドイツでは航空法や騒音に関する法律はドイツ軍の規制を原則としているのに対し、日米地位協定は米軍の権限が不当に大きく、一度も改正されていないと指摘。「安全保障体制の直接の被害と責任は自治体にある。辺野古基地問題のように自治権を否定するような政府の下では、国民の安全保障は実現しない。国民にこそ安全保障について発言する権利があり、これを無視することはできない」と力説しました。

日本の未来を決する分岐点

 宮本氏は、辺野古沖と大浦湾は世界遺産になるような貴重な環境だと強調。青サンゴの群落やジュゴンのえさ場となるなど、生物多様性の宝庫であり、「これを埋め立てれば再生は不可能であり、世界的な損失になる」と訴えました。

 さらに1995年の少女暴行事件をきっかけとした基地反対運動の歩みや、オスプレイ配備撤回・普天間返還・新基地反対を求める「建白書」(2013年)の意義、辺野古新基地反対の「オール沖縄」の共同の広がりに言及しました。

 宮本氏は、翁長前知事が沖縄を日米軍事同盟の最前線基地にするのではなく、東アジアの平和と経済・文化交流の拠点とすることを希求したと指摘。その第一歩として普天間基地の即時返還・辺野古基地建設反対を進めたと話しました。

 最後に宮本氏は、「辺野古基地建設は沖縄問題ではなく、戦後日本の未来を決する分岐点。政党支持や立場の違いを超え、軍事化の動きや法治国家でなくそうとする状況と止めることが、翁長さんの問いに答える道。勝つまでたたかいましょう」と呼び掛けました。

 

(大阪民主新報、2018年12月23日号より)

月別アーカイブ