おおさかナウ

2018年08月12日

学テ結果を手当・予算に反映
吉村大阪市長が検討表明

 吉村洋文大阪市長は、2日の記者会見で、全国学力・学習状況調査(学力テスト)の結果で同市が2年連続で最下位だったことを受け、テストの成績を教員の人事評価に反映させる制度を検討していることを明らかにしました。これに対して学校関係者や市民らから「子どもや先生を追い詰めるもの」「行政の教育への介入」など、強い批判の声が上がっています。

「異常な介入」「教育を冒涜」

 学力テストは、小学6年生と中学3年生を対象に実施。吉村市長は、「中学校の平均正答率合計を0・03ポイント向上させる」など、数値目標を各学校に設定させ、来年度から、達成結果を教員の「勤勉手当」(ボーナス)や「校長経営戦略予算」などの増減に反映させることを検討するとしています。今後、市長と教育委員会で構成される総合教育会議で協議される予定です。

 大阪市学校教職員組合(宮城登委員長)は5日、「学力テスト結果=『数値』がすべての教育政策はやめ、子どもの人間の尊厳を守る教育を」との見解を発表しました(別項に宮城委員長の談話)。

 新日本婦人の会大阪府本部(杉本和会長)は、「大阪市長の『賞与に学力調査反映』発言に強く抗議し、撤回を求めます」とした抗議文を、吉村市長宛てに提出しました。教育評論家の尾木直樹さんも自身のブログで、「二重三十の愚策」「直ぐやめるべき」と批判しています。

 教育をテーマに活動してきた1人の市民が、方針撤回を求めた署名をインターネットで呼び掛け。3日公開された署名に8日正午現在で、1万2400人以上が賛同し、「学力テストで課題が見えてきたならば、むしろ、そこに予算と人を増やすべき」「教育への政治・行政の介入は百害あって一利なし」などの声が寄せられています。

 文部科学省は全国学力調査結果の取り扱いを実施要領で、「調査により測定できるのは学力の特定の一部分である」ことなどを踏まえ、「序列化や過度な競争が生じないようにする」と述べていますが、維新大阪市政は、すでに全国学力テスト結果を学校別に公表しています。

学テの究極の悪用
大阪市学校園職員組合委員長 宮城登さん

宮城登minpou 維新市政は、大阪市内の公立学校のホームページに全国学力テストの「平均点」を掲載させ、「運営に関する計画」に、「小学校学力経年調査(中学生チャレンジテスト)の市(府)平均の7割に満たない児童・生徒を前年度より〇ポイント減少させる」ことの記入を押し付けています。教員に対しては、今年度からの人事評価制度「目標管理シート」に、「国語の正答率を大阪市平均以上にする」などの「数値目標」を必ず書くことを求め大問題となっています。

 そして、今回、全国学テの結果でボーナスの額や校長経営戦略予算を増減させることを提案しました。「万年べったをどう改善するか。意識を変えるだけで成績は上がる」と、自ら「主観的」と認めながら「意識改革」を求めています。

 教員、子どもを点数競争に追い込み教育を一層歪めるものです。「子どもを皆、モノのように扱って、数値の中で束にしてしまう」(教育学者・太田堯)全国学テ。究極の悪用が吉村洋文大阪市長の提案です。

 同時に示された方針も重大で、教育委員会事務局4ブロック化は都構想の地ならしともいえるもので、中高一貫教育校の「特別進学中学校」は中学校受験競争を煽るもので、公教育で行うべきではありません。

 

(大阪民主新報、2018年8月12日、19日合併号より)

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