おおさかナウ

2018年07月08日

声を届けて
たつみコータロー参院議員の国会論戦
進学の夢支え貧困の連鎖を断つ

(前回からの続き)

 貧困世帯の子どもたちの高等教育進学を支える施策の充実をと訴えた2014年4月7日の参院決算委員会。たつみコータロー議員は、高校生アルバイトの収入認定に関し、子どもへの貧困の連鎖を断つ重要性を指摘。制度運用の改善を求め、高校生が経済的理由で進学を断念することがないよう制度改善を求めました。

大学進学認めない

国審議会でも貧困の連鎖を防ぐ方策が議論されていますが…

国審議会でも貧困の連鎖を防ぐ方策が議論されていますが…

 現在の生活保護制度では、受給世帯の子どもが保護を活用しながら、大学や専門学校に進学することを認めていません。

 子どもが大学等に進学する場合、同居であっても生計を分ける「世帯分離」が必要です。生活保護費は家族の人数で決まるため、親世帯の保護費は1人分減額され、一方の子どもは独立した「世帯」として扱われます。

 進学時に支払う「初年度納付金」など学費負担が高いハードルとなり、加えて入学後には奨学金とアルバイトで授業料と生活費を稼ぐ困難な暮らしが待ち受けています。

 苦しい家計が進学を困難にしている現実は、数字が物語っています。生活保護世帯の子どもの高校進学率は93%を超えますが、大学進学率(専修学校等含む)は33・1%(2015年3月卒業生)。全体の73・2%と比べると半分に満たない厳しさです。

 「世帯分離」という時代に合わない制度は廃止すべきとの意見は多く、厚労相の諮問機関「社会保障審議会」生活保護部会では、「世帯分離という取り扱いが子どもの進学意欲をそいでいる」と指摘され、制度の見直しが繰り返し議論されています。

 たつみ議員は決算委員会の質問で、大学入学費を含め授業料無償化が進む欧州諸国の取り組みを取り上げ、「日本の大学の入学料、授業料の引き下げ、無償化に踏み出すべきだ。貧困の連鎖を断ち切るためにも予算の増額を」と強く求めました。

当事者らの運動で

 生活保護はかつて、高校進学時にも「世帯分離」を課す時代がありました。義務教育修了によって稼働年齢者と扱う仕組みのためですが、高校進学率の増加に伴い1970年に廃止されました。

 「未成年者控除」の引き上げなど高校生アルバイトの収入認定では、一歩ずつ運用が改善。2006年に、ようやく高校授業料や教材費などが生活保護費の生業扶助で支給されるようになりました。

 「子どもたちの進学の夢を奪わせない」と、当事者と関係者は、行政機関に要請し、裁判闘争を重ねる中で運用改善を積み上げてきました。

 2014年に大学入試の受験料を生活保護費から貯蓄することが認められました。高校生に支給された給付型奨学金を福島市が「収入認定」した保護費の減額処分について、15年8月に国が処分取り消しの判断を示し、生活保護制度の実施要領改定を各自治体に通知しました。

 高校生のアルバイト収入未申告で、横浜地裁は15年3月、「申告しないことをもって直ちに不正受給とすることは酷だ」として、生活保護法第78条(不正受給)に基づく費用徴収処分を取り消す判断を示したのです。

「不正」とはしない

 そして厚生労働省は今年3月30日付け通知で、収入未申告を「不正受給」と扱うとした2012年通知を改正し、やむを得ない事情があれば、不正受給として取り扱わないとの考えを示しました。

 改正通知では、「病状や家庭環境その他の事情により、収入申告義務について理解または了知が困難で、結果として適正に収入申告がなされなかったことについてやむを得ない場合があることも考えられる」とし、「不正受給の意思の有無の確認に当たっては、世帯主及び世帯員の病状や当該被保護世帯の家庭環境等も考慮する」としています。

 社会保障審議会は昨年12月に報告書をまとめ、「大学等への進学を支援するため生活保護特有の事情が障壁となることがないよう制度を見直すべきだ」と結論付けましたが、子どもの進学に厚い壁となる「世帯分離」については賛成論と反対論を記載し、これに伴い国は生活保護法改定を強行(6月1日成立)。今年から自宅通学に限って住宅扶助費の減額措置を廃止したものの、制度上で保護を活用しながら大学進学を認めない「世帯分離」措置は温存されました。

 5年に1度の生活保護制度見直しで、今年10月から3年かけて最大5%の生活扶助削減が計画されています。

 子育て世帯の一部も減額対象で、就学援助など低所得世帯向け制度の対象範囲が狭まることが懸念され、子どもの貧困対策に逆行すると批判の声が広がっています。


(大阪民主新報、2018年7月8日号より)

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