おおさかナウ

2018年01月14日

紙上憲法カフェ
安倍9条改憲ストップ
憲法を守り生かす年に

9条を輝かせるには?

2017年12月31日・2018年1月7日合併号からの続き

林 「若者憲法アンケート」での対話でこんなエピソードがあります。中学生がよく応じてくれるのですが、「どんなことが平和だと思いますか」との質問に、一般的に「戦争がないこと」などの答えが返ってくるのかと思ったら、ある中学生は「本当に自分の意見も言えて、相手の意見もよく聞き合えるような多様な社会」と書いてくれたのです。

西 素晴らしい答えですね。

林 はい。その中学生自身は、いまの社会に絶望していたと話していたそうですが、平和について一生懸命考えてそう答えてくれたことに、希望を感じます。アンケートで対話した同盟員自身も成長していけると思います。

「積極的平和」の考えを中学生が

西 その中学生はたぶん、特別に学者の意見などを聞いたりしてはいないでしょう。でも言っていることは、ヨハン・ガルトゥング(ノルウェーの平和学者)が提唱した、「戦争のない状態(消極的平和)」に対する「積極的平和」の概念そのものですね。貧困や抑圧、差別などの構造的暴力がなく、一人の人間が「個」として尊重される状態が「積極的平和」。それを中学生が自分の言葉で語っている。すごいなあ。

酒巻 「戦争がないことが平和」ということは分かっていて、それより先の高度な、人権が守られ、普通に文化的な暮らしができる。そういうやりとりが青年たちとできるのも、戦後、憲法が国民の中に根付いているからだと思います。

――西先生は憲法問題の講演で、「九条の会」の結成アピール(2004年)を紹介されていますね。

西 はい。9条を激動の世界で輝かせるために、「この国の主権者である国民一人ひとりが、九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくことが必要です」という部分ですね。安倍9条改憲とのたたかいの中で、ますます大切なメッセージだと思います。お二人は何年生まれですか?

林 1990年です。

酒巻 私も1990年、林さんとは同い年です。

西 1990年というと、私は弁護士になって3年目です。若いお二人が、どんなふうに憲法と出会ったか、ぜひ聞かせてください。

林 僕は民青同盟の専従になるまで、障害者作業所で4年間働いていました。仕事をしていて自分は憲法を実践していたのだと、辞めてから気付きました。

西 というと?

憲法に基づいて学び生きること

林 憲法というと、学校では「覚えるだけのもの」という感じでした。でも障害者や青年の生活が政治の中で揺さぶられ、生活保護費が削られるとか、権利である障害者基礎年金が受けられない現実がありました。
 憲法では個人の尊重(13条)、最低限度の文化的生活(25条)を掲げているのに、青年の暮らしはないがしろにされている。その中で、僕が働いていたのは一人一人を個人として大切にする職場だったので、毎日が憲法の実践だったと思います。改憲で9条が失われるだけでなく、人間らしい生活ができなくなるという危機感があります。

酒巻 私が憲法と出会ったのは高校の社会科で、中学校では「暗記もの」でした。高校では生活保護の「朝日訴訟」について学んで、「覚えるだけ」だった憲法が、「よりよく生きるために大切なもの」だということを知って、衝撃を受けました。憲法に基づいて学び、生きることが大切で、よりよい制度をつくって次の世代に渡すものだと感じたのです。

「不断の努力」を日々やっている

 私は母子家庭で育って、塾にも行けませんでした。でも憲法を学んで、それは「自分のせい」ではないと、「自己責任」論を乗り越えることができたのです。
 橋下知事の時代に「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」にも参加して、私学助成削減反対の運動に取り組みました。デモをやったらすごく楽しくて、「社会で生きるって、こういうことなんや!」と実感して、社会を良くするために自分も生きていきたいと、民青同盟に加盟しました。私は、憲法で12条が好きです。

西 「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」、ですね。

酒巻 そうそう。憲法の中で唯一、国民に努力を求めている条文じゃないですか。私は主権者として、民青同盟の専従として、その努力を日々やっているという手応えがあって、本当に憲法と出会って良かったと実感しています。いま民青同盟では憲法運動でこう言っています。「憲法変えるな、政治を変えろ」と。

西 「政治を憲法に合わせよ」ということですね。

酒巻 はい。そのためにも「3千万署名」の取り組みがある。青年は高学費や非正規雇用、ブラックバイトなどで大変な状況に置かれている中で、憲法が生かされる政治をつくりたいのです。

西 素晴らしいですね。お二人の熱い思いを聞かせてもらいました。「憲法を生かしたい」「伝えたい」と思って活動に参加しているわけで、そういう感動を呼び起こす力が憲法にあると思います。

〝相思相愛〟の関係に

理想論ではない憲法の生命力が

西 私も憲法との出会いは高校の社会科の先生でした。広島で被爆された方で、日本史を教えてもらいました。なぜ日本史なのか。戦争はある日突然起きるものではなく、積み重ねの中で起きる。どこかの段階でやめることもできたはずなのに、やめられなくなった。その先生は、引き返せなくなった時点はいつなのか、どうして止めることができなかったのか。これから先、日本が再び道を誤ることがあるとすれば、「ここで止めなければならない」ということを、歴史から学んで次の世代に伝えたいと。それで日本史を勉強して教師になられたのです。
 先生は原爆症で、再生不良性貧血という不治の病でした。実際に休講も多かったのですが、ぎりぎりのところで生徒である私たちに伝えようとされました。そして私は憲法に興味を抱いて大学は法学部に進み、学んだことを生かそうと弁護士の道を選びました。
 酒巻さんも林さんも、日常の暮らしと憲法がつながっていったわけですね。そこに単なる「絵空事」や「理想論」ではない、憲法の生命力がある。よく言われるように2千万人のアジアの人々、310万人の日本人の犠牲の上で生まれた、唯一の宝が憲法ですから。いま、政治に憲法を近づける動きが強まっていますが、政治を憲法に近づけることを自覚的に考える人が増えることが、9条を守る運動の光となっていくでしょう。

酒巻 憲法って、目に見えないじゃないですか。だからこそ「覚えるだけ」でなくて、もっと身近なものにしていく運動が大切だと思います。

憲法の体系は個人の尊厳が起点

西 憲法の条文はどれも大事で、優劣があるわけではないのですが、一つだけ選ぶとすれば何でしょうか?

林 何でしょう。

西 9条も25条も大切です。ただやはり、林さんも言った13条、個人の尊厳。人間一人一人が個人として、お互い尊重される。あなたも私も同じように大事だというのが13条のメッセージで、国政の上での最大限に尊重することが求められているのです。
 個人の尊厳が起点になっているのが憲法の体系。人類学としての「ヒト」ではなく、顔と名前のある個人です。それを最大限に尊重するために平和があり、生存権がある。この体系を理解することが、憲法を身近なものにすることにつながります。

酒巻 憲法には無限大の可能性があると思うのです。この憲法がある日本に生まれてよかったと思うし、憲法を生かす政治を青年と一緒に、野党の人たちと力を合わせてつくりたい。先生のお話で改憲派も、憲法改正を実現できるかどうか不安に思っていることが分かって、「よっしゃ!」と(笑い)。油断せず、自分たちがやってきたことをさらに広げていくのだと思うと、わくわくします。

林 日本の未来をともに語り合い、憲法を身近にする活動ですね。

西 憲法制定にもかかわった法学者の佐藤功(1915~2006年)の著書に「憲法と君たち」というのがあります。子ども向けの本ですが、その中に「憲法が君たちを守る。君たちが憲法を守る」という呼び掛けがあります。憲法が私たちを守ってくれ、その憲法を私たちが守っていく。いわば憲法と私たちの“相思相愛”の関係をこれからも続けていこうではありませんか。

酒巻 本当にそうですね。

林 きょうはありがとうございました。

紙上憲法カフェ出席者

紙上憲法カフェminpou

右から

民青同盟府常任委員 林裕也さん

民青同盟府委員長 酒巻眞世さん

大阪弁護士会憲法問題特別委員会委員長、大阪平和委員会会長 西晃さん

  (大阪民主新報、2018年1月14日号より)

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