国有地をただ同然で払い下げ
疑惑だらけ〝安倍小学校〟
「日本会議」大阪代表が理事長
豊中・「瑞穂の國小學院」
4月に豊中市で開校する私立小学校をめぐり、政権を揺るがしかねない問題が起きています。安倍晋三首相の妻が名誉校長を務める同小学校について、認可や敷地の払い下げについて話し合う審議会で疑問が続出したにもかかわらず、国は国有地を地価のわずか7分の1で売却。さらに建設のための寄付金集めに安倍首相の名前を使うなど、次々に問題が明らかになっているからです。こうした事態に安倍首相は、「国有地売却や認可に私や妻が関与していたなら総理を辞める」と答弁。疑惑の究明とともに、認可権者である松井知事が認可するかどうか、その姿勢も問われています。
首相「関与あれば首相辞める」
系列幼稚園では「教育勅語」暗唱
問題の小学校は、学校法人森友学園が豊中市野田町に現在建設中の「瑞穂(みづほ)の國小學院」。「国家有事の人材育成のための幼少一貫教育に伴う初等教育の実施」を設置目的にし、安倍首相の妻、昭恵氏が名誉校長に就任。森友学園が運営する塚本幼稚園(大阪市淀川区)は、戦前に国のために死ぬことを教えた「教育勅語」を園児に暗唱させることなどで知られています。
森友学園理事長の籠池泰典理事長は、改憲を目指す右翼団体「日本会議」の大阪代表を務めています。
新聞沙汰になるかもしれないと
同小学校の認可申請は2014年10月31日。日本共産党府議団が入手した大阪府私立学校審議会の定例会の議事録では、道徳の授業に学習指導要領で規定されている最低基準の3倍もの時間が費やされるなどの教育課程の問題や、法人の運営への幼稚園保護者らの疑問や不安があることなどが指摘されたほか、財政基盤が不安定なことや資金面の計画がないことなどへの懸念の声が相次ぎ、継続審議になりました。
翌1月にこの問題で開かれた臨時会でも、資金面での見通しへの疑問から「こんな絵空事でうまくいくとは思えない」との意見や、異常に低い人件費などから、「今後新聞沙汰にならないようにならなければ」との意見まで出されましたが、教育課程や財政面などの報告をするという条件付きで、「認可適当」の結論になりました。
2015年2月の国有財産地方審議会では、10年間は借地(約8770平方㍍)として貸し付け、契約後に8年をめどに学園が土地を購入することになりましたが、複数の委員から学園の純資産が4億2千万円と極めて少ないことなどへの疑問が噴出。売却金額については審議していないとされています。
評価額のわずか7分の1で売却
同小学校は16年4月開校を予定していましたが、1年先送りしています。学園と国は16年3月31日までに学校ができなければ、土地を更地にして返す貸付合意書を交わしていました。
ところが期日直前の3月24日、学園が土地購入を希望。国は6月に、更地の不動産鑑定価格9億5600万円の土地を、7分の1以下の1億3400万円で売却することを決めました。これは地下深くにあるごみの撤去代8億1900万円を差し引いた額でした。2カ月前の4月、国はすでに、地下3メートルまでのごみと土壌汚染の除去費用1億3176万円を学園に支払っており、国の税金が計9億5千万円、支払われたことになります。
地元では市民の会が結成されて
豊中市では、日本共産党や無所属市議、市民らが「『瑞穂の國記念小學院』問題を考える市民の会」を結成し、集会や地域へのビラ配布などを行ってきました。その中で、木村真市議(無所属)が、非公開だった売却額の開示を国に求めて大阪地裁に提訴。10日、日本共産党の宮本岳志衆院議員と辰巳孝太郎参院議員が財務省に聞き取り、売却額が明らかになりました。
宮本衆院議員が参考人招致要請
宮本議員は今月15日の財務金融委員会で一連の問題を質し、「国はただで手放したということにならないか」と指摘。国側は「更地の価格から様々な撤去費を控除したものが時価なので、指摘は当たらない」と答弁しました。21日の同委員会で宮本議員は、籠池理事長らの参考人招致を求めました。
民進党の福島伸享衆院議員の予算委員会での質問で、トラック4千台分相当の撤去運搬が、実際にされたかどうかを、国が確認していないことが明らかになり、同議員は、「利益供与したのも同じだ」と述べました。
日本共産党の山本一徳豊中市議は、「この土地は森友学園の前に、豊中市が無償貸借で公園にしたいと要望してもできず、他の法人が購入を希望していたが、購入できなかった。なぜ国はこれほど破格の売却額を示すことになったのか、しっかりと説明すべき」と語ります。
安倍記念小学院の名で寄付集め
小学校建設のための寄付金集めでも、疑惑が出てきました。学園は、塚本幼稚園保護者らへの寄付金募集で、寄付者の名前が安倍記念小学校の記念碑に刻まれると伝え、振込用紙の加入者も「安倍晋三記念小学院」と印刷していました。
新聞報道などによると、学園側は、2012年9月の総裁選直前、昭恵氏を通じて安倍首相に内諾を得ましたが、総裁になった後、その用紙の活用をやめたとしています。しかし、その後も流れ続けました。
予算委での民進党の質問に対し、安倍首相は「初めて知った」とし、「国有地払い下げや認可に私や妻が関与していたのであれば、総理を辞める」と2度も答弁しました。
15日、現地を視察した自由法曹団も会見で、「国有地売却に当たって審議会の目、国民の目をかいくぐった可能性がある」と指摘しました。
認可権者の松井府知事の態度も
認可をめぐる問題、9億の税金をかけて行われた工事の実体が明らかにされず、国有地がただ同然で売却されたこと、寄付金集めに総理の名前が使われたことなど、山積する疑惑の徹底究明が求められます。
学校認可は知事の決裁事項。3月末が期限ですが、いわくつきの学校の認可に判を押すのかどうか、松井知事の態度が問われます。
森友学園による小学校敷地(国有地)取得の経過
2014年10月31日 | 大阪府私学審議会に小学校新設の認可申請書を提出 |
12月18日 | 同審議会で継続審議に |
2015年1月27日 | 同審議会で条件付き認可適当に |
2月10日 | 国有財産近畿地方審議会で貸付契約後8年をめどに土地購入することに |
2016年3月11日 | 森友学園が深いところに地下埋設物(ごみ)があると国に連絡 |
3月14日 | 国が現地確認 |
3月24日 | 土地を更地にして返すことを貸付合意書で義務付けていた期日(3月31日)を前に、森友学園が土地購入を希望 |
3月30日 | 土壌汚染除去等費用1億3176万円を森友学園に支払う合意書 |
4月14日 | 国が撤去費用8億1900万円と見積もり |
6月20日 | 更地の不動産鑑定価格9億5600万円の土地を1億3400万円で売却が決定 |
(大阪民主新報、2017年2月26日付より)