おおさかナウ

2014年08月17日

住吉市民病院跡地 公募の病院が撤退
橋下市長 条件引き下げを示唆

now20140817 2016年3月末で廃止予定の住吉市民病院(住之江区)用地への民間病院誘致をめぐり、市の公募で事業者として内定していた医療法人が辞退した問題について、4日開かれた大阪市議会民生保健委員会で各会派が質問しました。日本共産党の北山良三議員は、再公募に当たっては病院誘致の目的に立ち返り、住吉市民病院の機能を継続し、小児・周産期医療を充実する立場に立つよう強く要求しました。

 大阪市は昨年、小児・周産期医療を担う民間病院の誘致へ公募を実施。堺市内で病院を経営する医療法人が唯一応募し、有識者や地元医師会代表らでつくる選定委員会で「適格」と判断していました。
 市はことし4月にも協定書を締結する予定でしたが、開院時の医療体制の確保などをめぐり協議が難航し、7月末に医療法人側が辞退の意向を伝えました。橋下市長は「公募条件のハードルが高すぎた。失敗だ」などと発言し、再公募するとしています。

市議会民生保健委 機能継続と充実の立場で
条件の引き下げをするな ―日本共産党 北山議員が主張

 日本共産党の北山良三議員は、民間病院を誘致する目的は、現行の住吉市民病院が担う産科・小児科の機能存続、大阪市南部地域(南部医療圏)の小児・周産期医療の充実の2つであり、廃止条例可決当時の付帯決議に明記されていると強調。再公募の要件も、この内容を満たすものでなければならないとしました。
 北山氏は、橋下市長が住吉市民病院を廃止して統合するという「府市共同住吉母子医療センター(仮称)」(住吉区)の小児周産期病床は、現行の住吉市民病院(11年度)と比べて65床、同病院の現地建て替え案と比べて85床不足していると指摘。「機能存続のためには誘致する病院は少なくとも産科・新生児科・小児科で65床、南部医療圏の充実には84床必要。こうした根拠を持って誘致を進める必要がある」と主張しました。
 また選定委員会が「適格」と認定する際に、開院時から必要な医師体制を確保することや、住吉市民病院の廃止と新病院の開院に空白期間を生まないよう求めたことも示し、「こうした議論を今後の再公募に生かすべき」と求めました。

公立の建て替えも視野に入れるべき

 市側が「選定委員会には、今回の辞退を踏まえて、公募条件などあらためて議論していただく」と答弁。北山氏は「誘致目的に沿わない低レベルの医療・医師体制でよしとすることは、絶対にやってはならない。地域住民の要望・期待に背き、議会の付帯決議にも反する」と強調。同時に、民間病院の誘致には困難さがある中で、「あらためて、公立病院として現地での建て替えで小児・周産期医療の拡充を図るという道も視野に入れるべきだ」と提案しました。

小児・周産期医療の不足深刻
住吉市民病院廃止問題

 橋下市長は12年5月、「府市統合本部」の方針に基づいて住吉市民病院を廃止し、府立急性期・総合医療センターに新設する「府市共同住吉母子医療センター(仮称)」に統合する方針を打ち出しました。大阪市南部地域で小児・周産期医療が不足する中、住吉市民病院の耐震化対策もあって小児・周産期医療に特化して現地で建て替えることになっていたにもかかわらずです。
 橋下市長の強引な廃止方針に、地元の住之江区や西成区では不安や怒りの声がわき起こり、「住吉市民病院を充実させる市民の会」が署名運動を展開。存続を求める住民世論に公明、自民、民主系も一時は廃止反対を表明しました。
 橋下市長は反対世論を「ミクロの声」などと攻撃する一方、廃止後の跡地への「民間病院の誘致」を打ち出し、廃止条例案は昨年3月市議会で日本共産党以外の賛成多数で可決されました。

(2014年8月10日・17日付「大阪民主新報」より)

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