おおさかナウ

2016年12月25日

市民の財産を売り払い
巨大開発に投じるもの
山中日本共産党大阪市議団幹事長の報告から

 大阪市営地下鉄は1933年以来、市民の税金と利用者の乗車料金で営々と築かれてきました。全国の公営地下鉄の中で唯一、累積赤字を解消し、2015年度決算で374億円もの黒字を積み上げている〝超優良企業〟です。いまこそ本当に、可動式ホーム柵の設置をはじめとした安全対策、震災対策、今里筋線延伸、そしてバスへの支援や、地方公営企業法の定めに沿った一般会計への納付などができるところに来ているのです。

民営化になれば経営は綱渡りに

 可決された基本方針で民営化を行うとどうなるでしょう。まず一つは、資金繰りが綱渡りになることがはっきりしました。維新が「東京メトロも民営化して経営状態が良くなっている」などと宣伝していますが、東京メトロは国が特別法をつくり、営団地下鉄の職員はそのまま引き継ぎ、企業債も返済せず新会社に引き継ぐことになりました。だから経営できています。

 ところが大阪市の場合には特別法はありません。いま地下鉄会計には現金・預金など手持ち資金が1500億円ありますが、民営化するには1006億円の退職金を払わなければなりません。職員はいったん交通局を退職してから新会社に行くからです。しかも会社都合なので、新会社に移らない職員は45%増の退職金、新会社に行く職員も20%増です。廃止する市バスの終結処理に205億円を出します。手持ち資金はなんと70億円しか残りません。

ホーム柵の設置ができなくなる

報告する山中氏

報告する山中氏

 市営地下鉄が借りている企業債は一括返済しなければなりません。そのために市中銀行から約5千億円を借り入れします。この返済に汲々としなければならず、可動式ホーム柵の設置どころではありません。
 いくら交通局が「安全・安心の精神は引き継ぎます」「可動式ホーム柵の設置も検討します」と言っても、基本方針のシミュレーション上、無理です。さらに基本方針への賛成を取り付けるために自民や公明の要求を受けて出費を約束してシミュレーションを修正したため、民営化後の経営はさらに厳しいものになります。

 例えば敬老パスの問題。民営化のメリットを語れなくなった吉村市長は、年間3千円の自己負担について、「新会社が販売促進の意味で負担する」と言います。もともと敬老パス制度は「販売促進」が目的ではなく、長年大阪市を支えてくださった高齢者の皆さんに敬意を表して、元気でお出掛けしてくださいという趣旨のもの。一般会計でちゃんとやらなければなりません。それならいまやればいいのに、「民営化すればできる」と言うのです。

民営化の狙いは株式上場と売却

 黒字の地下鉄を、なぜそこまでして民営化するのでしょうか。株式を上場して売却する以外に狙いはありません。基本方針のシミュレーションは、早く上場できる経営体力をつけるためのもので、可動式ホーム柵の計画は入っていません。エレベーター設置などの建設改良などは手持ち資金の範囲でするとしていますが、「新たな事業展開」の名で建設するホテルや賃貸マンションのお金も建設改良の中に含まれています。

 民営化後の10年間は新たな借り入れは一切しません。これらの結果、民営化後5年で経常利益率は関西5私鉄の平均に到達し、キャッシュフロー(資金の流れ)に対する有利子負債の倍率は5私鉄のどこよりも小さくなります。つまり上場できる条件を整えるためだけのシミュレーションなのです。

 思い出してください。2011年に橋下知事(当時)が「地下鉄を売ってでも高速道路・淀川左岸線延伸部をやる」と公言しました。その年末に橋下氏が市長になったとたんに、民営化に舵を切り、決まっていた御堂筋線全駅への可動式ホーム柵の設置、市バスへの毎年30億円の支援もやめてしまいました。この流れを考えると、ひたすら株式上場・株売却でできたお金を左岸線延伸部やなにわ筋線などの巨大開発に使いたいということです。

本丸は廃止条例 諦めず声上げて

 この間の市議会の議論を通じて、民営化で資金不足に陥ることに、自民は相当危機感をもっています。マスコミも「地下鉄民営化 多難の一歩」(「朝日」)と伝えるなど、いま本当に微妙な段階です。本丸は、来年2月議会に吉村市長が出すと言っている、公営としての地下鉄・バス事業を廃止する条例です。可決には市議会(定数86)の3分の2の賛成(58人)が必要。現在の議会勢力は維新36人、自民20人、公明19人、共産9人、OSAKAいくの1人、大阪あべの1人です。維新と公明だけでは58人に達しません。

 13日の本会議で私は基本方針案への反対討論に立ちましたが、維新も公明も討論に立ちませんでした。自民は賛成討論を行いましたが、「あくまで基本方針への賛成であり、廃止条例は別」という態度です。自民が廃止条例に賛成すると決まったわけではありません。

 市民の財産である地下鉄を、巨大開発のために勝手に売り飛ばさせることはできません。民営化はまさに世紀の愚策。諦めないで声を上げ、ご一緒に廃止条例を葬って民営化を阻止しましょう。安全・安心の地下鉄、バスを守る地下鉄を公営で発展させましょう。私たち議員団も全力で頑張ります。



(大阪民主新報、2016年12月25日付より)

 

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