おおさかナウ

2016年10月16日

必要な人から福祉を奪う松井府政
福祉医療助成制度
負担引き上げを検討

老人医療費助成制度
対象外し事実上廃止に

 大阪府は子どもやひとり親、障害者、高齢者の経済的負担を軽減する福祉医療費助成制度の対象を広げる一方で、患者負担額の引き上げを検討しています。また65歳以上で、精神障害者(1級以外)や難病患者(重度以外)、結核患者は対象から外す方向で、事実上、老人医療費助成制度を廃止しようとしています。いずれも来年11月の導入を目指していますが、子育て世代や高齢者から批判の声が出ています。

〝負担増は死活問題〟 難病患者の松本さん 

対象外しと負担増で対象を一部拡大

 福祉医療制度の府の見直し案では、これまで対象外だった精神障害者1級と重度難病患者を新たに助成対象に加え、精神障害者は入院も3カ月まで助成。訪問看護ステーションによる訪問看護も対象に加えます。
 このように助成対象を一部拡大するものの、対象拡大によって増える必要経費は、患者負担増や対象者の一部外しでまかなおうとしています。

 現在、65歳以上は精神障害者なども病院代は1回500円ですが、見直し案では、年齢に関係なく精神障害は1級だけ、難病患者も重度の人だけに限り、これまで対象だった約3万6300人以上を対象外にし、老人医療費助成制度を実質廃止しようとしています。

薬局でも負担増で上限も引き上げる

「医療費は死活問題」と話す指定難病患者の松本さん=7日、東大阪市内

「医療費は死活問題」と話す指定難病患者の松本さん=7日、東大阪市内

 現在は入院通院ともに1日500円で、薬代の負担はなく、同じ医療機関であれば月1千円が上限です。これを府は薬局でも500円を負担し月の上限を撤廃しようとしています。
 さらに複数の医療機関にかかった場合の月の負担上限2500円も、4500円程度に引き上げられると見られます。

 松本信代さん(76)=東大阪市在住=は、56歳の時に血管が炎症を起こし、腎臓疾患に移行する「多発血管炎」を発症しました。髪の毛を触れないほど頭皮が痛み、耳は外耳炎で真っ赤に腫れ、目も結膜炎で痛みました。せきも止まらず40度の高熱が続きました。
 耳鼻科や眼科、脳外科などを受診しましたが、病名が分かるまで7カ月かかりました。診断の際、家族は「10日ぐらいが山」と医師から言われましたが、4カ月間入院し一命を取り留めました。

 いまでもステロイド剤と副作用を抑える薬6種類を服用。2カ月に一度、大阪市内の病院に通います。国の指定難病で、月5千円の自己負担を超える医療費は補助されます。府の老人医療費助成制度を申請し、昨年7月からは1回500円で済んでいます。

月10万円足らずの年金でどう暮らす

 ところが大阪府は、重度障害以外を医療費助成の対象外にすることを検討。国も「軽快者」として指定難病の助成から外そうとしています。

 夫婦で月10万円に満たない年金から、介護保険料や後期高齢者医療保険料が天引きされています。76歳の夫が働き、長男(45)の援助で生活。「動けるうちは、はってでも自分のことはやりたいが、動けなくなったらどうしようかと夫といつも話している。高齢者は働くところもないし病気になったら働けない。医療費がかさんでくるのは本当に死活問題」と訴えます。

〝上限ないと厳しい〟 池田市の森さん

 患者負担の引き上げに「とても許せない」と怒る森朋子さん(41)=池田市在住。長女の七月(なつき)ちゃん(7)は以前、耳鼻科に月2〜3回通っていたことがあります。
 「耳鼻科は1週間ごとに先生が診るので、上限がなくなると本当に厳しい」

 現在1回500円の負担が制度が見直されると千円に、月千円の負担が2千〜3千円に増えます。4〜5歳の頃は夏風邪で口の中に発疹ができるなどし、深夜に泣き叫ぶことがありました。子どもを抱いてあわてて病院に向かう際、財布を忘れそうになったこともあります。

大阪に越してきた知人が負担に驚き

森朋子さん

森朋子さん

 隣接する兵庫県川西市では、子どもの医療費は無料です。同市から引っ越してきた友人は、大阪で500円かかることに驚くと言います。

 森さんは貧困や虐待児などへの影響も心配します。「学校の授業中に公園にいる子もいる。1日3食食べていない子どもが、思っている以上にいるようだ。育児放棄されている子どもでも、無料なら医療にかかれるかもしれない。せめて値上げはやめてほしい」と訴えます。

 

(大阪民主新報、2016年10月16日付より)

 

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