おおさかナウ

2016年09月18日

教育歪める 直ちに廃止を
府が導入「チャレンジテスト」

 

入試で「有利な学校」「不利な学校」つくる/
たった1回で内申決定/テスト漬けさらに

 大阪府教育委員会は6日、府内の公立中学3年生がことし6月に受けた府独自の「チャレンジテスト」の結果概要を公表しました。このテストの学校別の成績が、来春の公立高校入試で個人の合否を大きく左右し、入試に有利な学校と不利な学校とがつくられることになります。子どもたちや学校間にいっそう競争を持ち込み、内申点にまで教育行政が介入する松井維新府政に、各分野から批判の声が上がっています。

大阪の中学生をテスト漬け

 府教委は、「生徒の学力の状況をつかむことで、教育の成果と課題を明らかにし、今後の教育に生かす」として、昨年度から府内の中1、中2生を対象に、1年生は国語と数学、英語の3教科、2年生は社会と理科を加えた5教科で「チャレンジテスト」を行ってきました。
 府内の中学校では、学期ごとの中間テストや期末テスト、年数回の実力テスト、2007年から行われている全国学力調査(全国学テ、3年のみ)、昨年度からの「チャレンジテスト」と、多い学校では年14回ものテストで、中学生は「テスト漬け」になっています。

年間評価も一度のテストで

 府教委は、“生徒の学習意欲を高めるため、個人の努力が反映される”として絶対評価の徹底を進めていますが、それが年に1度の「チャレンジテスト」でひっくり返される事例が各地で相次ぎ、「究極の相対評価」と批判の声が上がっています。
 生徒の1年間の成績は、教師が定期試験や授業態度、提出物などから5段階で評価しますが、1〜2年生は1月の「チャレンジテスト」の得点に応じて変更されることになります。

 ことし1月の「チャレンジテスト」では、例えば2年生の国語で、学校の評定が3以下でも、テストが83点以上であれば5、71点以上で4に上がります。
 逆に1年生英語では、学校の評定が4以上でも、テストが50点以下なら3、27点以下なら2、11点以下なら1に下がります。一部報道によると、学年の1〜3割の生徒の評価が変動した中学校が多かったとされています。

各校の内申を決める団体戦

 府教委は昨年度、3年生の4月に行われる全国学テの学校別結果で、学校ごとの内申点の平均値を設定しました。
 しかし文科省は「全国学テの趣旨から逸脱する」として、今年度以降の利用を禁止しました。府教委は代わりに、1〜2年の「チャレンジテスト」を、3年生でも5教科で実施。テスト結果で各中学校がつけられる内申平均を決めるようにしました。
 これにより、「チャレンジテスト」が高得点だった学校では、生徒に高い成績をつけられる一方、府内平均よりも低かった学校は、生徒の評価を低くせざるを得なくなります。この仕組みから中3の「チャレンジテスト」は「団体戦」とも言われます。

5教科の得点で9教科評定

 しかも、音楽や体育などテスト教科以外の4教科までもが、評定の範囲を決められます。音楽や運動の才能に恵まれた生徒がいても、中学によって正当な評価を受けられない可能性があります。
 入試では教科の評定が1違うと、各高校の採用する方式にもよりますが、入試当日のテストの点数10点の差(90点満点)になります。

1年生から入試に追い込み

 府教委は、「チャレンジテスト」結果の内申書への利用を、今後さらに拡大。2017年度は2年生からの評定を、18年度は1年生からの評定を利用しようとしています。中学生は1年生から高校受験に追い立てられることになり、「1〜2年生では部活に打ち込み、3年生の夏休みが終わってから受験勉強に励む」ことは難しくなります。

俺たちは受けない方がいい

 勉強のできる生徒が「私たちが頑張っても、0点を取る子がいる」と、他の生徒を非難したり、「俺たちは参加しないほうがいい」と自信のない生徒がテスト日に欠席した例もあります。
 学校側も生徒や保護者向けの文書で、「もはや受験は3年生だけのものではない」と書くなど、危機感を強めています。
 北摂地域の中学では、「事前の練習問題も含め取り組んでほしい」と求め、府南部の中学では「(欠席した場合)学校の評定した評価がそのまま記載される」と案内。別の中学は「体調が悪い中でテストを受けることで不利に」「無理に受験することは勧めない」と書くところもあります。
 北河内のある中学は、始業式翌日にいっせいに模擬テストを実施。大阪市内では、修学旅行翌日の代休日に生徒を登校させ自主学習会を行ったり、結果の速報値を学校だよりに掲載する中学校もありました。
 進学塾も対策講座を開き、「チャレンジテスト対策、見事的中」を掲げるなど、子どもの獲得に乗り出しています。

現場の教師から批判が集中

 府南部の中学校に勤める教員たちからは「たった一度の、しかも(3年生では)1学期のテストで評定範囲が決められるのは納得しがたい。夏休み中の頑張る意欲を削ぐことにもなりかねない」「5教科の得点で9教科の評定が左右されるのはおかしい。観点別に細かい作業をしながら出していた評定をどう考えているのか。現場を馬鹿にしている」との声が出ています。
 北河内からも「勉強の苦手な子どもの自尊心を傷つけるひどい状況。即刻廃止してほしい」。別の地域では「支援学級の教育が大きくゆがめられている。その子に必要な学習より、受験対策のための学習を優先せざるを得ない」と訴えが上がっています。

判例を見ると「違法な調査」

 行政による全国学力テストをめぐっては、1976年の旭川学テ最高裁判決で、「成績評価のためにされるのではない行政調査に限り合法」とされたことからも、「チャレンジテスト」は違法な調査といえます。全国学テと同様、「チャレンジテスト」は行政調査であり、参加するか否かは、各市町村教育委員会が自主的に判断し、府教委は強制できません。
 府公立中学校校長会は、「高校入学者選抜方法について、調査書(内申書)に記載する評定については各中学校にゆだねられたい」とする要望書を提出しています。

共産や自民が中止を求める

 日本共産党の石川多枝府議は昨年10月の府議会教育常任委員会で、「子どもたちは中学入学と同時に、受験を意識しながら学校生活を送らなければならなくなる」と指摘し、「チャレンジテスト」の中止を求め、少人数学級の拡大など、教育環境の整備に府は責任を果たすべきと主張しました。
 自民党府議団はことし1月、「毎年1億円もの予算を投じて行われる『中3チャレンジテスト』は取りやめ」るよう求める「会派の見解」をまとめています。昨年の知事選候補だった栗原貴子元府議も、自民党の代表質問で、「生徒の学力を、たった一度のしかも限られた科目でしかないテストで計るということはできない」と批判しました。
 「子どもと教育・文化を守る大阪府民会議」は、中3のテスト結果を来年3月の入試に使わないよう求めています。また、「チャレンジテスト」の廃止、市町村教育委員会が「チャレンジテスト」に参加しないよう、10月10日に府民学習会を開催(別項)し、PTAや教育関係者、市民と運動を広げるとしています。

10月10日に学習会

「なくせ!『チャレンジテスト』府民学習会(仮称) 10月10日(月・休)午後1時半、たかつガーデン8階たかつ西(近鉄大阪上本町駅下車)。主催=子どもと教育・文化を守る大阪府民会議。


(大阪民主新報、2016年9月18日付より)

 

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