おおさかナウ

2016年09月11日

「こんなにも不便なのか」 大阪市バス 路線廃止・減便
〝交通難民〟 悲鳴と驚き
維新政治 採算だけで切り捨て・民営化に固執

 「必要な路線は確保されている」――大阪市バスの現状について大阪市交通局は市議会で繰り返しこう答弁してきました。しかし橋下徹前市長時代に強行された市バスの路線廃止・減便や赤バスの廃止で市内各地で「交通難民」が生まれていることが、大阪市をよくする会の「市バスアンケート」でもあらためて浮き彫りになっています。

「よくする会」がアンケート 怒りと嘆きの声びっしり

 「1時間に1本しかバスがない」「直通で区役所に行けない」「病院に行くのをあきらめた」――大阪市をよくする会がことし6月から取り組んでいる「市バスアンケート」には、6日現在で1334通を超える返信が寄せられ、自由記入欄には市バスの現状への怒りや嘆きが、びっしりと書き込まれています。

 大阪市交通局はかつて一般会計からお金を出してバスを維持。地下鉄が累積赤字を解消してからは「アクションプラン」(2012年)で毎年30億円の支援を決めていました。ところが11年に就任した橋下前市長は、「あり得ない」と支援を打ち切り。不採算の「地域サービス系」路線を削減した結果、バス系統数は2012年の132系統から15年の87系統へと激減。さらに赤バスの廃止(14年3月末)、敬老パスの有料化などで高齢者はじめ市民に負担を強いてきました。

東淀川区では〝市バスカフェ〟
交通権の保障は市の役割

わが街からバス路線の充実など地域の交通のあり方を考えようと開かれた「市バスカフェ」=1日、大阪市東淀川区内

わが街からバス路線の充実など地域の交通のあり方を考えようと開かれた「市バスカフェ」=1日、大阪市東淀川区内

 東淀川区では1日、住民が地域の交通のあり方について語り合う第2回目の「市バスカフェ」を開きました。同区で活動を続ける「つくろうコミュニティバス市民ネット・東淀川」(大川順子代表)が主催したものです。

 講演した土居靖範・立命館大学名誉教授は「大阪市は何のためにあるのか。誰のためにあるのか」と切り出し、安心して住み続けられる地域づくりには、通院や買い物、公共施設の利用や文化活動、社会活動に参加する機会をすべての人に保障することが欠かせないと強調しました。

 土居氏は「住民の移動の権利=交通権は、憲法の基本的人権・生存権保障に根拠がある。これを保障するのは国と自治体の責務。生活交通は住民生活のライフラインであり、電気・ガス・水道と同様な公共サービスが望まれ、自治体が責任をもってマネジメントすることが極めて重要だ」と力説しました。

市議会に陳情署名
一体で市営交通の発展を

地下鉄・市バス一体運営で公営交通の発展をと、署名を呼び掛ける城東区社保協の人たち=1日、大阪市城東区内

地下鉄・市バス一体運営で公営交通の発展をと、署名を呼び掛ける城東区社保協の人たち=1日、大阪市城東区内

 橋下前市長は地下鉄・市バスを廃止する条例案を2回提案。可決には市議会(定数86)の3分の2(58人)以上の賛成が必要ですが、いずれも維新以外の反対多数で否決。吉村市長はことし2月、過半数の賛成で可決する地下鉄と市バスの「民営化基本方針案」を提案しました。

 地下鉄は継続審議となりましたが、市バスは民営化後「おおむね5年程度は現在の路線を維持」するとしていた原案を、公明党の意見を入れて「少なくとも10年」と修正し、維新・公明の賛成多数で可決。基本方針案と一体の「市バス経営健全化計画」は、土地信託事業「オスカードリーム」の失敗のつけをバス事業に押し付け、経営破綻に追い込むものです。

 吉村市長は地下鉄の基本方針案を可決した上で、地下鉄と市バスの廃止条例の提案を狙うなど民営化に固執しており、16日開会する秋の市議会が大きな山場になります。
 大阪市をよくする会と大阪市営交通の会、大阪市対策連絡会議は共同で「地下鉄と市バスの一体運営で便利で安心・安全な市営交通の発展を求めます」と陳情署名運動を推進。民営化の是非を議論する前に、地下鉄の黒字(2015年度見込み374億円)を活用して地震・津波対策やホーム可動柵の設置などの安全対策や、料金値下げ、バス会計への支援でバス路線の新設・復活・改善や、地域のコミュニティバス路線の再編・新設を行うよう求めています。

大阪市をよくする会の
市バスアンケートから

大都市と思えない/とても不便/「市民の足」は充実を

記入欄には書き込みがびっしり

記入欄には書き込みがびっしり

○…バスの待ち時間は、車いすのため雨や雪の時は10分でも苦痛です。赤バスも廃止され、市バス(39系統)も1時間に1本になり、その上主要な駅には行ってくれない。大都市とは思えません。(北区大淀中3丁目・女性・48歳)
○…大きな病院行きのバスがありません。検査に行くこともできません。歩いたり自転車に乗れる人は良いけれど、年寄りは足が悪いのでどこにも行けません。全部我慢しています。(福島区海老江8丁目・女性・82歳)
○…今までは駅まで自転車に乗っていましたが、足先が不自由になり、歩いて10〜15分はつらくなりバスを使うようになりました。でも1時間に1本のため、病院に行く時は1台早めのバスに乗らなければいけません。(港区八幡屋3丁目・女性・66歳)
○…年をとっていくと区役所に行くことが多くなるのに、直通バスがなくなった。すごく困っている。減便ですごく混み合って、足が悪くても座ることもできなくて。年をとっていくとバスは本当に大切です。(淀川区塚本5丁目・男性・69歳)
○…夫が75歳を過ぎて危険だと車の運転をやめました。それで気にしていなかったバスがこんなにも不便なものだと気付きました。区役所にバスでは行けず、阪急上新庄駅へも1時間に1本しかバスがありません。(東淀川区豊里2丁目・女性・78歳)
○…赤バスが廃止されて区役所へ直行できなくなり、乗り換えしないと行けない。1時間に1本になり、無茶苦茶不便になった。赤バスを復活してほしい。いっぱい運行しているところ(市)はたくさんある。(生野区巽東2丁目・男性・72歳)
○…区役所に行くのにポートタウンからはニュートラムに乗り、バスを乗り継がないといけない。昔はバス1本で行けた。市民の足であるバスはもっと充実を。「陸の孤島」で島から出られなくて困ります。(住之江区南港中2丁目・女性・73歳)
○…南巽(生野区)の施設に父が入院しているので行くのですが、地下鉄だと乗り換えで1時間くらいかかり、自転車でも40分くらいかかり、とても不便。(平野区長吉出戸5丁目・女性・57歳)

 

 

(大阪民主新報、2016年9月11日付より)

 

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