おおさかナウ

2016年09月04日

大阪の共同の到達点と前途について

 

 日本共産党の柳利昭府副委員長が同党の地方議員を対象にした研修会(8月25日)などで行った報告「大阪の共同の到達点と前途について」を大要で紹介します。

日本共産党府委地方議員研修会
柳利昭副委員長の報告(大要)

一、大阪における共同はどう発展してきたか

11年ダブル選が出発点となって

柳利昭府副委員長

柳利昭府副委員長

 大阪での共同は、11年のダブル選を出発点に、13年の堺市長選と一連の首長選、15年の住民投票とダブル選など激しい攻防を経て、今回の参院選を迎えました。

 13年の堺市長選と15年の住民投票の勝利の原動力は、「共同の力」「論戦の力」「草の根の力」の発揮です。「堺は一つ。堺をつぶすな」「大阪市つぶしを許すな」という鮮明な共同目標の下に、橋下・維新以外のすべてを対象に共同を追求。住民投票の最終盤には自民、共産、民主の合同街頭演説を行うところまで「共同の力」が発展しました。
 「論戦の力」では、「丸わかりパンフ」「日刊ビラ」などの攻勢的な宣伝で橋下・維新を守勢に追い込みました。共同政策は、住民投票で「共同公報」の形に実りました。「草の根の力」はとくに住民投票で大きく広がりました。
 13年の参院選での日本共産党の躍進、大阪選挙区での辰巳孝太郎さんの勝利が、これらの力をさらに強めたことも重要です。

反維新の共同の姿を示し切れず

 15年のダブル選では、住民投票での勝利を受けて、「維新政治を終わらせる」との大義に立つ共同へ、わが党と「明るい会」は、共同の陣をつくるために積極的・能動的に働き掛けました。住民投票の到達点をさらに発展させるなら勝利の可能性はありましたが、維新による「野合」攻撃、安倍政権による共同つぶし、それを受けた自民党の動揺、これらを乗り越えるわが陣営の政治的・組織的な力量不足から、共同の明確な姿を府民の前に示し切れませんでした。

「5野党合意」を大阪で具体化し

 「反維新」の共同の探求の一方、全国でも大阪でも戦争法反対・廃止の大きなたたかいが広がり、ことし2月19日には画期的な「5野党合意」が成立。それを受けて参院選での野党共闘の探求が全国でも大阪でも行われました。「5野党合意」では維新が安倍政権の補完勢力であり、安倍政権与党とともに少数に追い詰める対象だと合意されたことが重要な点です。

 大阪でもこの「5野党合意」を具体化するため、初めての経験を重ねました。複数区の大阪でも野党の共同行動を追求し、各種集会で渡部結さんと民進党の尾立源幸氏がともに訴える場面が8回もありました。

数多くの人々が踏み切って行動

参院選では「安保・維新政治ノー」で多くの団体・市民が立ち上がり、共同が広がりました=7月9日、大阪市北区内

参院選では「安保・維新政治ノー」で多くの団体・市民が立ち上がり、共同が広がりました=7月9日、大阪市北区内

 選挙戦では「関西市民連合」や「ママの会」の皆さんなど、数多くの団体や個人が市民として立ち上がりました。
 元大阪市長の平松邦夫さん、「民意の会」代表の浅野秀弥さん、落語家の笑福亭竹林さん、「大阪を知り、考える市民の会」世話人の中野雅司さんの4人が、安倍政権を批判し、「維新の2人を許さないために、わたなべ結さんを」と連名のアピールも発表し、党の押し出しを含めて熱い訴えを行いました。「反維新」の共同で結び付き、信頼関係を深めてきた皆さんが、選挙戦で一歩踏み切って行動されたということです。絵本作家の長谷川義史さんは最終日に終日、「みんなの命を守るために、今度ばかりは共産党と渡部さんに」と訴えて下さいました。

 住民投票以来の共同のたたかい、全国的な野党共闘の実現に果たした共産党の役割への大きな評価が広がっています。わが党が思い切って働き掛け、対話と共同を広げてきたことが土台にあると思います。

二、安倍政権と維新による反共と野党分断の攻撃

 今回の参院選では、この共同の前進に対して、安倍政権与党が激しい共産党攻撃、野党分断を行いました。「産経」など一部メディアも動員して、野党共闘とその先頭に立つ共産党への恐怖と憎悪に満ちた激しい攻撃が展開され、それはいまも続いています。

 大阪ではそれに加えて、安倍政権と一体になった維新から攻撃がありました。安倍政権が大阪選挙区での「維新2人擁立」を働き掛け、実現したこと自体、「改憲反対勢力つぶし」「共産党、民進党を勝たせない」ところにありました。

エセ対決構図で本当の姿を隠す

 参院選の対決構図は「安倍政権与党」対「野党・市民の共闘」でしたが、維新は「自民か維新か」のエセ対決構図を押し出し、本当の対決の姿を覆い隠す宣伝を展開しました。参院選でも「古い政治」にわが党を含む既成政党すべてを入れ、「新しい政治は維新こそ」と宣伝したのです。

 その上で松井知事、吉村市長を先頭に「野党共闘」つぶしを徹底しました。「大阪では自民と共産が野合している」という攻撃と、「人殺し予算」発言なども利用した徹底した反共攻撃です。

逆風とたたかい勝ち取った前進

 党創立94周年記念講演で志位和夫委員長は、支配勢力の強い危機感に突き動かされた攻撃が、一定の逆風として作用したことを率直に指摘した上で、これと正面からたたかって相手の思い通りの結果にはさせずに前進を切り開いたことを確信にしようと述べています。
 大阪での比例得票42万、選挙区での渡部候補の得票45万は、安倍政権・維新が一体となった攻撃と対決した結果であり、この攻撃を打ち破って維新の「重石」を取り除くなら、どこよりも飛躍の条件が大阪にはあるという構えで立ち向かいたいと思います。

三、政権打倒の野党共闘と大阪の「反維新」の共同

 大阪の今後のたたかいを展望する上で、政権打倒を目指す「野党共闘」と大阪の「反維新」の共同という2つの共同を発展させることが重要です。

自民政権打倒が全党の優先課題

 昨年のダブル選をめぐり、「自民党と共同したのは失敗ではなかったか」「戦争法廃止のたたかいとの両立は困難」などの声がいまも一部にありますが、日本の社会変革の事業で自民党政権を倒し、民主的連合政権を樹立することは、最優先の全党的課題です。昨年、「戦争法案阻止」が政治の中心問題になる一方でダブル選が迫る中でも、わが党が「戦争法案ストップ」「安倍政権打倒」を掲げ、野党共闘と市民共同を追求してたたかい抜いたのは当然です。

 「維新こそ反動の中心」との見方もありますが、これは正確ではありません。維新は「安倍政権の補完物」であり、安倍政権の後押しの下で大阪の地方政治で反動勢力の中心にあるわけです。安倍政権の打倒こそ日本の政治変革の当面の中心課題であり、これをやり遂げることが維新の屋台骨をも崩します。

大阪では反動の首座にある維新

 大阪の地方政治で反動の首座にあるのは、知事・大阪市長を握る維新。背景には「2大政党」「オール与党」政治の歴史的破綻が最も集中的に表れている大阪で、「第3極」ポーズをとる維新が台頭してきたという特別な条件があります。

 私たちは維新政治について、住民の暮らしを守る自治体の役割の放棄、利益優先の「何でも民営化」、民主主義破壊の独裁的運営など、従来の「オール与党」政治にもない「異質の危険」を指摘してきました。維新政治打破のたたかいに全力を挙げ、共同しうるすべての党派・個人と手を携えることが求められています。

「2つの共同」を区別して推進を

 この2つの共同は、その目標と共同の対象が明確に異なります。「野党共闘」は「戦争法廃止」「立憲主義回復」「安倍政権打倒」を目標に、政権共闘への発展も展望しながら、4野党と広く市民を対象にしたもの。「反維新」の共同は、「堺市をなくすな」「大阪市をつぶすな」「維新政治を終わらせる」を目標に、府議会・市議会、野党と市民を対象にして進めるという違いです。

 2つの共同には相互に重なり合う部分もありますが、区別して推進すべきものです。私たちが大阪で積み重ねているたたかいの教訓を自らのものとして前進する構えや覚悟が問われます。国政でも地方政治でも現実政治を民主的に変革する担い手となり、「統治の党」として成長していくために不可欠の課題でもあります。

四、志位委員長の提起を受けてどう共同を進めるか

 この大阪での共同をいかに推進するか。記念講演で志位委員長が「野党共闘の課題と展望」として4つの点を提起しました。総選挙を展望して、野党と市民の共同を積極的に追求することが求められています。共同・統一戦線こそ政治革新の推進力だという綱領路線に立ち、その推進を第一級の政治課題として「野党共闘」も「反維新」の共同も、新たな発展を切り開きましょう。

維新追い詰める「大義」を鮮明に

 大阪での維新とのたたかい、「反維新」の共同の推進では8月の第9回府委員会総会で次の5点を提起しました。①国政での立ち位置をあぶり出す――「改憲与党」「安倍政権の補完勢力」②「大阪改革幻想」「維新改革神話」を打ち砕く――真相の暴露と本物の「大阪改革」の展望を示す③「野党共闘」、「反維新」共同を府下全域で構築する④草の根で維新を打ち破る巨大な組織力、ネットワークづくり⑤一つ一つの中間選挙で維新を打ち破っていく――です。

 そのために「共同の大義」と「旗印」を鮮明にするために力を尽くす。これを府民・市民の前に堂々と示してこそ相手を追い詰めることができます。対等の「大義ある共同」を成立させると同時に、その「共同の姿」を府民・市民的に浮き彫りにする独自の努力が大事です。日常的な各分野、草の根での行動と共同が重要であり、地方議会、地方議員の果たすべき役割が決定的です。

未踏の領域でのたたかいに挑む

 「綱領を語り、日本の未来を語り合う運動」を通じて日本共産党の姿を丸ごと知ってもらう努力と合わせ、あらゆる分断攻撃とたたかっていく取り組みが重要です。決定的なかなめは、草の根から共同をつくりあげ、「共同の大義」を徹底し、分断攻撃をはねのける、強大な党建設にあります。

 70年代からの大阪のたたかいは共同の探求の歴史です。その積み重ねの上に「反維新」の「オール大阪」のたたかいの発展があり、国政選挙での野党と市民の共闘にも、「オール大阪」のたたかいで広がった特別の厚みがあります。このたたかいの歴史を踏まえ、「新しい歴史をつくる未踏の領域」でのたたかいに挑みましょう。

 

(大阪民主新報、2016年9月4日付より)

 

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