いらんやろ! 緊急事態条項
大阪弁護士会 パンフ2万部作成
天神祭で市民に配布
「ちょっと立ち止まって憲法や緊急事態条項を考えてみませんか?」――安倍政権が目指す憲法改正で主要テーマになるとされる「緊急事態条項」創設について、6月、山口健一会長名で反対声明を発表した大阪弁護士会は、緊急事態条項の問題点を分かりやすくまとめたパンフレット「いらんやろ!憲法に緊急事態条項」を2万部作成。25日夕、天神祭でにぎわう大阪市北区の繁華街で通行人らに配布しました。
長谷川さんがイラスト担当
パンフレットは、山口会長の反対声明(別項)の内容を分かりやすく伝えようと作成されました。文庫本サイズで8㌻全ページカラーです。
絵本作家・長谷川義史さんのイラスト付きで、Q&A形式で「緊急事態条項って何?」など高校生の質問に、大阪弁護士会会長が分かりやすく答える内容です。
大阪弁で掛け合いしながら
パンフは、わざわざ憲法に入れなくても、災害対策基本法や事態対処法など、自然災害や武力侵攻、テロ事件などに対応する法律がすでに整備されていると解説。
高校生「じゃあ、緊急事態条項って、ほんまに必要ない?」
会長「ないない、ない、絶対にない!」
高校生「必要もない、おまけに怖いもんやったら、緊急事態条項は…」
会長「いらんやろ!」
と大阪弁で掛け合います。
また、「ワイマール憲法」があったドイツでナチスが台頭した歴史に触れながら、「日本国憲法では、民主政治を徹底し、国民の権利を十分に守るために緊急事態条項が設けられなかった」「私たち国民は、権力を『憲法』で縛っています。その縛りを解いてしまったら、自由が制限され、言いたいことも言えない世の中になるかもしれません」としています。
25日夕、天神祭の客らが行き交う南森町で行われた宣伝には、山口会長はじめ20人以上が参加。弁護士会オリジナルのウエットティッシュやうちわとともに、「緊急事態条項について分かりやすくまとめました」と言いながらパンフレットを配布したところ、40分足らずで持って行った1千枚がすべてなくなりました。
戦争しない日本を変えるな
受け取ったスイス人男性は、「中国などがプレッシャーをかけてきて、危険な動きもあるが、だからこそ日本は世界に対して戦争をしないという態度を変えないほうがいい」と述べ、緊急事態条項を加えようとしていることについて、「憲法はその時の首相によって簡単に変えられるべきではない。特に好戦的な首相にそれをさせてはいけない」と話していました。
山口会長は、「私たちは安保法の問題では憲法違反だと反対してきましたが、緊急事態条項は外から憲法を変えようというというもので、大変危険。絶対に止めなければならない。このパンフレットを通してこの問題について、たくさんの人に考えてもらいたい」と話しています。
緊急事態条項
緊急事態条項は、他国からの軍事攻撃や大災害の際、国が人権などの憲法秩序を一時的に停止して非常措置を取る権限を定めたもの。自民党が2012年に発表した改憲草案にも盛り込まれ、自衛隊を「国防軍」にする案ととともに、「緊急事態」の章を新たに起こし、「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態」(第98条)と規定。内閣が法律と同じ効力をもつ政令(緊急政令)を制定できるなどの内容です。
山口大阪弁護士会会長の声明
大阪弁護士会・山口会長の反対声明は、緊急事態条項について、「行政に立法権を付与するもので国民主権・議会制民主主義・権力分立という憲法秩序が停止される」と指摘。東日本大震災の被災自治体に対する日弁連アンケートでも、災害対策の第一義的な権限は市町村主導とすべきであること、緊急事態条項のない現憲法が災害対策に障害になったことはないとの結果が示されていると述べています。
さらに、ドイツのワイマール憲法下で独裁政権を許した例や、大日本帝国憲法の緊急勅令など、緊急事態条項は、「国家権力を担う者により濫用されてきた歴史がある。日本国憲法がこのような歴史を踏まえ、敢えて緊急事態条項を設けなった趣旨を今一度想起すべきである」と述べた上で、同条項を創設することについて、「災害対策として必要ないばかりかむしろ有害であり、立憲主義の根幹を変容させ、その濫用による国民の自由や権利を不当に奪う危険性に歯止めが効かなくなる」と強く反対しています。
(大阪民主新報、2016年7月31日付より)