おおさかナウ

2016年05月01日

公営でますます役割発揮を
共産党・山中市議が市民集会で報告

 

 市民集会で日本共産党大阪市議団の山中智子幹事長(交通水道委員)が地下鉄・バスの民営化の問題点や議会の状況などについて報告しました。大要を紹介します。

市民に配慮なく突き進む市長ら

報告する山中議員

報告する山中議員

 大阪市営地下鉄とバスは、民間の鉄道のようにもうけのためにあるのではなく、まちづくりと市民の福祉増進のために、税金と利用料金で営々として築いてきた、市民の大切な財産です。ところが先の予算議会でも、吉村市長や交通局の答弁には、「地下鉄はもうかればいい」「独立採算でできないバスは破綻している」という姿勢が貫かれていました。市民のことや公の役割、高齢者や障害者に何の配慮もなく、民営化に突き進んでいます。

 熊本地震で大きな被害が出ていますが、大阪でも30年以内に7〜8割の確率で南海トラフ巨大地震が起きるとされています。もうけにつながらない地震・津波対策や可動式ホーム柵の設置などの安全対策は、公営でなければできません。

 今里筋線延伸など条例路線の建設は長年の懸案ですが、民営化では「大阪市の考え方を最大限に尊重する」というあいまいなもので、「やらない」と宣言しているようなものです。

バス守るための支援を打ち切る

 市民の身近な足を守るためには「地下鉄とバスは一体のものである」という精神が必要です。交通局の長い歴史の中で、かつては一般会計からお金を出してバスを守ってきました。地下鉄が累積赤字を解消し、毎年300億円の黒字を上げる全国に例のない〝超優良企業〟になってからは、「アクションプラン」(2010年)で地下鉄から毎年30億円ずつ支援すると決めました。
 交通局の『百年史』には、地下鉄からバスに出資する理由として2つの理由を挙げています。第1はバスの「ドル箱路線」に地下鉄が開通したためにバスの乗客が減少した、その営業補償という側面。第2は、バスは地下鉄に乗客を運ぶ補完機能、地下鉄を育てるものだという観点です。

 ところが11年に橋下前市長が就任すると、何の理由も示さずに「地下鉄からバスへの支援なんてあり得ない」と支援を打ち切り、バスの運営は困難に陥りました。橋下前市長や吉村市長らは「地下鉄からバスへの支援は、地下鉄の経営責任が問われる」とまで言い放ってきました。

バラ色に描くがまやかしだらけ

 その一方で民営化をバラ色に描いています。例えば「経営体質の強化で効率的な事業経営による収支改善」という点です。民営化基本方針では大阪市が100%出資する地下鉄新会社をつくり、その子会社がバスを運営します。これによって大阪市に固定資産税52億円、株式配当38億円が入り、「税金をもらう交通局から、税金を払う会社になる」と言うのですが、これはまやかしです。固定資産税が一般会計に入ると、国はそれを理由に地方交付税を減らすので、市財政はそれほど助かるわけではありません。配当もどうなるかわからないものです。

 先ほども述べたように、大阪市営地下鉄は〝超優良企業〟。地方公営企業法は、出資した自治体に利益に見合った納付をすると定めています。これは半ば義務的な規定です。大阪市は14年度末で3469億円を出資しており、仮にその2%でも毎年69億円で、これが一般会計に入るのです。「公営のまま、いますぐにでもやるべき」と追及しても、交通局は「やります」とは絶対に言いません。「一般会計に貢献する」というのは民営化を認めさせる方便に過ぎません。

完全民営化では敬老パス不可能

 さらに民営化すると交通局の全職員に退職金を払います。当初は950億円との説明でしたが、「自己都合」ではなく「会社都合」による退職金なので、実際は47%増の1200億円。民営化したとたんに経営が苦しくなる恐れもあります。
 「スピーディーなサービス改善でお客様満足度の向上」で挙げるトイレの美装化や運賃値下げも、公営でやっていることばかりです。

 逆に敬老パスは、大阪市100%出資の段階ではいままで通りできますが、吉村市長や維新の会が目指す「完全民営化」になれば、「維持はできない」と福祉局は話しています。「多様な事業展開で沿線・地域の活性化への貢献」は、ホテルや不動産事業などに手を出すというもので、「やるべきではない」と議会で批判しても、交通局は何も答えられません。

 その挙句に「国鉄も民営化して成功している」などと繰り返しています。福知山線の脱線事故(05年)はもうけを優先する中で起きたものであり、「国鉄は成功」などと言ってはいけないことです。吉村市長や交通局は「公営であれ民営であれ、安全安心はすべてに優先する」と言いますが、実際には二の次、三の次になることは明らかです。

民営化の動きは緊迫した局面に

 橋下前市長は公営としての地下鉄・バスを廃止する条例案を2回提案し、いずれも維新以外の反対で否決。「市長への白紙委任になる」と批判した自民党が、民営化に際しての基本方針案を議会の議決事項とするよう求め、これを当局が受け入れました。
 吉村市長は「地下鉄民営化基本方針案」を提案しましたが、「安全安心を第一にする」などの抽象的な言葉が並んでいるだけで、継続審査となりました(日本共産党は反対)。

 「市バス民営化基本方針案」は、民営化後「概ね5年程度は現在の路線を維持」だったのを、公明党の意見を取り入れて「少なくとも10年」に修正し、維新と公明の賛成多数で可決しました。吉村市長は公明党の賛成を取り付けるために、政局を利用して微修正で懐柔しましたが、こんな党利党略は許せません。
 基本方針と一体の「市バス経営健全化計画」も、維新、公明、旧民主系のみらいの賛成で可決されましたが、土地信託事業「オスカードリーム」の失敗のつけをバス事業に押し付け、経営破綻に追い込む道理のないものです。

 地下鉄・バスの廃止条例案の可決には、市議会(86人)の3分の2(58人)の賛成が必要です。維新37人、公明19人では2人足りません。みらい(2人)は1人がこのほど自民会派に移り、自民は20人。自民には民営化に反対の議員も、賛成の議員もいて、会派としての態度は流動的です。残るみらいの1人が自民党と一緒に民営化に賛成すれば、維新と合わせて3分の2になるなど、議会の力関係は拮抗(きっこう)し、緊迫した局面が続いています。

 吉村市長は口を開けば、「多くの市民は民営化に賛成している」と言いますが、それは交通局の一方的なアンケート調査や世論調査によるもの。これを覆すのは市民の声と運動です。公営のままで地下鉄・バスの役割をますます発揮させるため、日本共産党議員団も皆さんと力を合わせて、民営化を阻むために全力を尽くします。

(大阪民主新報、2016年5月1、8日付合併号より)

 

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