おおさかナウ

2016年04月10日

大阪から問う 安倍・維新政治
②保育所問題

認可保育所大幅増と保育士処遇改善か
基準引き下げと企業参入で責任放棄か

「緊急性なし」と落とされて

立ち上がる保護者。市の計画に反対し市役所前に立つ保護者たち=3月8日、八尾市内

立ち上がる保護者。市の計画に反対し市役所前に立つ保護者たち=3月8日、八尾市内

 保育所に入れない待機児童問題が深刻です。
 国は昨年4月時点で2万人超の待機児童がいるとしてきました。ところがこの数字には、やむなく育児休業を延長したり、これから仕事を探したい人の子どもなど、保育が必要なのにカウントされていない児童が含まれていませんでした。厚生労働省は世論に押される形で、これらカウントされていなかった待機児が6万人に上ることが発覚しました。

 大阪でも待機児童は、昨年10月時点で3349人を数えました。認可保育所の大幅増と保育士の処遇改善が急務です。
 長男(10)と次男(6)、長女(0)を育てる森佳子さん(仮名・35)=大阪市住吉区在住=は、次男が生まれて3カ月後に夫が働く電気工事会社が廃業。出産前、森さんは短期のパートで働いていましたが、産休が取れずに退職。働こうとしていましたが、保育所に申し込んでも「緊急性がない」とされ、落とされました。
 次男は年度途中に、ようやく隣接する阿倍野区の保育園へ入所できました。その後、長女を出産する際には、少しでも選考に有利になるよう工夫しました。しかし入所できたのは次男と別の保育所。送り迎えにそれぞれ1時間ずつかける日々が続きました。この春からようやく同じ保育園へ通うことが決まって、胸をなでおろします。

東大に入るよりむつかしい

 保護者たちがこうした事態に立ち上がっています。吹田では、この春に約1千人の児童が保育所入所選考から漏れました。保護者がインターネットを通じて市役所に集まり、後藤圭二市長に直接対応を求めました。
 国は、幼稚園で保育を必要とする子どもたちを受け入れようと、認定こども園への移行を促進しています。大阪府も、認定こども園へ移行する施設と、私立幼稚園として存続する施設とに、補助の差を設けるよう制度を改定し、移行を促進しています。

 府議会では「子育て支援制度推進の理念そのものを破壊する」などと格差を解消する予算修正案が、2014年3月17日の本会議でいったん可決しましたが、松井一郎知事は再議権を行使してまで廃案にしました。

 八尾市(田中誠太市長)は公立幼稚園19施設と公立保育所7施設を全廃し、認定こども園5施設を整備する計画です。公立施設の定員は、16年度の在園児数1890人から約800人減ります。
 保護者らは計画中止を求め、市長宛ての署名約4万4千人分、議会への請願署名1万人分以上を提出しています。週末ごとに駅頭などに立ち、夕方以降は子守を妻に託した父親が、街へ署名集めに繰り出しました。
 議会で関連予算が成立した後も、保護者たちは諦めず、署名活動を続けています。
 同市で長女(2)と次女(0)を育てる吉岡里美さん(仮名・30)は、長女の保育所入所の際、第1〜3希望まで公立保育所を書きましたが、公立の定員はわずか3人。結局、第4希望の自宅から遠い民間保育園へ入所することになりました。早生まれの子が公立保育所に入るのは、「東大に入るよりむつかしい」といいます。
 次女も公立を希望しましたが、この春から別の民間保育園へ入所が決まりました。方向も別々で、それぞれ送り迎えに約50分かかります。
 吉岡さんは、「保育が始まる7時に預け、2人目を預け終えると9時前。就業開始時間に間に合うだろうか」と不安を語り、「子育ては1人ではできない。親や友人、外出先では知らない人にまで助けてもらうことがある。幼稚園や保育所もそのひとつで、なくすなんて『この市で子育てするな』と言われているよう」と訴えます。

他業種と比べ10万円も低く

 待機児童解消のために安倍内閣が打ち出した緊急対策は、保育を手厚くしている自治体に対し、国の低い基準に合わせてより多くの子どもを受け入れるよう要請し、小規模保育の定員を増やすなどが柱です。
 全国では2004年に1万2358園あった公立の認可保育所は、14年には9791園になっています。約2500カ所もの減少です。大阪では04年の489園から、14年には公設の認定こども園や認可外施設を含めても387施設にまで減っています。小泉内閣が公立保育所への補助を廃止して一般財源化したことが、減少の大きな原因です。

 保育士の給与が低いことが、待機児童を生み出す一因になっています。保育士の平均給与は19万9920円で、他の職種と比べ月約10万円も低くなっています。男性保育士が結婚を機に離職するなど、保育士として働いていない有資格者は、全国で80万人弱いるとされます。
 保育士の給与水準は国が決めます。しかし安倍内閣の緊急対策には、保育士の処遇改善はありません。日本共産党の追及にも、先送りする態度に終始しています。
 それどころか待機児童解消の大きな柱として、公費を投入する企業主導型保育事業を創設。市町村が関与しない無認可施設で、施設基準も既存の事業所内保育より低いもので、保育の規制に大穴をあけるものです。

 日本共産党は野党と共同で、保育士の給与を5万円引き上げる法案を提出。4日発表した保育所待機児緊急提言では、①30万人分(約3千カ所)の認可保育所を緊急に建設する②賃上げと保育士配置基準の引き上げを行うことを提案しています。

(大阪民主新報、2016年4月10日付より)

 

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