摂津市民ら公害調停へ
ダイキンPFAS汚染
排出企業は責任果たせ
空調大手のダイキン工業淀川製作所がある摂津市とその周辺で、発がん性が指摘されているPFAS(有機フッ素化合物の総称)の深刻な汚染が広がっている問題で、地元の摂津市民らが、ダイキン工業に対する公害調停を大阪府公害審査会に申請します。PFAS汚染について、排出企業であるダイキン工業と公式に話し合う場をつくるもので、年内に1千人規模での申請を目指しています。
資料開示・健康調査・被害補償を
排出企業への調停は全国初
全国各地でPFAS汚染が問題になっている中、汚染源となってきた大企業への公害調停は全国初めて。ダイキン工業淀川製作所は1960年代後半からPFOA(PFASの一種)を使用し、82年からは製造も始めました。
2012年に製造を中止しましたが、大阪府の調査(ことし7月)で淀川製作所に近い一津屋(ひとつや)地域の井戸から、国の指針値(1㍑当たり50㌨㌘、ナノは10億分の1)の700倍という極めて高い濃度のPFOAが検出されるなど、深刻な汚染が続いています。
一津屋地域の住民でつくる「公害問題を考える会」の要請で、「大阪PFAS汚染と健康を考える会」が6月、同地域に住む20~80代の62人を対象に血液検査を実施。健康被害の可能性があると米国科学アカデミーが定めた基準(血液1㍉㍑当たり20㌨㌘)を超えたのは、41人(66・1%)に上ることが判明しています。
公害調停は、訴訟(民事調停)とは異なり、公害による汚染対策や被害補償などについて、当事者間の協議・合意に基づいて柔軟な解決を図るもの。弁護士や学者などの専門家3人からなる調停委員会が仲介します。
今回の調停では、淀川製作所が製造・使用・排出してきたPFOAについて①同社が公表していない環境調査など一切の資料開示②継続的な環境調査と健康調査③住民参加の協議会による汚染対策・被害者補償の枠組みづくり――を求めます。
調停通じて新たなルールを
「ダイキンPFAS公害調停をすすめる会(準備会)」は18日、大阪市北区内で記者会見を開き、公害調停弁護団の池田直樹団長が報告。淀川製作所の敷地内外で地下水を中心に高濃度の汚染が残存・拡散し、人体汚染と長期的な健康影響の恐れがあると述べました。
ダイキン工業は450億円を投じて、淀川製作所内に限定して遮水壁の設置や地下水浄化対策を講じていますが、場外の調査や対策は放置されていると強調。「企業秘密」として、さまざまな情報を開示せず、住民に不安と不信が広がっていると語りました。
池田氏は、PFAS問題では個別の被害が見えにくく、情報開示と追加調査は必要だと指摘。国内のPFAS規制は水道水(来年4月から、水1㍑当たり50㌨㌘)だけで、土壌や地下水の基準はないとし、「黙っていては無視される。対策・規制・情報の〝3つの壁〟を打ち破り、住民参加の新しいルールをつくりたい」と話しました。
市民に堂々と向かい合って
記者会見には、申請呼び掛け人の和田壮平(摂津市一津屋在住)、清水信行(同)、遠山明文(大阪市東淀川区・瑞光寺住職)と、「大阪PFAS汚染と健康を考える会」の長瀬文雄事務局長も出席しました。
和田氏は「私は淀川製作所の城下町で生まれ育った。ダイキン工業には、住民の声を聞こうとする態度が見受けられない。このような暴挙を許すことができない。調停を申し立てた暁には、市民に正々堂々と向かい合ってほしい」と訴えました。
淀川製作所で長年勤務した清水氏は、「ダイキンは2000年前後にはPFOAが有害物質であると知りながら、近隣住民にも従業員にも知らせなかった。調停では、ダイキンがこのことをどう認識していたのか追及してほしい」と話しました。
遠山住職は、PFASで地下水が汚染され、境内にあるちょうず舎の水が飲めなくなったことに触れ、「世界に羽ばたいているダイキン工業は、地域で起こした不祥事を払拭して、次の一歩を踏み出してほしい」と語りました。
1千人の申請団実現へ
12月に「会」の結成総会
公害調停を申請できるのは、ダイキン工業淀川製作所からのPFAS汚染による影響を受けた恐れがあり、または今後受ける恐れがあると考える人で、年齢・性別・国籍は問いません。
具体的には摂津市とその近隣市町村に居住、通勤、通学している人や、過去にそのような状況にあった人が対象です。参加費は1人2千円(家族で申請人になる場合は1世帯当たり2千円)です。
1千人規模の申請人団となる「ダイキンPFAS公害調停をすすめる会」の結成総会は12月13日(土)午後2時から、摂津市立いきいきプラザ(阪急摂津市駅下車)で開かれます。
「すすめる会(準備会)」への問い合わせは06・6268・3970(代)大阪PFAS汚染と健康を考える会気付。
(大阪民主新報、2025年11月30日号より)

