大阪・関西万博は閉幕したが…
夢洲開催 目的はカジノ誘致
インフラ整備に巨額公費
2025年大阪・関西万博が13日、閉幕しました。日本国際博覧会協会(万博協会)は、約2500万人が来場し、運営費が最大280億円の黒字となる見通しなどから、「成功の必要条件を満たせた」「国際イベントをやり切ったことは、人々の記憶として残り続ける」(石毛直道事務総長)と評価。しかし、忘れてはならないことは、夢洲で万博が開かれたのは、カジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致が目的だったことです。
■立地制約あった
「夢洲という立地制約があった。アクセスも限られている」――13日の記者会見で万博協会の十倉雅和会長(日本経団連会長)は、反省点を聞かれて、そう語りました。
万博会場となった夢洲は、ごみの最終処分場。しゅんせつ土砂や産業廃棄物、焼却灰などが埋め立てられ、土壌には猛毒のPCBなど有害物質が含まれています。夢洲ではコンテナターミナルが稼働していますが、大阪メトロ中央線が延伸されるまで、アクセスは夢咲トンネルと夢舞大橋の2つに限られていました。
そんな夢洲を、なぜ万博会場に決めたのか。当初、夢洲は府の候補地に含まれていませんでした。2016年6月、当時の松井一郎知事が、夢洲案を提示。府は同年10月に夢洲を開催地とする「万博基本構想」を策定しました。
■狙いあけすけに
万博誘致の旗を振った松井氏は、「読売」(ことし2月12日付)のインタビューで、「ベイエリアの発展は大阪の成長には絶対に必要」と、夢洲を候補地に加えるよう、安倍政権時代に菅義偉官房長官に頼んだといいます。
さらに「万博は半年間の開催だから、それだけでは不十分」「だから(カジノを含む)IRだ。もともとはIRを先に決めて、IRの施設や展示場を使いながら(万博を)やりたかった」と、あけすけに語っています。
松井氏らカジノ推進派の計画では、IRの開業時期や中央線の延伸の完成を、万博開催前の「2024年頃」と想定。しかし20年からのコロナ禍の影響で、IRの開業は「万博前」から先送りされました。
それでも、中央線延伸や夢洲とその周辺のインフラ整備には、「国策」としての万博開催を口実に、巨額の公費が投入されています。国が大阪のIR誘致計画を認定したのは23年4月。万博の会期中も会場の北側でIRの工事が進められてきました。
■カジノの阻止へ
万博協会は7日、運営費が230~280億円の黒字となる見通しを発表しましたが、警備費(約255億円)や途上国出展支援(約240億円)は国費とされており、実際には赤字。そもそも会場建設費(国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担)は当初の2倍、2350億円に上振れしています。
日本共産党大阪府委員会は14日発表した声明「大阪・関西万博の閉幕にあたって」で、カジノをてこにしたこれ以上の夢洲開発を、きっぱり中止するよう要求。「夢洲でのカジノ建設を阻止するために奮闘する決意です」と述べています。
大阪・関西万博の運営費が黒字になったとされていることについて、阪南大学教授の桜田照雄さんのコメントを紹介します。
IRの隠れ蓑 「黒字」必須だった
阪南大学教授 桜田照雄さん
建設費考慮せず「黒字」
イベント会場の建設費を考慮しない収支計算は、ビジネスの世界ではありえません。大阪・関西万博が「黒字」でなければならない秘密は、万博という「イベント資本主義」の仕組みにあります。
公的助成を人々が集う〝祭り〟につぎ込み、一部の民間企業が利益を得る。大阪・関西万博はその典型でした。例えば、事業との関連性が乏しければ、通常は経費として認められない万博への支出が、特例で認められました。
イベントへの協賛金も税金から戻される結果、大阪ヘルスケアパビリオンへの10億円の協賛金の〝実質負担額〟は1億円程度となります。めったに 入手できない大規模な個人情報が、この寄付で獲得できました。とはいえ、8390億円の関連インフラ投資の規模に比べれば、こうした厚遇も微々たるものでしょう。
感動で金儲け覆い隠す
〝お祭り〟は人々が集えば〝感動〟を生み出します。生み出された〝感動〟は、薄汚いカネもうけを覆い隠してくれます。大阪・関西万博を開催することを〝根拠〟に、予算化された事業は10兆円を超えています。
とりわけIRの隠れ蓑として、夢洲で開催したことの正当性を主張するには、「黒字」化は絶対の条件だったのです。
国・府・協会の責任は重大
建設費未払い問題
大阪・関西万博の海外パビリオン建設では、被害総額が少なくとも約7億8千万円に上る工事費の未払いが発生しました。
短い工期、夢洲という工事環境の悪さにも耐え、「奴隷のように」(被害を受けた業者)働いてパビリオンを完成させた業者を待っていたのは、国家事業での建設費不払いでした。相談を受けた国、府、協会は「契約当事者間の問題」と融資のための金融機関を紹介するぐらいで、未払いを理由に融資を受けられないと窮状を訴えても、対応は変わりませんでした。
建設業者らは元請けや上位下請けを相手に提訴。週1回の万博協会の会見では、毎回この問題で質問が出され、フランスのリベラシオン紙は、4館の未払いを訴えられているフランス資本の元請けを、国際ニューストップで報道。閉幕1週間前には衆院経産委員会が大阪入りし、被害者から聞き取りをしました。被害業者たちは「閉幕のニュースを見て改めて怒りがわいた」と言います。
海外パビリオン建設業者が決まらない中、「オールジャパン」で業界に協力を要請した国、府、万博協会の責任は重大です。万博が終わったからと不問にすることは、断じて許されません。
(大阪民主新報、2025年10月19日号より)
