おおさかナウ

2025年10月11日

「副首都」は生き残り戦略
維新政治で大阪経済低迷
よくする会 市政検証学習会
中山徹奈良女子大名誉教授が講演

 大阪市をよくする会が1日、秋の市政検証学習会を大阪市北区内の会場とオンライン参加の併用で開き、奈良女子大学の中山徹名誉教授が、維新が狙う「副首都構想」の問題点や大型開発との関係、市民運動の課題などについて講演しました。

大阪経済の低迷 得票が減る中で

大阪市をよくする会の市政検証集会=1日、大阪市北区内

大阪市をよくする会の市政検証集会=1日、大阪市北区内

 講演で中山氏は、維新は2010年以降、経済成長の戦略を展開してきたが、インバウンドの急増を除き、顕著な成果を出しておらず、経済の低迷から脱していないと指摘。さらに全国、大阪で維新の得票数が大きく減り出している中、維新が生き残りをかけて出しているのが「副首都構想」だと述べました。
 その核心は、「経済成長のけん引」であり、首都機能のバックアップは、政府を大阪経済の活性化に引きずり込むための理由付けと、「大阪は副首都で首都・東京に次ぐ都市」だという大阪府民向けのイメージ戦略だと語りました。
 中山氏は、自民党新総裁の選出後、自公維の連立が選択肢として動き出す場合、維新が取引材料にするのが「副首都構想」だと指摘。同時に、大阪の経済成長のために国家予算を投入し、特別の規制緩和などを進めることに、国民的合意が得られるかどうかなど、大きな問題をはらんでいるとしました。

府民の懐を温かくすることこそ

 中山氏は、維新は北大阪急行の延伸、夢洲への大阪メトロ中央線の延伸、なにわ筋線、高速道路淀川左岸線などのインフラ整備を進めてきたが、重点は大阪市の臨海部と中心部だと指摘。さらに促進すれば、府内の地域間格差はますます拡大すると警告しました。
 大阪経済が低迷している最大の理由は、府民の所得が低下していることにあると強調。「副首都構想は、維新が進めてきた経済政策を、国の支援でさらに進めようとするもの。大阪の経済活性化にとってマイナスだ」と断じました。
 中山氏は非正規雇用の拡大、実質賃金と個人消費の低迷が長期不況の原因であり、これらの解決を自治体も展望すべきだと提起。「副首都は維新の生き残り戦略。『大阪にとっていいのではないか』などと惑わされず、大阪から反対の声を上げよう」と呼び掛けました。

「副首都構想」の法案骨子

 日本維新の会は、7月の参院選公約の4つの柱の一つに「副首都から起動する経済成長」を掲げ、9月末には「副首都機能」の整備に関する法案の骨子案を発表しました。「副首都機能」とは、東京一極集中を是正し、東京圏と並んで日本経済の中心として成長をけん引するとともに、災害時に首都機能を代替する機能だとしています。
 道府県議会の議決後、申し出を受けた首相が「副首都機能」を整備する道府県を指定。その際、次の3つの要件をすべて満たしていることが必要だとしています。
 ①大都市法に基づいて「特別区」が設置されている
 ②都市機能の集積が高く、経済活動が活発に行われている
 ③東京圏が被災した場合に、同じ災害で著しい被害を受ける恐れが少ないと見込まれる。
 さらに、国から「副首都」となる道府県への税源移譲、経済基盤の強化や首都機能の移転に必要な措置、国会の承認を経ての道府県の名称の変更(府から都へ)などを盛り込んでいます。
 講演で中山氏は、大阪市を廃止して「特別区」を設置する、いわゆる「大阪都」構想が、「副首都」の要件を満たす行政体制として位置づけられていると指摘。2015年と20年の住民投票で「都」構想は否決されたが、同じ状況では3回目も負ける可能性がある中、維新が「住民投票で勝つための手段」としているのが、「副首都構想」だと語りました。

(大阪民主新報、2025年10月12日号より)

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