おおさかナウ

2025年08月30日

新町長と一緒に産廃ストップへ
忠岡町 考える会が運動強化

 忠岡町の巨大産廃焼却施設誘致を考える会(考える会)が24日、同町内で総会と学習交流会を開きました。産廃誘致問題は、ことし5月の町長選でも大きな争点となり、誘致計画の白紙撤回を公約した是枝綾子氏(元日本共産党町議)が初当選。産廃誘致に反対して粘り強く活動してきた考える会は、新町長と一緒に、誘致計画の凍結を求める運動を広げようとしています。

維新町長が推進

仮称・地域エネルギーセンターが誘致されようとしている忠岡町クリーンセンター跡地

仮称・地域エネルギーセンターが誘致されようとしている忠岡町クリーンセンター跡地

 忠岡町が誘致計画を発表したのは、3年前の2022年8月でした。大阪湾に面した新浜にあった、公設民営のごみ処理施設(忠岡町クリーンセンター)は24年3月で廃止。跡地に「仮称・地域エネルギーセンター」(33年稼働予定)を誘致し、1日180㌧の産業廃棄物を忠岡町外から運び込み、町民の一般ごみ1日20㌧と一緒に焼却する計画です。
 当時の町長は、20年に大阪維新の会公認で初当選した杉原健士氏。選挙戦で他の自治体と共同して一般ごみを処理する広域化を掲げていました。ところが、この公約を投げ捨て、公共と民間事業者が連携してごみ処理を行う「公民連携協定方式」を採用しました。
 環境破壊や健康被害を心配する町民は、計画発表直後から学習会を開き、町長への要望書の提出、説明会の開催などを求めてきましたが、町は事業者の選定でプロポーザル方式(企画競争入札)を実施しました。

「立ち止まれ」と

 応募したのは、産廃業者の大栄環境などの企業グループ「忠岡エコサービス」だけ。これを受けて23年1月の臨時町議会では、事業者側との「基本協定書」の承認手続きを、日本共産党以外の賛成多数で強行しました。
 同月には、考える会の準備会が結成。誘致計画は一度立ち止まり、環境汚染や健康被害について住民と話し合うことを求める請願署名に取り組みました。
 同年12月には1万筆(町内は4500筆)を町議会に提出しましたが、まともな議論もなく否決されました。

中止を掲げ当選

 任期満了に伴う忠岡町長選(昨年10月20日)で、杉原氏が再選されました。日本共産党も参加する「明るい住民本位の忠岡町政をつくる会」が推薦した是枝氏は、計画中止を訴え。告示1週間前の立候補でしたが、得票率36・4%を獲得し、大善戦しました。
 杉原氏はことし3月、町発注工事を巡る官製談合防止法違反(入札妨害)などの疑いで書類送検され、辞職(維新は杉原氏を除名)。これに伴う町長選(5月18日投開票)に再び挑戦した是枝氏は、保守系の2候補との激戦を制して初当選しました。
 初登庁した是枝町長は、産廃誘致計画について「中止の立場を貫き、議会など各方面の声を聞き、合意形成を図りながら、中止に向かって手続きを踏んでいきたい」と表明しました。

広域化を目指し

 現在、町の一般ごみは、忠岡エコサービスが三重県内の施設に運んで処理。これは誘致計画と一体のものです。誘致計画を中止するには、町のごみの処理方法を先に確定する必要があります。是枝町長は6月町議会で、町のごみの広域処理を目指すため、「住民の声を聞き、議会の理解が得られるよう、担当部局と取り組みを進める」と述べました。
 一方、杉原前町長は昨年の町長選直前の10月1日、忠岡エコサービスの実施協定を町民に知らせないまま、締結。これを受けて忠岡エコサービスが環境影響調査を実施しようとしています。第1段階の手続きは、調査を行うための項目や方法、判定基準などを記した「方法書」を大阪府に提出することです。

環境アセス
せますぎる調査範囲
何を焼却するか不明

問題だらけの「方法書」案

 24日の総会で基調報告した、考える会の是枝一成事務局長は、実施協定の締結中止や懇談を申し入れたが、杉原前町長は反対者の意見を聞かない姿勢に終始したと指摘。6月町議会で説明された「方法書」案の問題点を、明らかにしました。
――影響調査の範囲は、予定地の新浜から半径3㌔㍍で、町民全体の影響が分からない。町域全体をカバーする調査範囲(半径約6㌔㍍)が必要
――影響調査は、面積的には岸和田、泉大津両市が圧倒的に広い。影響が大きいにもかかわらず、これまで一切説明も合意もないまま進められてきた。忠岡町、近隣市の住民の合意なしに、忠岡町がこの事業を進めることはできない
――猛毒のダイオキシン類は、排出基準の最大値まで排出する想定で、現在より環境が悪化するのは明白。忠岡町はことし1月に、「今の段階では健康被害が出ないとは断言できない」と回答
――何を焼却するのかがいまだに不明確な部分がある。町が環境影響調査の前提となる焼却物の全容を把握しておらず、環境への影響の不安がぬぐえない
 是枝事務局長は、8月19日に「方法書」の提出を中止するよう、忠岡町と忠岡エコサービスに求める要望書を提出したことを報告。現在取り組んでいる誘致計画の凍結を求める請願署名を軸に、住民との対話や宣伝活動を大いに広げようと呼び掛けました。

学習交流会
忠岡のまちづくりは町民が 藤永さん
破棄物の排出抑制こそ責務 大井さん

 総会には是枝綾子町長も駆け付けてあいさつ。「力を合わせて産廃をストップさせましょう」と話しました。

「何でも焼却」は時代遅れの考え

巨大産廃焼却施設の誘致問題で、考える会が開いた学習交流会=24日、忠岡町内

巨大産廃焼却施設の誘致問題で、考える会が開いた学習交流会=24日、忠岡町内

 学習交流会では、藤永延代・おおさか市民ネットワーク代表と、静岡県掛川市の大井正前市議(日本共産党)が報告しました。
 藤永氏は、世界は「再使用・再利用・再資源化時代」に移っており、「何でも焼却という考えは時代遅れだ」と力説。忠岡町の一般ごみは1日20㌧なのに、新施設で産廃と一緒に1日200㌧も焼却するのは、「事業者が安定した収入を確保したいからに過ぎない」と断じました。
 事業者側が掲げる「廃棄物処理施設を核とした地域循環共生圏の構築」に言及。「産廃処理施設が地域社会の核になるものではない。忠岡町のまちづくりは、町民が考えること。産廃事業者の目線で、勝手に決めてはならない」と話しました。

廃棄物処理法の本質は排出抑制

あいさつする是枝綾子町長

あいさつする是枝綾子町長

 大井氏は、大型ごみ焼却場の誘致計画を撤回させた運動を報告しました。2021年の当初計画は、掛川市と、同市と隣接する菊川市の一般ごみ処理とともに、産業廃棄物も受け入れるもの。市は財政出動せずに済み、事業者は産廃焼却で資金回収するという「民設民営」の計画でした。
 日本共産党の掛川、菊川の両市委員会、施設周辺の住民自治会や市民団体からの疑問や懸念を受け、建設計画の見直しを行う検討委員会が設置されました。検討委員会や市議会の傍聴など市民の運動が拡大した結果、市は、産廃を受け入れず、事業は公設で運営を委託するなど検討委員会の提言を受け入れました。
 大井氏は「廃棄物処理法の目的は、排出抑制であり、それは国や自治体、国民の責務。この本質を理解することが重要」と強調。「住民の生の声を集めて最大限に尊重することや、行政と共に学び、考え、成長することが大切」と話しました。
 「和泉地域の美しい自然を未来の世代に伝える会」の岡勝仁・副代表が、大栄環境が和泉市で建設する産廃焼却施設について報告しました。

(大阪民主新報、2025年8月31日号より)

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