おおさかナウ

2025年08月30日

万博建設費未払い
国・府・万博協会の責任は明白
問題解決と被害者救済を
「追及全国集会」に300人

 大阪・関西万博の海外パビリオンの建設費未払い問題で、被害業者の救済へ、国、府、万博協会の責任を問う声が市民や超党派の議員、首長からも上がっています。23日、大阪市浪速区内で行われた「万博工事未払い追及全国集会」には、府内外から300人以上が参加。会場は問題解決を求める熱気に包まれました。

被害業者、市民、超党派議員が問題解決と救済を求めた「万博未払い追及全国集会」=23日、大阪市浪速区内

被害業者、市民、超党派議員が問題解決と救済を求めた「万博未払い追及全国集会」=23日、大阪市浪速区内

協力したのに未払い、切り捨て

 集会では、被害業者を代表して2人の業者が登壇し、訴えました。
 アンゴラ館建設の下請け業者で、被害業者らでつくる「被害者の会」代表のAさんは、国や府、万博協会が未払い問題を「民民の問題」だとしていることについて、「国家プロジェクトでこんなに未払いが起きたことがありますか」と問い、「業者が足りないので協力してほしいと要請したにもかかわらず、未払いが起きたら、もう関係ないと切り捨てられている。約4カ月未払いで自分も仲間たちも生活できない。過酷な現場で一生懸命やってきて、こんなに追い詰められるのは理不尽だと思い、活動している。一日も早い救済を」と述べました。

社会的国際的に大きな問題

 マルタ館の工事を一次下請けで入ったBさんは、「国を挙げてのプロジェクトで、これだけの未払いが発生するというのは、あってはならないこと。社会的にも国際的にも大きな問題として捉えてほしい。会社がいつ倒産するか分からない日々で、売れるものはすべて売り、最後に残っているものは自分の命しかない。一刻も早い解決を」と訴えました。

政治判断で被害業者助かる

 未払い問題を追及してきたフリージャーナリストの西谷文和さんは、自身が会見で、吉村知事に被害業者の救済を求めたことに対し、「判断するのは裁判所」と答えたことを紹介。「未払いは助けなければならないという政治判断をすれば、被害業者は助かる」と述べました。
 参加者からの発言では、「万博遠足をやめてほしいと活動した。大阪府・市の不誠実な対応に翻弄された。被害業者に連帯する。若い人にもこの問題を発信してほしい」「被害者を支えていくことで、みんなの気持ちが1つになることが大事」「建設業界のことを知らないので他人事になってしまうが、放置すると日本全体の多くの人が踏みつけられてしまう」「連鎖倒産という形にもなる未払い問題が、社会問題、経済問題としてあってはならないという方向で、方策を立てていかなければならない」などの発言や、万博で働く労働者の雇用を巡る問題、未払い被害者支援の活動の報告もありました。

救済の立場で全力を尽くす

 集会には日本共産党、立憲民主党、れいわ新選組、社民党、無所属の国会議員や地方議員、山本景交野市長らも参加。共産党は堀川朗子衆院議員と宮本岳志前衆院議員が参加し、辰巳孝太郎衆院議員がメッセージを寄せました。
 堀川議員は、被害業者と共に政府交渉を行い、未払いの元請け業者に対し、建設業を認可した行政が指導するよう求めてきたこと報告。「未払の問題で中小業者の皆さんが倒産するようなことが絶対にあってはならない。救済の立場で全力を尽くしたい」と述べました。

都合が悪いと「民」持ち出す

 他党の議員からも、「立場を超えて、皆さんと共に頑張っていきたい」「地方議員でもやれることがある」などの声が相次ぎ、山本交野市長は「都合のいいときだけ国家事業と言い、都合が悪くなったら『民民だ』ということはおかしい」とし、市独自に未払い問題の相談窓口をつくったと報告しました。

オールジャパンの掛け声どこへ

 万博の海外パビリオン建設費未払い問題で、「民民の問題」だとして、問題解決や救済措置に取り組まない国・大阪府・万博協会に責任を問う声が広がっています。
 万博会場の大屋根リングや、リングの外の国内パビリオンは税金で建てられるため、日本の大手ゼネコンなどの施工業者が請け負いました。
 リング内にある海外パビリオンの中で、各国政府が元請け業者を選び、国独自に建設して建設費を払うタイプAのパビリオンは、建設業者がなかなか決まりませんでした。

未払いを想定し万博保険も創設

 こうした中で大阪市は、万博での仮設建築物許可を担当する職員を増員し、建築確認のための審査期間を短縮化。海外の元請けによる建設費未払いを想定し、万博貿易保険も創設されました。
 万博開幕を1年8カ月後に控えた2023年8月3日、吉村知事は横山大阪市長との連名で、タイプA参加国のパビリオンを建設する中小建設事業者や設備事業者を確保するために、建設業界への協力要請文を関係7団体に発出。定例会見でも呼び掛け、関西の知事・市長にも協力要請し、協会や横山市長と共に地元建設業界との懇談の場を設け、海外パビリオンの建設促進への協力を働き掛けました。

首相が発破をかけていた事案が

 開幕まで600日を切った同年8月31日、首相官邸で行われた「大阪・関西万博に関する関係者会合」には、岸田首相(当時)、関係省庁、吉村知事、横山大阪市長、十倉雅和万博協会会長らが集まり、海外パビリオン建設の状況と課題について意見交換しました。
 この時点でタイプAの建設業者が決まっていた国は、内定も含め50カ国中10カ国余りでした。
 岸田首相は「万博の準備は、まさに胸突き八丁の状況。極めて厳しい状況に置かれていることを直視し、正面から全力で取り組んでいかなければならない」とした上で、この場を設けたのは「危機感を政府、大阪府、大阪市、万博協会、経済界が共有するため」だと強調。「まさにオールジャパン一丸となって」と発破をかけ、「関係省庁を挙げて、参加国政府、建設事業者の意思疎通を強化し、契約締結に向けた取り組みを加速していく必要がある」と迫りました。

はしご降ろしは到底許されない

 出席者からも「施工を期限内にやり遂げる覚悟。省を挙げて、参加国及び建設事業者とマンツーマンのきめ細かな調整や環境整備に取り組んでいきたい」(経産相)、「協会と一緒になり、地元団体にも、地元の中小建設事業者にも、積極的に働きかけをしてまいりたい」(吉村知事)など、決意表明をしました。
 まさに海外パビリオン建設は国家事業であり、国、府、万博協会挙げてのプロジェクトでした。建設事業者に懇願して、未払いが起きたらはしごを降ろすことは、到底許されません。

(大阪民主新報、2025年8月31日号より)

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