みんなの願いを国会へ
清水ただしのいきいきトーク
農業予算増やし食と米作り守れ
守るべき農業、食の安定供給 小野雅之神戸大学名誉教授
清水ただし参院大阪選挙区候補 農業予算拡充 今こそ実現を
日本人の主食である米の供給不足と価格高騰が続く中、日本の食と農業を守るために何が必要なのか……。日本の米需給の現状と流通を巡る課題を研究し続けてきた神戸大学名誉教授の小野雅之さんと、日本共産党の清水ただし参院大阪選挙区候補が対談しました。
清水 初めまして。今日は国民の最大の関心事でもあるお米の現状と課題について、お話を伺えると楽しみにして参りました。
小野 こちらこそ初めまして。実はここ数年は米の研究から遠ざかっていましたが、昨年の夏以降にさまざまな問題が生じましたので、改めて需給や流通のデータを整理しながら、「令和の米騒動」について考えるようになりました。
稲作の努力と苦労に正当評価を
清水 小野先生が米の研究に入られた経過をお聞きしてよろしいでしょうか。
小野 青果物の市場や流通について研究してきたのですが、1990年から15年間、山形大学農学部に勤務したのが縁で、米の研究会に誘われたりするようになりました。
清水 山形県は米どころですものね。
小野 庄内平野の鶴岡市に農学部のキャンパスがあります。ちょうど93年の大凶作が起き、食管法(食糧管理法)から食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)へと切り替わる時期でした。
清水 米にとっては、まさに大激動のタイミングです。
小野 研修会や講演会に呼ばれることも多く、米の研究を本格的に始めることになりました。毎年のように東北をはじめ各地の産地を回る旅暮らしでした(笑)。
清水 「あきたこまち」(秋田)や「ひとめぼれ」(宮城)「つや姫」(山形)など、店頭で必ず目にする人気銘柄ですし、「青天の霹靂」(青森)、「銀河のしずく」(岩手)などの新銘柄もありますね。
小野 米生産者やJA、卸売業者を中心に調査しましたが、天候に左右されがちな米づくりに取り組む人々の努力に触れて、〝人間の労働が正しく評価される社会に〟と常に感じていました。
清水 そこが研究生活の原点なのですね。
小野 はい。2005年に神戸大学に移って、米産地から少し遠くなりましたが、農水省の政策や統計データを分析する研究は続けてきました。
生産減少で需給逼迫し米不足に
清水 では本題ですが、「令和の米騒動」についてどうお考えでしょうか。
小野 米価格上昇の要因を端的に言えば、米の生産量が需要量を下回って、その結果、在庫が減少し、需給が逼迫した。これが「令和の米騒動」の大きな要因といえます。
清水 去年まで5㌔で2千円だった米がどんどん値上がりして、家計の悲鳴が収まりません。
小野 実は、米の需給逼迫は、一昨年の23産米から生じていました。
清水 記録的猛暑の影響で、23年産米の一等米比率が過去最低の約60%に落ち込んだというニュースがありました。
小野 主食用の23年産米生産量が前年比9万㌧減ったのに加え、猛暑の影響で、コシヒカリなどの銘柄米で白濁や未成熟な米粒が増え、家庭に届く「精米」の歩留まりが低下しました。24年春ごろから、米不足の兆候はあったのです。
清水 昨夏の「南海トラフ地震臨時情報」もきっかけに、スーパーの米が消えました。しかし政府は「新米が出れば落ち着く」と繰り返しましたが、店頭価格は上がり続けました。
小野 具体的なデータでも、需給の逼迫は明らかです。23年産の主食米生産が9万㌧減ったのに対し、23年7月から24年6月の需要量が691万㌧から705万㌧へと、14万㌧増加していたのです。
清水 流通の課題はどうでしょうか
小野 流通面では、集荷・契約・販売という米の取り引きの流れを捉えることが大切です。農水省が毎月公表する大規模集荷業者(大部分がJAグループ)の取り扱い数量をみると、昨年8月にスーパーから米が消えた時、すでに追加仕入れに応じられる米はほとんどありませんでした。秋以降には前年に比べて集荷量が減少したにもかかわらず、販売量が増加しました。需給の逼迫に加えて、流通にも逼迫が生じていたのです。
清水 今ちょうど全国で25年産米の田植えが進む時期ですが、「青田買い」どころか田植え前に契約したとの報道も出ています。
小野 以前から3割ほどが播種前に売買契約されています。今年は、流通の逼迫の中で、これまで以上に集荷競争が加熱して、契約が早期化するとともに、買取価格の上昇が生じているようです。
再生産可能な生産費補償を 小野雅之神戸大名誉教授
国の責任で減産から増産に 清水ただし参院大阪選挙区候補
清水 米価格安定に何が必要でしょうか。
小野 まず需給と流通の安定のために、需要見通しにゆとりを持たせることです。
清水 米の収穫量は天候の影響を受けますし、消費ニーズも一定ではないですよね。
小野 現行制度は、農水省が示す需給見通しを踏まえて、生産者と農業者団体が主体的に生産量を決める仕組みです。
実際は、過去の実績に基づいて需要が右下がりに減ると見通して、生産量を需要量とほぼイコールにするような、タイトな需給調整を続けてきました。
清水 それでは不測の事態に対処できませんね。
小野 そうなんです。2019年と2020年に2年連続で、生産が需給を上回って在庫が増えました。それが相対取引価格の低下につながったと言って、政府は需給調整を強め、21年産、22年産を大幅に減産してしまいました。
清水 その結果、ついに23年産米で生産と需要の大きなギャップになり、今の深刻な事態を引き起こしたのですね。
小野 そうです。過去実績を直線的に延長して需要量を推計する現行の方法を見直し、3~5年ほどの幅を持たせた移動平均値を基に需要量を導けば、ゆとりができます。
生産基盤強化へ農政の舵を切る
清水 科学的で正確な需給見通しを持つことが大事ですね。
日本共産党は農業政策で、「国の責任で減産から増産に」と主張しています。小泉農水相が「輸入米拡大」に言及し、吉村洋文府知事も、「アメリカ産米輸入で、日本の農家の競争力が上がる」と発言しています。どう見ればいいでしょうか。
小野 輸入を増やせば競争力が高まるという理屈は、二番煎じどころか、出がらし茶にもなりません。
日本の耕地面積は急速に減り続けています。畦畔(あぜなど)を除いた田の面積は220万㌶(24年)です。このうち水稲作付面積は150万㌶で、主食用米に限ると120万㌶です。
清水 中山間地で稲作経営を続けているのですよね。競争力を高めるため大規模化といっても、限界があると思います。
小野 国内でも100㌶以上の大規模経営体が現れています。北海道や庄内平野など大区画の圃場では、大型機械やドローンを導入して作業効率を高めることができます。大規模農家は輸入米との価格競争に勝てたとしても、中山間地では太刀打ちできません。
清水 農地集約化が困難な中小農家の離農が続けば、どうなるでしょうか。
小野 現在の水稲作付面積150万㌶の確保は厳しくなるでしょう。仮に主食用が50万㌶減れば、250万トン減産する主食米をどうするのか。アメリカからの輸入でいいのかが問われると思います。
清水 米不足と価格高騰は自然現象ではないですよね。米の生産基盤の強化へ舵を切り替える必要があると思います。
今後の農政はどうあるべきでしょうか。
小野 備蓄米に関して言えば、現行5年の棚上げ期間を4年に短縮し、毎年の買い入れ量を増やすべきです。先に述べたゆとりある需給見通しで過剰米が生じても、備蓄米に組み入れて、5年後に飼料用に回すと、食料自給率向上につながります。
清水 本当に米生産の増加に踏み出すべきですね。45年前は防衛予算より農水省の予算が多かったのに、農水省予算は年々減って、異常突出を続ける軍事費8兆5千億円の4分の1です。
小野 非常事態への備えは否定しませんが、戦争は決して起こしてはなりません。守るべきは国民の暮らしです。毎日欠かせない食の安定供給こそが、国家の責任だと考えます。
清水 本当にその通りだと思います。
豊かな実りを喜び合える社会に
小野 農業従事者の高齢化が進む中で、生産量を増やしていくのは簡単ではありませんが、手をこまねいて見ているときではありません。現行の稲作経営安定対策は、過去収入を基準に当年の収入減少に対して補填するものですが、収入が減少し続けると補填後の収入も減少します。これでは経営が安定しませんので、生産費を基準に、十分な所得を得られるようにすることが必要です。
そして、もし所得が不足した場合は、政府が財政負担して補償することによって、安定して農業を続けることができます。
清水 自民党農政は2018年に、10㌃あたり1万5千円の所得補償を全廃しました。
市場まかせで安売り競争が激化し、生産者米価が60㌔で1万円前後に落ち込み、「米つくって飯くえねぇ」という事態を招きました。若い世代の人たちが、希望を持って農業に飛び込んでいける社会にしなければならないと強く思います。
小野 40年ほど前に兵庫県内のある農村集落で、まるでお城のように石垣を積み上げて、棚田を営んでいるのを見学しました。
私たちの想像を超える時間と労力をかけた崇高な農業の営みを目の当たりにして、驚き感動した記憶があります。
清水 日本人の原風景ですね。私も美しい景観に感動することが多いです。
小野 流通過程の卸業者たちも誇りを持って消費者である私たちの食卓へ美味しい米を届けてくれています。
米は私たちの歴史と文化、そして生命を育んだまさに主食。かけがえのない農業と食文化を守るために、それぞれの立場で頑張ってほしいと思います。
清水 生産者も消費者も、豊かな実りを一緒に喜び合えるような農政にしなければと思います。
物価高で苦しむ国民の暮らしを支え、食卓で安心して「おかわり」といえる社会に戻したい。
必ず国会に駆け上り、国民の食料の安定供給のための予算を増やし、国民の命と安全に責任を持つ政治を実現したいと思います。今日は本当にありがとうございました。
(大阪民主新報、2025年6月15日号より)