住民自治の新たなスタート
住民の声聞き公約実現へ
是枝綾子忠岡町長に聞く
5月18日投開票の忠岡町長選で、日本共産党も参加する「明るい住民本位の忠岡町政をつくる会」が推薦する是枝綾子さん=同党前忠岡町議=が、保守系の2候補との激戦を制して初当選しました。日本共産党史上初めて誕生した女性首長として、全国からも注目されています。「住民の声を聞く町政へ」を訴えて当選した是枝さんに、新しい町政運営の抱負などを聞きました。
知らない人から「おめでとう」と
――投票日から2日後に初登庁され、是枝町政がスタートしました。
是枝 町役場へは自転車で通勤していますが、途中で出会う方から「良かったですね」などの喜びの声がかかり、励ましをいただきます。
駐輪場から役場に入る間にも、知らない方が「おめでとうございます」と。住民の皆さんとお話しできるのは、とてもうれしいです。
選挙中では、昨年10月の町長選に立候補したときよりも、大きな反応がありました。特に、女性や子育て世代の方々です。3人の候補者の中で、子育て支援策をはっきり公約したのは私だけだったので、期待の大きさを実感しています。
選挙戦で掲げた公約実現のため
――選挙戦では大きく3つの公約を掲げて当選されました。
是枝 はい。1つは不正のない町政。前町長が公共工事を巡る官製談合事件で書類送検されたことが、今回の選挙の発端です。失われた町政への信頼を取り戻すために、入札での最低制限価格の事前公表で、官製談合を防止すると公約しました。議会にも説明し、事業者の皆さんへも周知するなど調整しながら、いの一番に進めたいと思います。
2つ目は、巨大産業廃棄物処理施設の誘致計画の中止。忠岡町の一般廃棄物は20トン(1日当たり)ですが、誘致計画の焼却炉は220㌧(同)。猛毒のダイオキシンは、これまでの12倍が出るという試算もあります。このような施設を誘致すること自体、環境行政を放棄していると思います。
ただ、事業者に中止と通告して済むわけではありません。忠岡町のごみ処理をどうするのかという問題と一体だからです。中止の立場を貫き、幅広い住民や各方面の声を聞き、議会で合意形成を図りながら、中止に向けた手続きを踏んでいきたいと思います。
3つ目は物価高騰対策です。小中学校の給食費の無償化と、水道料金の基本料金の全世帯を対象にした減免は、財政見通しも踏まえて、できるだけ早く実現したいと思います。学校給食は、内容や量の充実にも取り組みたいです。
職員の皆さんが能力を発揮して
――初登庁の朝、職員への訓示で「職員の皆さんの能力を発揮してほしい」と呼び掛けられました。
是枝 住民サービスの提供は、職員にしかできません。職員が住民の声や願いを聞きながら政策を作って提案し、予算化していく流れを現場でつくってほしいと願っています。私の公約を実現していく上で、情報や行政のノウハウを持っているのも、職員の皆さんです。
力を発揮してもらうためにも、働きやすい職場づくりが大切。働く意欲をそがれないよう、ハラスメント防止にも力を入れたいと思います。
住民の声で動く町政つくりたい
――選挙中に「住民の声で動く町政をつくりたい」と訴え、タウンミーティング(住民懇談会)の開催も公約されました。
是枝 私が議員に初当選したのは1991年。当時の町長は毎年、各地区で懇談会を開き、多くの住民が参加して、町長に直接要望を出していました。それを実際に見た体験が、私の土台にあります。それ以降、懇談会はあまりなされてこなかっただけに、住民の声を直接聞くことが大事だと実感してきました。
議案や計画も議会だけで議論して決めていては駄目だと感じてきました。住民懇談会には議員も出席すれば住民の声を直接聞けるし、住民も議会の議論に関心が持てます。そういう双方向の住民懇談会をぜひ開きたい。私だけでなく、町の幹部も含め、職員みんなが住民の声を聞くようになれば、素晴らしい忠岡町がつくれると思います。
住民が主人公をモットーにして
――訓示では、「日本共産党は国民の苦難を軽減するために生まれた党。住民が主人公をモットーにしており、町政運営と矛盾せず、むしろ合致している」と強調されました。忠岡町議として9期33年間の経験が裏付けにあるのでは。
是枝 物価高騰で多くの国民が苦しむ中、以前は日本共産党しか主張していなかった消費税減税が今、大きな世論となり、国政の焦点になっています。苦難軽減の立場を貫く党の先駆性が、ここにも示されているのではないでしょうか。
地方自治体でも、生活相談に日々取り組み、議会で取り上げていくという活動を、私も日本共産党の議員として続けてきました。それが政治のあり方だと確信しています。これからは町長として、住民の生活や人権を守り、住民福祉の向上につながる要求や願いは、日本共産党に限らず、幅広くお聞きして実現していきたいと思います。
行政を動かして変えていくのは
――「住民、職員、そして町長の私が力を合わせてつくっていける町政運営に努める」と、訓示で強調されました。
是枝 私自身、子育てしながら議員活動や要求実現に取り組んできましたが、住民本位を掲げる町政が誕生すれば、要求が自動的に実現するわけではありません。
住民自身が要求実現の主体となって運動し、行政を動かして変えていくのが、住民自治の基本です。
いままでとは違い、「住民の声を聞く町政」になりました。だからこそ、住民の皆さんが、要求実現を求めて、さらに運動を広げていただきたいのです。忠岡町は、住民自治の新たなスタートラインに立ったのだと思います。
(大阪民主新報、2025年6月1日号より)