おおさかナウ

2016年01月17日

維新府政の7年で、子どもたちや
府民のくらし、中小企業は深刻に

くらしと営業を守る府政改革こそ必要

――2014年度の大阪府決算の審査を通じて(上)

日本共産党大阪府議会議員団幹事長 朽原 亮

 大阪府の2014年度決算を審査する大阪府議会決算特別委員会が2015年12月10日に閉会しました。審査を通じて、維新府政の7年間で全国や近隣府県と比べても、子どもたちや府民のくらしと営業をめぐって、厳しく困難な状況が広がっていることが明らかになりました。今回の決算特別委員会で取り上げた問題を通じて、真に必要な府政の改革の方向と具体的施策について考えていきたいと思います。

維新の教育行政で大阪の子どもの状況が困難に〜一人ひとりを大切にした教育を

(1)暴力行為は全国最多、不登校も増大

 維新府政の7年間で、小中学校・高校での暴力行為発生件数が増大し、2014年度では全国最多となり、1千人あたりで全国平均の2・7倍となっています。
 不登校の児童生徒数でも、小中学校では、全国的には横ばいか減少傾向にあるにもかかわらず、大阪では増大しており、2007年度の全国18位から2014年度は6位に悪化しています。また、高校に入ると、全国的には中学校と比べて6割程度に減少しているのに、大阪ではほぼ同程度で推移しています(表1参照)。
 高校中退率が全国一高いのが大阪で、全国学力・学習状況調査でも、自己肯定感が低いのが大阪の子どもたちです。

(2)少人数学級拡充や正規教員確保、自由で風通しの良い教育現場こそ

朽原亮府議

朽原亮府議

 子どもたちの現状が厳しく困難になった要因には、全国に比べても深刻な貧困の拡がりなどとともに、中学1年になったとたんに実施される高校進学のための「チャレンジテスト」や高校学区の撤廃、公立高校つぶし、北野・天王寺など「グローバルリーダーズハイスクール」10校に予算を重点配分するなど、競争をあおって序列化し、学び場を奪うという維新府政の教育行政があります。
 小学1・2年の少人数学級は、学力向上や欠席者数の大幅減少など様々な効果が検証されており、いじめの早期発見にもつながります。小学3年以降を都道府県で独自に拡充していないのは、大阪府を含め3府県だけです。経済格差が学力格差につながる「貧困の連鎖」がいわれるもとで、子どもの貧困が深刻な大阪でこそ、少人数学級の拡充が必要です。
 また、教員採用をめぐっても、近隣府県に比べ、志願倍率が落ち込み、合格者の辞退率が高いのが大阪です(大阪府から他府県へ転職する教員も多い)。この点では、維新府政のもとで強行された「教育行政基本条例」などの影響も現れているのではないでしょうか(表2参照)。
 教育行政のゆがみが増大するもとで、「教育に穴が空く(教員不足のため授業ができず自習になる等)」事態も増大しており、正規教員をしっかりと確保していくことが求められています。学校現場での知恵と力を合わせた共同の取り組みを前進させるためにも、自由で風通しの良い教育現場にしなければなりません。教員同士を相対評価で競わせる「教育行政基本条例」などは直ちに廃止すべきです。

(3)重大犯罪や薬物事件から子どもたちを守れ

 昨年8月、寝屋川市の中学1年生2人が連れ去られ殺害されるという痛ましい事件が起こりました。
 こうした重大事件に発展する可能性のある「子どもに対する声かけ等」の認知件数は、2015年10月末時点で671件と2014年同期と比べ140件も増大しています。にもかかわらず維新府政(橋下知事当時)は、小学校への警備員を配置するための市町村への補助を廃止しました。この事業については、ほとんどの市町村で独自に予算をつけ事業を継続実施しており、市町村からも補助復元の要望が寄せられています。
 また、京都府で小学生が大麻を吸引した事件が起こりました。大阪府で覚せい剤及び大麻の取締法違反で2014年中に検挙・補導された少年は合計で26人と前年よりも7人増えています。実際には、検挙・補導された以外にも多くの少年が薬物に蝕まれている可能性が高く、現状把握と薬物を入手できないようにもとを断つ取組みが必要です。暴力団等の犯罪組織の取り締まりを強めるとともに、その資金源となりかねないギャンブルを促進するカジノの誘致などは行なうべきではありません。

「二重行政」解消の名目で病院つぶしと医療後退〜医療・福祉の充実こそ

 維新府・市政は大阪市立住吉市民病院を廃止、その病床の一部を移管し、大阪府市共同住吉母子医療センターを整備する計画を進めています。
 住吉母子医療センターには、小児科79床、産科46床の計125床が整備されることとなっていますが、大阪市が誘致を予定している民間病院が整備する予定の小児科病床は、わずか10床です。住吉母子医療センターと合わせても89床と、現行の住吉市民病院と府立急性期・総合医療センターの小児科病床の合計数111床から約2割も減少してしまいます。
 しかも、誘致予定の民間病院では小児救急の受け入れは行われず、産科及び小児科医療の継続が担保されているのは10年間だけです。大阪市南部地域の小児医療が後退することは確実です。
 松井知事は、このような病院再編計画の厚生労働省への申請を強行しました(12月21日申請)が、地元医師会や地域住民が反対し、大阪府医療審議会でも反対意見がほとんどを占めました(賛成は維新府議1名のみ)。今からでも申請を取り下げるべきです。
 府民の健康増進の面では、大阪府におけるがん検診受診率は全国最低(胃・大腸・肺・乳がん検診は全国最下位、子宮がん検診は全国下から2番目)となっています。
 がん検診を受診する際の自己負担額は、例えば、胃がん検診では、無料実施の市がある一方、4千円の自己負担のところがあるなど府内市町村によってばらばらです。がん検診の受診率向上に向け、周知する内容や手法も改善しながらさらなる普及啓発を図るとともに、受診費用の負担軽減を図るための府独自の支援などが必要です。
 また、大阪府の後期高齢者医療制度の平均保険料は月6998円と全国で3番目に高くなっています。これまで、後期高齢者医療財政安定化基金からの拠出によって保険料の上昇が抑制されてきましたが、2014年度の保険料改定にあたっては、松井知事の判断で、基金からの繰入は行われませんでした。府内市町村や議会からも要望され、当初、府の担当部局からも要望されていた繰入を行わなかった松井知事の責任が厳しく問われます。今年度は、後期高齢者医療の次期保険料の改定が行われる年度です。基金を活用した保険料負担の抑制に、大阪府としての役割発揮が求められます。

表1)児童生徒の暴力行為は7年間
で約1.5倍、不登校は全国6位に

年度


暴力行為発生件数と千人当
たりの発生件数(小・中・高)



不登校児童生徒数(千人当たり)

小中学校高校
大阪全国大阪全国大阪全国
2007
太田府政
6,975
(7.2)
52,756
(3.7)
12.312.026.815.6
2014
維新府政
10,116
(10.6)
54,242
(4.0)
小:4.2
中:32.0
小:3.9
中:27.6
31.315.9

・2014年度の暴力行為発生件数は大阪府が全国最多(千人当たりでも)。

・大阪府の不登校児童生徒数(小・中学校)は全国18位から6位へと悪化。

表2)教員採用選考テストの志願倍率と辞退率の推移

年度大阪府京都府兵庫県
志願倍率辞退率志願倍率辞退率志願倍率辞退率

2007

6.24倍9.3%6.32倍5.7%6.94倍3.0%
20115.72倍13.5%5.93倍4.5%6.40倍5.4%
20125.16倍9.5%6.17倍6.7%6.16倍5.1%
20145.50倍10.3%6.72倍4.0%6.09倍4.9%

・京都府と兵庫県の辞退率は【合格者数-採用数】から算出。

(大阪民主新報、2016年1月17日付より)

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