〝吹田事件は武装デモ〟 自民市議が事実歪め教育介入
吹田市 文言修正要求に応じる
自民市議発言撤回、市対応の是正を
朝鮮戦争に反対したデモ行進が弾圧された吹田事件を巡り、吹田市議会で自民党議員が裁判で否定された主張を唱え、市立図書館の紹介文を修正させた問題で、「吹田事件の真相を語り、行政と議会に是正を求める市民集会」が18日、市内で開かれ、146人が参加。市在住の学者やジャーナリストら6人が呼び掛けて行われたもので、215人が賛同しました。
市民集会に146人
2月28日の市議会で自民党の藤木栄亮市議が事件を取り上げ、裁判で否定された警察側の資料や主張などを基に、デモ隊の目的は吹田操車場の襲撃だったと主張。「市内を恐怖のるつぼに落とし込んだ政治的な武装デモだった」として、市立図書館のメールマガジンにあった「弾圧事件」の記事削除や、威力業務妨害罪になったことを強調すること、学校での教育を市に求めました。
これに対し市は、「誤解を招く表現だった」とし、「記事の内容を訂正する」と答弁。学校教育でも「特定の見方や考え方に偏った取り扱いに留意し」「学習機会を提供」と、議員の要求に全面的に応じました。
共産市議の討論を議事録から削除も
日本共産党の柿原まき市議が3月22日、一般会計予算の反対討論で、市の姿勢・対応の問題点を指摘しましたが、議長が「議案の範囲外」として、議事録からの削除を決定しました。
藤木市議は過去にも市議会で、市内中学校での日本軍「慰安婦」問題の授業を敵視し、「君が代」暗記、「日の丸」掲揚調査を求める発言を繰り返し、市のキャラクターを無断使用して「(吹田市は)共産党の支持者の巣」などとする動画を公開し、監査委員が著作権侵害を認定しました。
吹田事件
吹田事件は、朝鮮戦争さなかの1952年6月25日、戦争と国鉄吹田操車場からの軍事輸送に反対したデモ行進で、日本人と朝鮮人の250人が逮捕され、111人が起訴された事件。長期にわたる裁判の末、検察側が証拠書類として採用を申請した供述調書の7割近くが却下され、最大の焦点だった「騒擾罪(そうじょうざい)」について、無罪を勝ち取りました。
憲法で保障された表現の自由守ったデモ
主任弁護人 石川元也氏が強調
関係者の名誉傷つける発言を許すな
吹田事件参加者と参加者遺族、元弁護団は連名で7日、市議会議長と各会派に、事件の事実を歪め、関係者の名誉を傷つける議員発言を容認しないよう求める要請文を提出しました。
集会では、大阪民衆史研究会の福田耕さんが経過を報告。藤木市議の質問は「議会質問の体裁を取りながら歴史修正を求め、一方的に関係者を誹謗し、名誉をおとしめようとする意図と、図書館や学校教育への介入だ」と指摘し、市に求められるのは「不当な質問に毅然と対応し、答弁の訂正と関係者の名誉回復、関係者への経過の聞き取りと資料調査を行い、郷土の歴史として正確に事実を伝えることだ」と述べました。
たたかってこそ民主主義が守られた
吹田事件の被告人の元主任弁護人だった石川元也弁護士は、デモ隊と警察が衝突した場面は一つもなかったとし、吹田事件の意義は「憲法で保障されたデモ・表現の自由を守ったことだ」と強調。「たたかってこそ民主主義が守られた72年前の行動を、市民として誇りを持ってほしい。行政も従来の立場を取るべきだ」と述べました。
市議会の動きを、日本共産党の玉井美樹子市議が報告しました。
3人の呼び掛け人が発言。竹田芳則・奈良大学教授(図書館情報学)は、「地元図書館だからこそ収集された資料を紹介したメールマガジンが、議員の圧力で書き換えられたことは、図書館の自由を侵すだけでなく、図書館員が長年かけて地域資料のコレクションを築いてきた仕事を汚すものだ」と強調しました。
立命館大学元教員の尾川昌法さんは、今回の問題と、群馬県によって高崎市の朝鮮人追悼碑が撤去された問題の類似性を指摘しました。
議会発言と答弁・対応の是正を求める集会アピールを確認。アピール文を吹田市立中央図書館と市地域教育部に提出しました。
(大阪民主新報、2024年5月26日号より)