おおさかナウ

2023年06月24日

児童・生徒に「君が代」暗記調査
吹田市教委 自民市議の質問受け

 吹田市教育委員会が今年3月、市内の小中学校を対象に、児童生徒たちが「君が代」を暗記しているかどうかを調べていたことが、このほど分かりました。自民党市議の議会質問に応えて行ったもので、保護者からは、「子どもたちを守るべき教育委員会がこんな調査をするなんて」と不安と疑問の声が上がっています。

疑問に思いつつ手を上げさせて

 市内小学校で低学年を担任している男性教諭は3月9日、授業中の教室に突然来た管理職から、「今日中にお願いします」と用紙を手渡されました。見ると、「国歌」と校歌の各歌詞を暗記している児童数を記入するようになっていました。
 調査目的も書かれておらず疑問に思いながらも、この日締切と書かれていたため、下校準備をしていた子どもたちに、「校歌を覚えている人はどれぐらいいるかな」「国歌を覚えている人は…」と聞きました。校歌はたくさんの子が手を上げましたが、「君が代」はパラパラとしか上がりませんでした。
 「子どもたちから『なんで聞くの?』と尋ねられたらどうしようかと思いながら手を上げさせた。心苦しかった」と教諭は打ち明けます。放課後、管理職のところに行って何の調査なのかを尋ねると、「市教委から言われた」と返ってきました。

市議会で自民市議繰り返し質問

 市教委の「君が代」暗記調査のきっかけとなったのは、自民党市議の議会質問です。
 自民市議は、学校での「君が代」指導や、卒業式・入学式での斉唱の状況、壇上に「日の丸」を掲揚しているかどうかなどを議会で繰り返し質問し、校歌と比べての「君が代」の暗記状況も聞いてきました。
 市教委による調査はこうした中で2012年から始まりました。15年度は小学2年で「君が代」暗唱33・5%、校歌暗唱86・7%、21年度はそれぞれ58・7%、78・4%だったことが議会で公表されています。

議員の圧力に屈しないでほしい

吹田市教育委員会

 1999年の国旗国歌法制定時、国は「内心の自由」を守るとし、「強制はしない」と何度も答弁し、今も内閣府のホームページには、国旗国歌法制定により、国民に「新たな義務を課すものではありません」とした当時の首相談話が掲載されています。吹田市議会でも全会一致で、国旗国歌を巡っては、内心の自由に留意するよう求める市議会決議が採択されています。
 市内の小学校に5年生の子を通わせている母親は、「うちの子は暗記しているかどうか聞かれたことはないと言っていますが、こんなことを先生に尋ねさせることも、議員が自分の考えに固執して子どもの自由や学校の教育を束縛することも、おかしいと思う」と話します。
 別の母親も、中学1年生の娘に尋ねたところ、暗記調査を受けたことはないと話していたとした上で、「子どもたちの内心の自由を守らなければならない教育委員会が、議員の圧力に忖度して思想調査のようなことをやっているのがショック。そんなことに屈しないでほしい」と言います。
 吹田市の元小学校教員の男性は、「先生に国歌を覚えているかと尋ねられたら、子どもたちは暗記していないのは恥ずかしいことだと思って、一生懸命覚える努力をするでしょう。暗記調査は『君が代』暗記を強制するもの」と指摘します。

「思想調査そのもの」「内心の自由を侵す」
日本共産党が抗議

全教吹田も

 全教吹田教職員組合は4月、西川俊孝教育長宛てに、市教委が調査を強行したことに対して抗議文を出しました。
 今月14日には、日本共産党吹田市委員会委員長の石川たえ府議、党市議団の塩見みゆき団長、党大阪7区国政対策委員長のかわそえたつま氏の連名で抗議声明を発表。市教委の「君が代」暗記調査について、「地方自治体による、子どもたちへの暗記調査は、強制を意図しており、思想調査そのもの」と批判。「内心の自由を侵す重大な憲法違反」と指摘し、ただちに暗記調査など教育現場への介入をやめること、君が代斉唱の強制をしないよう強く求めています。

(大阪民主新報、2023年6月25日号より)

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