おおさかナウ

2023年05月20日

政令市の財政なら住民施策拡充できる
21日告示・6月4日投票の堺市長選
野村ともあき氏が主張
永藤市長と公開討論

 堺市長選が21日、告示されます(6月4日投開票)。住民サービスの拡充や堺市の発展、政令指定都市の役割をいかに発揮するかなどについて、大阪維新の会公認で再選を目指す現職の永藤英機氏と、日本共産党も参加する「住みよい堺市をつくる会」が自主支援する、元堺市議で無所属の野村ともあき氏との違いが、告示前の16日に開かれた公開討論でも、浮き彫りになっています。

堺市民1000人委員会中区連絡会の集会で、参加者と必勝への決意を固め合う野村氏=13日、堺市中区内

財政危機宣言で市民施策を削減

 堺市堺区内で開かれた公開討論は、一般社団法人堺高石青年会議所が主催。羽衣国際大学の杉原充志教授の進行で、野村、永藤両氏が討論しました。
 最初の発言で野村氏は、永藤市政が子育て・教育予算や高齢者向け予算を削減する原因とした「財政危機宣言」は「政治的パフォーマンスだ」と批判し、市長選では住民サービスを拡充する「逆の道」を訴えたいと強調しました。
 永藤氏は、野村氏の批判に正面から答えないまま、「収支改善策を講じて宣言を解除した。未来への投資で堺の魅力や可能性を引き出す」と述べました。

ものづくりの街 堺の産業に注力

 第1のテーマ「観光・文化資源の活用をはじめとする経済成長戦略」について、永藤氏は堺の歴史などを最大限に生かし、インバウンド(訪日外国人観光局)の恩恵を堺にもたらすと語りました。
 野村氏は「観光は重要な産業だが、成長戦略の柱とするには脆弱(ぜいじゃく)だ」と指摘。観光は災害や感染症の世界的な大流行などの影響を受けるとし、「堺はものづくりの街。足腰の強い産業に注力すべき。観光ではビジネストリップ(出張)の需要を高めたい」と主張しました。
 永藤市政は今月25日に開始する予定だった大仙公園のガス気球の運行を延期。気球中のヘリウムガスが漏れ、ガスの再充填には数千万円かかるとされています。野村氏は「気球遊覧事業は堺市全体にどんな経済的な効果をもたらすのか」と質問。永藤氏は「地域にお金を落とすことが目的ではない」と述べました。

削減された施策 復活をさせたい

 第2のテーマは「教育・子育て施策」。野村氏は永藤市政の4年間で、第2子以降の保育料無償化の無期延期や泉北高速鉄道の通学定期券購入補助の廃止など、教育・子育て施策を削減してきたと批判しました。
 「これでは新しい世代が住むこともままならない。住民サービスを向上させることで新たな人口を呼び込み、街に活気を取り戻し、税収を確保してさらに住民サービスを拡充する好循環を堺に根付かせたい。その出発点が教育・子育て施策」と力説しました。
 永藤氏は、財政の見通しが立ったので、今年度から第2子以降の保育料無償化を所得制限なしで実現したと弁明。「子育て・教育の充実には膨大な財源が必要。どう確保するのか」と反問しました。
 野村氏は「適切な財政運営をすれば、堺市の財政なら十分な財源がある」ときっぱり。「財政危機宣言」の発端となった2020年度の赤字はわずか200万円で、財政調整基金は20億円以上あったことなどを示し、「削減された教育・子育て施策はできる限り復活させたい」と表明しました。
 また第2子以降の保育料無償化は結果として2年間延期されたことで、家庭によっては160万円の負担が生じていると指摘。永藤氏はまともに答えず、「延期したが所得制限を付けて実施していた」などと述べるにとどまりました。

おでかけ応援で健康寿命伸ばす

 第3のテーマ「ウィズコロナ時代の高齢者支援」を巡り、永藤氏は「年齢に応じた効果的な施策で健康寿命を延伸する」と発言しました。野村氏は、永藤氏が公約で掲げた、おでかけ応援制度の縮小を2度にわたり議会に提案して否決されたと指摘。「コロナで高齢者の孤独・孤立が進んだ。高齢者が街に出て活動することが、孤独・孤立の解消や健康長寿につながる」と強調し、おでかけ応援制度を拡充したいと語りました。
 野村氏は「なぜ、おでかけ応援制度を縮小しようしたのか」と質問しました。永藤氏は「制度発足当時から予算が増え、健康寿命も延びた」「(縮小は)苦渋の決断だった。議会で2度否決されたので、再提案はない」などの言い訳に終始。野村氏は「永藤さんの失政に当たる」と述べました。

市民の「日常」を大切にする堺へ

公開討論に出席した野村氏(右)と永藤氏=16日、堺市中区内

 第4のテーマは、「政令指定都市としての統治機構のあり方」。
 野村氏は、「統治」とは権力者が民衆を支配するという意味だとし、「堺市に必要なのは自治。住民と行政が一体となって、生活をどう向上させるのか、しっかり話し合う」と語りました。
 「府の言いなりではなく、政令指定都市の権限をさらに高めていきたい」と野村氏が述べたのに対し、永藤氏は、「府と協力したからG7堺貿易大臣会合の開催が実現した」などと繰り返しました。
 討論の最後に野村氏は、「いま堺と大阪で問われるのは、日常を大切にするのか、非日常を重視するかだ」と指摘。万博やカジノ、堺の気球事業は「非日常」で、「日常」の上下水道や教育、保育、地域福祉はじめ「市民の生活そのものについて取り組みを行うのが基礎自治体である堺市の役割だ」と強調しました。

(大阪民主新報、2023年5月21日号より)

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