おおさかナウ

2023年04月01日

PFOA 全国最悪汚染の摂津
排出源・ダイキンは調査・対策を
署名2万4498人分を提出

 発がん性などが指摘されている有害物質「PFOA(ピーフォア)」=注=による全国一の高濃度汚染が摂津市で発生し、住民の血液からも高い値が検出されている問題で、地元の市民団体「PFOA汚染問題を考える会(考える会)」が3月24日、発生源のダイキン工業淀川製作所(同市西一津屋1)に情報公開や調査・対策を求めるネット署名2万4498人分を提出し、記者会見を開きました。


PFOA ペルフルオロオクタン酸の略称。耐水性や耐油性に優れていることから、テフロン加工、食品の包装紙などに幅広く活用された有機フッ素化合物の一種です。ほとんど自然分解されず、「フォーエバーケミカル(永遠の化学物質)」とも呼ばれます。
 2019年にストックホルム条約で危険なランクの化学物質に認定され、製造・使用が中止に。日本政府は人体への影響を考慮した「暫定目標値」を導入し、飲用水、環境水に1㍑当たり50㌨㌘としました。21年には製造・輸入を禁止しています。

国暫定目標値の130倍にも

摂津市にあるダイキン工業淀川製作所

 大阪府による直近の調査(2022年4月)では、淀川製作所周辺の用水路から、国の「暫定目標値」(1㍑当たり50㌨㌘、㌨は10億分の1)の130倍、6500ナノ㌘、地下水からは400倍の2万㌨㌘を検出するなど、汚染が広がっています。
 05年から京都大学名誉教授の小泉昭夫氏らが地元住民の血液中の濃度を調査。21年の検査では、地下水・水路の水で野菜作りをしている住民の血液検査では、そうでない住民よりも平均で9倍以上の高濃度のPFOAが検出されています。

ダイキン守るための会議に

 大阪府と摂津市、ダイキンは「神崎川水域PFOA対策連絡会議」を09年から毎年開いていますが、ダイキンの排出水のPFOA濃度を公表しないことを決めるなど、企業利益を守るための会議となってきました。
 ダイキンは「健康被害は出ていない」「敷地外に汚染除去の義務はない」などとして、責任を取ろうとしていません。

ネット署名への賛同増え

 22年1月に市民有志が「考える会」を結成し、摂津市に汚染の調査やダイキンに対して、情報公開と汚染対策を要請するよう求める署名活動などに取り組んできました。
 昨年12月から呼び掛けたネット署名では、①ダイキンは敷地内汚染の情報公開と汚染対策を講じること②国(環境省)は土壌汚染の調査に加え、地域住民の健康影響の解明と汚染対策の指針などの整備を行うこと③ダイキンと摂津市は汚染が地域住民に与えた被害への補償について協議すること――の3点を要望しています。
 2月24日には吉村洋文知事に1万6317人分の署名を提出しましたが、その後も賛同者は増え続けています。考える会のメンバーは3月8日に上京し、環境省に2万3788人分を提出して交渉しました。

汚染実態を公表し検査を

 ダイキンへは署名と共に、十河政則社長に宛てに質問状を提出。▽同社周辺で全国最悪のPFOA汚染が広がっていることを認めるか▽現在の敷地内濃度、公共下水への排出濃度を公表すべきではないか▽社として住民の健康影響調査を実施する考えはないか――など13項目について回答を求めています。

高濃度検出の市民らが会見

記者会見する考える会のメンバー=3月24日、摂津市内

 記者会見で考える会の谷口武事務局長は、3月31日までに文書に回答するよう求めたが、ダイキン側は回答方法や期限について明言しなかったと報告し、「回答によっては、これからも新たな取り組みを進めたい」と語りました。
 記者会見には、22年6月の血液検査で高濃度のPFOAが検出された市民3人も出席。淀川製作所の近くで50年暮らしてきた70代の男性は、「夏みかんを育てて食べてきた。それが関係しているか心配。私の子どもたちも血液検査してほしい」と訴えました。

PFOA
疫学調査の実施を
摂津市議会が意見書可決

 摂津市議会は3月28日の本会議で、「PFOA等についての健康基準を速やかに定めるとともに健康影響調査及び疫学調査を求める意見書」を全会一致で採択しました。日本共産党が提案、大阪維新の会、公明党、自民党・市民の会の3会派が共同提案者となったもの。環境省と厚労省がPFOAなどについて新たな環境基準づくりなどの議論を始めている中で、汚染実態のある現地での情報収集・調査研究は欠かせないとし、健康基準を速やかに定めると共に、高濃度汚染地域での調査を早急に実施するよう求めています。

(大阪民主新報、2023年4月2日号より)

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