おおさかナウ

2023年03月11日

対 談
たつみコータローさん (大阪府知事候補)
岡野八代さん (同志社大学教授)

 

 「明るい民主大阪府政をつくる会」から大阪府知事選(4月9日投開票)に出馬する、たつみコータローさん(元日本共産党参院議員)が、同志社大学の岡野八代教授と対談しました。話題は、維新政治の問題点をはじめ、街づくりや府のあり方、ジェンダー、歴史修正主義の問題まで多岐にわたりました。

多くの市民が待ってた出馬

岡野 2019年夏の参議院選挙の時、たつみさんの街頭宣伝に応援に行かせていただいて、生活保護を受けられず娘さんに手をかけてしまったお母さんのことを話された涙の演説を後ろで聞いて、泣いていました。

たつみ あの時は本当にありがとうございました。

岡野 今回のたつみさんの出馬は、多くの市民が待っていたと思います。本当は国会に戻っていただきたいけれど、たくさんの人に関心を持ってもらって、自分たちの手で政治を変える、維新政治を変える選挙になるように、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

たつみ 維新政治の害悪を追及している者として、どれだけ大阪が壊されてきたのかを伝え、どういう大阪をつくっていくのかを提案していきたいと思います。

儲け主義こそ「大阪モデル」岡野八代さん

岡野 関西はメディアによる維新のイメージ作りがすごいですが、維新政治が実際にはどういうものなのか、一つ一つ明らかにする必要があると思います。
 例えば大阪城公園で大量の木が伐採されているそうですが、ネオリベラリズム(新自由主義)的な、今がよければいいとか、もうかる公共施設を進める維新政治を、京都市も京都府もまねているんです。小学校跡地をホテルにしたり。

新自由主義の 最先端政策を

たつみ 新自由主義の最先端の政策を大阪でこの10年やってきた中で、公共性がどんどん失われてきました。

岡野 市民の税金で運営されてきたものが、どんどん企業のもうけの場になっていく。それが本当の「大阪モデル」ですね。

たつみ まさにそうです。「身を切る改革」になぞらえて「木を切る改革」と揶揄(やゆ)されていますが、木の管理もお金がかかるだけでもうけにならないので切ってしまう。大阪城公園は大阪市が管理していましたが、民間委託されてカフェが並んだり、お金を払わないと遊べない公園ができてしまいました。
 本来行政がやるべき公共が投げ捨てられて、大阪の街が変えられてきました。
 さらにコロナの中で保健所がパンクして、大阪は全国で最も多くの方が亡くなりました。救える命が救えなくなったのが大阪です。

岡野 コロナ死者数が多いのは高齢者が多いからだと言い訳したり、「雨がっぱなんかでできるか」という市民の声に「ないよりまし」と言ったり。

「維新」は英語 で「王政復古」

たつみ 施設でのクラスターが出た場合に、別のところで治療や療養ができるようにしてほしいという現場の声は聞かず、吉村知事の口から出たのはイソジンや大阪ワクチンなど思いつきばかりでした。保健所職員は終電で知事の会見をユーチューブで見て、翌日の対応に追われたと。維新はトップダウンを売りにしていますが、その矛盾が今回のコロナ対応でいっそう浮き彫りになりました。

岡野 緊急事態のときの自治体の施策は、市民に直接関わることが多いです。間違っていたら謝って軌道修正できると思いますが、吉村知事からも松井市長からも、今何が問題になっているかとか、反省の弁を聞いたことがありません。
 謝らないというのは歴史修正主義とすごく似ています。認めたくないからなかったことにして、強がって、おかしいと指摘する人を攻撃するというのを、一貫して維新には感じます。

たつみ 維新の体質として、私も歴史修正が中核にあると思っています。

岡野 2012年、自民党の改憲草案が出た時に、日本政治の議論をしていて、ネオリベ政党として日本維新の会や大阪維新の会について話したのですが、「維新」は英語で「Restoration(リストレーション)」、「王政復古」という意味だと聞いて、周りの学者・研究者はどん引きしていました。

人権侵害解決 する力がない

たつみ 吉村市長時代には、大阪市がサンフランシスコの慰安婦像を巡って、姉妹都市を解消しました。

岡野 自分たちの思い描く社会に合わないものを敵視するという恐ろしさを実感しましたね。

たつみ 話し合いそのものを拒否し、断絶するわけですから、そういう人たちが政治をつかさどって、政府を補完して支えているというというのは、本当に恐ろしいことです。

岡野 慰安婦問題に関しては学術上、国際的には人権問題だとされていて、解決できるのは日本しかありません。過ちはこれから犯しませんと前向きに捉えることで日本も変わっていくはずなのに、彼らはそういうことを言われると非難されていると思う。安倍さん(元首相)もそうでした。
 人権問題は個別の犯罪とは違い、社会の構造上の差別によって、一部の人たちに被害を及ぼすことです。慰安婦問題を巡る自民党や維新の対応は、人権侵害があったときに解決する力がない国であり、大阪だということを示してしまいました。

たつみ 維新は政策的にも安倍政権に共鳴していた部分がすごくありました。森友学園が軍国主義の小学校をつくろうとした時も、大阪府が規制緩和して認可し、下野していた安倍氏が、大阪のシンポジウムで府の教育基本条例を礼賛しました。

テストの結果 を賃金に反映

岡野 大阪は子どもの貧困率も高いですよね。学力問題も言われていますが、困難な家庭が多いことも背景にあると思います。

たつみ 大阪市では吉村市長の時に、全国学力テストの点数が悪いから、点数の悪い先生の給料を下げようとしました。

岡野 それはひどい。成績が悪いところの先生を増やすというのなら分かりますが、できない子ども たちを持つ先生に罰則をつけるのはおかしい。
 私のやっている研究ですが、重病の人を診るお医者さんは一番重労働で手当も大きいはずですが、もし死を目前にしている患者を診る医者の給料を減らせば、助かる命も助からないんですね。教育現場でも同じです。困難な子たちを教えるほうが高い専門性を問われるし、時間もかかるんです。

たつみ 学力が低いことを問題にするなら、子どもたちが困難を抱えて勉強できない環境を解決することが大事で、先生に気兼ねなく聞ける少人数学級にすることこそ求められます。塾代助成も反対はしませんが、府立高校をどんどんつぶし、公教育をずたずたにしてきたことに対し、学びを保障し、塾に行かなくてもいい公教育にせよと言いたいです。

岡野 本当にそうですね。

ジェンダー視 点を自治体に

岡野 女性の視点、ジェンダーの視点もすごく大事で、首長の意思がとても大きく影響すると思います。

たつみ 私が知事になれば、大阪府の政策そのもの、意思決定できる場に女性を登用し、防災対策なども、女性やマイノリティー(少数者)の視点でできているかなど、省庁横断的にチェックして政策立案する部署をつくりたいと思っています。

岡野 家族やジェンダーの問題は政治のど真ん中にあります。日本の長時間労働を支えてきたのは、女性たちによる家事育児や、ケア労働を安く抑えてきたことにあるし、こんなに経済が落ち込んだのも、女性の賃金が安いことや最低賃金の低さにあります。大阪の公務員の非正規の割合はどうですか?

たつみ 4割で全国で一番多いです。

岡野 公務員の非正規は根が深いです。非正規は女性も多いです。自治体は率先して正規を増やすとか、契約する企業に対して正規採用や女性の雇用の目標を示すことが必要です。

たつみ 府の職員は本来、府民の奉仕者ですが、生活相談に乗る職員の収入が生活保護以下だったりします。非正規で不安定な人が、市民の生活に寄り添って相談を受けられるのかという問題です。
 知事になったら公契約条例をつくりたい。公共事業に関しては委託して終わりではなく、そこで働いている労働者にきちんと一定の給料が保障されているかどうかをチェックして、中抜きを許しません。

住民のため働 ける公務員に

岡野 今の府の職員も働きづらいと思っているだろうし、良心のある人たちがすごくつらい思いをしているんじゃないかと想像します。
 住民のために働くという意識で公務員になった人が多いはず。首長が変わると働き方も変わるだろうし、府庁の雰囲気も変わると思います。

公共、住民奉仕を取り戻す たつみコータローさん

たつみ 2008年に当選した橋下知事(当時)は、一番最初の訓示で職員に、破産会社の従業員だから給料を下げられても文句を言うなと言いました。
 先日、黒田府政の時に、府の職員をされていた方から、黒田了一知事が一番最初に「皆さんは僕のほうではなく、府民のほうを向いて働いてほしい」と言われてうれしかった、働く励みになったと聞きました。
 これまでの維新政治で府の職員は、知事のほうばかり向いて仕事をせざるを得ない人が少なくなかったと思います。維新政治で職場の余裕も奪われました。
 僕が知事になったら、非正規や分断ではなく、職場に余裕を取り戻して、府民に奉仕する職員としていきいきと力を発揮してもらいたいと思います。そして学童保育や支援学校、虐待に対応する子ども家庭センターの充実などにも光が当たり、マイノリティーにも光が当たる政治をしたいと思っています。

岡野 本当にこういう方が自分たちの代表だったら、とお話していて思いました。10年以上にわたる維新政治の成果はいったい何なのか、大阪の皆さんにじっくり振り返ってほしいですね。

たつみ 有権者の中に維新への期待や幻想がある中で、維新政治の問題点と共に、新しい大阪をどうつくるか伝えながら、全力を尽くしたいと思います。

(大阪民主新報、2023年3月12日号より)

月別アーカイブ