おおさかナウ

2023年03月04日

影落とす強引な学校つぶし
維新・松井大阪市政
工事遅れ・危険な通学路・狭い校庭…
条例変えて学校統廃合

「皆さんが選んだ議員」

「皆さん方が選んだ議員が決定したこと。我々はそれに基づいて執行していく立場」
 1月下旬、城東区で開かれた小学校統廃合計画を巡る保護者説明会で、大東辰起区長がこう言いました。
 保護者側が6年前の2017年に、前任区長と交わした「(住民の)合意のない中での(小学校)統合は進めない」とした確認事項を示したことへの回答でした。
 区内には現在16の小学校があり、17年に中浜、今福、森之宮の3校の統廃合計画が持ち上がりましたが、住民らの反対運動でストップしました。当時、大阪市教委は市議会でも、「地域、保護者の合意抜きには統廃合は行わない」としていました。
 地元合意を得られないことで統廃合が進まず、業を煮やした松井維新大阪市政が強行したのが、20年の学校活性化条例改定。11学級以下で児童数増の見込みのない小学校は、地元合意がなくても統廃合(適正配置)の対象にするという「学校つぶし条例」でした。
 城東区の保護者説明会でも区長は、「適正化」という言葉を何度も使いましたが、参加した保護者は「統廃合により生じるメリットが示されず、通学路の危険性も放置されたまま。保護者の納得は全く得られていない」と話します。

生野で起きていること

 活性化条例改定後、小中学校の統廃合が進められている生野区では、矛盾が噴き出しています。
 同区では16年3月、西部地域の5つの中学校を1校減らし、12ある小学校を8校減らすという大幅な再編整備案が発表され、連合町会ぐるみで反対運動が広がって、計画をストップさせてきました。
 ところが条例改定後、一挙に8つの小中学校が統廃合されました。


開校に工事間に合わず

 生野中学校は、隣接する西生野小の運動場に校舎を増築。同小と舎利寺、生野、林寺の4小学校が廃校になり、小中一貫の義務教育学校「生野未来学園」が昨年4月開校。田島小と生野南小は田島中学校と統廃合し、施設一体型の田島南小中一貫校として昨年開校。両校とも、整備工事が昨年11月末まで続けられ、今年1月に開校記念式が行われました。両校とも狭い校庭を学年交代制で使っています。
 御幸森小、中川小も統廃合され大池小学校となり、さらに同小と舎利寺小の一部、大池中学校が統廃合され、連携型小中一貫校の大池学園が開校しました。

危険で保護者と通学し

統廃合後にできた新校まで、暗い商店街などを通るわが子の通学に付き添う保護者=2月、大阪市生野区内

 朝の暗い商店街。自転車がびゅんびゅん走る中を生野未来学園に向かう子どもたち。同伴する保護者も少なくなく、2人の子を通わせる保護者は、「2人とも女の子なので犯罪に巻き込まれないかなど心配。新しい学校ができてから毎日ついて行っている」と話します。
 この日も自転車と子どもがぶつかりそうになる場面がありました。献身的な連合町会の見守り隊が、事故を防いできました。

子ども食堂続けられず

見守り隊の献身的な活動が事故を防いでいます=2月、大阪市生野区内

 舎利寺地域に住む児童の中には、自宅から生野未来学園まで30分以上かかる子もいます。朝7時45分から30分、舎利寺小学校前で連合町会が開いていた子ども食堂は、通学時間が長くなったことで続けられなくなりました。

「何のメリットもない」

 児童生徒数が一挙に増え、登校時に正門前の交差点が子どもたちであふれて危険なことから、迂回通学を余儀なくされた子どもたちは、通学距離がさらに長くなりました。
 統廃合により、学級人数もこれまでより増えています。
 小学生と中学生の子を生野未来学園に通わせているMさんは、「1分で行けた林寺小学校がなくなってしまい、今度は15分もかけて通学。運動場も狭くなって統廃合で何のメリットもない」と話します。

廃校跡地に民間業者が


廃校になった元林寺小学校に今も掲げられている横断幕=2月、大阪市生野区内

 住民がさらに驚いたのは、廃校になった小学校の跡地利用です。林寺小と生野小はそれぞれトルコ系、インド系のインターナショナルスクール、生野南小は自動車整備専門学校が9月に開校します。大阪市は各事業者に引き渡すための改修工事に、3校合わせて1億2千万円をかけました。
 舎利寺連合振興町会の猪股康利会長は、「それだけたくさんの費用をかけるのなら、なぜ子どもたちの学びのために使ってくれなかったのか。子どもは地域の宝なのに」と憤ります。

真の目的は教育予算減

 各事業者への家賃も破格です。林寺小跡地(敷地面積6714㎡、校舎延べ面積3893㎡)に来るインターナショナルスクールはわずか月56万6500円(税込み)。敷地面積で計算すると坪単価275円、校舎面積でも475円という安さです。
 大阪市学校園教職員組合の宮城登委員長は、「学校統廃合は教育政策ではありません。学校数を減らし、教職員数を減らし、教育予算を減らすのが真の目的」だと指摘します。
 小学校は11学級以内で廃校、大阪市立高校はすべて府に無償譲渡し、府立高校は3年連続定員割れが続けば廃校にして、跡地は民間業者に。全国に例を見ない維新政治の教育施策には、教育的配慮はみじんも感じられません。

教育条件整備こそ 日本共産党

 日本共産党は、大阪府議会でも大阪市議会でも何度も学校の統廃合問題を議会で取り上げ、強引に学校つぶしを進めてきた維新市政を厳しく批判するとともに、地域の声に寄り添い、少人数学級の実現など教育条件の整備こそ必要だと訴え、その実現に奮闘しています。

(大阪民主新報、2023年3月5日号より)

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