おおさかナウ

2022年12月10日

「共感力」こそ人間の本質
大阪革新懇が「講演と文化のつどい」
前京都大学総長 山極壽一氏が講演

 進歩と革新をめざす大阪の会(大阪革新懇)が4日、大阪市中央区内で「講演と文化のつどい」を開き、第26代京都大学総長で総合地球環境学研究所所長の山極壽一(やまぎわ・じゅいち)氏が、「進化と文明のミスマッチから見たコロナ後の社会」と題して講演しました。

大阪革新懇が開いた「講演と文化のつどい」=4日、大阪市中央区内

人間の活動や気候の変動で

講演する山極壽一氏

 山極氏は、地球に存在する微生物やウイルスと、新型コロナのパンデミック(感染爆発)との関係から説き起こしました。野生動物には多くのウイルスの遺伝子が組み込まれており、人間の活動や気候変動による生態系の破壊によって、未知のウイルスが野生動物を介して家畜や人間に感染するようになってきたと述べました。
 現代社会は人々が密集して大集団をつくり、人や物が地球的規模の動きを強めるという特徴があると指摘。この特徴に乗じて新型コロナのパンデミックが起き、自由な移動や対面での対話、食事の団らんや芸術活動、スポーツなどが制約を受けることになったと話しました。
 同時に、コロナ禍の教訓として、子育てや家事、介護の重要性や、サービス産業の価値などに人々が気付き始めているとし、「人間にとっての豊かさとは何かを考え直さないといけない時代になっている」と述べました。

ゴリラなどの生態と比べて

 山極氏は人類進化論専攻で、鹿児島県の屋久島で野生ニホンザル、アフリカ各地で野生ゴリラの社会生態学的研究に従事。日本霊長類学会や国際霊長類学会、日本学術会議の会長などを歴任しました。
 講演ではサルとゴリラ、チンパンジーの生態や行動などと比べながら、人類が進化してきた歴史や人間の子育ての特質や、人類史の中で人間の脳が大きくなってきた経過、子育ての特徴などを詳述。「動物は自分の利益を高めるために集団に属するが、人間は自分の利益をおとしめても集団のために尽くそうとする」と語りました。
 山極氏は、3年に及ぶコロナ禍を通じて、命と命のつながりを見据えて、新しい人間の暮らしとは何かを考えることが重要だと強調。食べ物を分配し、仲間と一緒に食べる「共食」と、親だけではなく様々な人が子育てに関わる「共同保育」を通じて高められた「共感力」こそ、人間の本質だと述べました。

人間にとって文化は不可欠

 山極氏は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)には「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」など17の目標があるが、「文化」が含まれていないと指摘。文化は数値化できないが、人間が生きる上で不可欠なものだと力説し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「文化的多様性に関する世界宣言」(2001年)の主な条文(注)を紹介しました。
 さらに1980年代ごろから広がってきた「自己責任」の考え方を変えなければいけないと指摘。自然の諸力と融合し、その力を生かす「東洋の知」と、環境を客体化して分析し、技術によって機能的に作り変える「西洋の知」のそれぞれを生かし、「文化と科学が共鳴し合う新たな環境倫理をつくることが求められる」と問題提起しました。

文化的多様性に関する世界宣言

(注)国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「文化的多様性に関する世界宣言」(2001年)
 「生物的多様性が自然にとって必要であるのと同様に、文化的多様性は、交流、革新、創造の源として、人類に必要なものである。この意味において、文化的多様性は人類共通の遺産であり、現在及び将来の世代のためにその重要性が認識され、主張されるべきである」(第1条から)
 「創造は、文化的伝統の上に成し遂げられるものであるが、同時に他の複数の 文化との接触により、開花するものである」(第7条から)

「うるま御殿」の演奏で盛り上がり

大阪市大正区の沖縄料理店「うるま御殿」の皆さんが文化行事に出演。沖縄民謡に乗せて獅子舞も登場しました=4日、大阪市中央区内

 文化行事では、大阪市大正区の沖縄料理店「うるま御殿」の店主・川上清満さんらが沖縄民謡などを演奏。最後は、参加者が三線(さんしん)や太鼓のリズムに合わせて自席でカチャーシーを踊る中、獅子舞も参加者の頭をかみながら練り歩き、盛り上げました。
 大阪革新懇代表世話人で医師の川崎美榮子氏が開会あいさつし、代表世話人で関西学院大学の冨田宏治教授が閉会あいさつ。会場には167人が参加し、ユーチューブの生配信を53人が視聴しました。

(大阪民主新報、2022年12月11日号より)

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