おおさかナウ

2021年12月11日

権力監視・少数者切り捨てない・多様な意見の提示
自由な気風の保持 メディアに必要
TBSキャスター・金平茂紀さんが講演
大阪革新懇が講演と文化のつどい

 進歩と革新をめざす大阪の会(大阪革新懇)が5日、大阪市都島区内で「講演と文化のつどい」を開き、会場に170人が参加し、オンラインで50人が視聴しました。

都合の悪いことは報じない

講演する金平茂紀さん

 TBSのテレビ番組「報道特集」のキャスター、金平茂紀氏が講演しました。同氏は1977年にTBSに入社し、モスクワ支局長、ワシントン支局長、「筑紫哲也 NEWS23」の編集長、報道局長を歴任。近著に『筑紫哲也「NEWS23」とその時代』(講談社)があります。
 金平氏は先の総選挙(10月31日投開票)を巡り、テレビや新聞が事前に出した自民党の獲得議席予測は全部外れたが、いずれも反省も検証もしてないとし、「メディアは自分たちに都合の悪いことは、自分たちのメディアで報じない」と指摘。こうしたメディアの姿勢を問い、正すことが必要だと語りました。

自民党右派よりも恐い政党

 総選挙で議席を伸ばした日本維新の会について金平氏は、「政権党でないという意味では野党だが、政策の中身を見ると、自民党の右派よりも恐い政党だ」と指摘。「維新は『身を切る改革』を言うが、ターゲットが違うのではないか。実際にやってきたのは公務員や医療、福祉などの削減ではないか」と述べました。
 総選挙後に行われている「野党共闘は失敗だった」などの議論に対し、「野党共闘をやっていなかったら、もっと小選挙区でとんでもないことになっていたのは明らか」だと反論。メディアは総選挙の焦点などについてきちんと伝えない一方、9月の自民党総裁選に費やした各テレビ局の放送時間は計185時間に上ったとし、「これは本当におかしなことだ」と語りました。

議論もない改憲の危険性が

大阪革新懇の講演と文化のつどいであいさつする代表世話人の川崎氏=5日、大阪市都島区内

 同時に金平氏は、自公が政権を維持した今回の総選挙の結果を、「すべてマスコミのせいにするのは違うと思う」と指摘しました。
 投票率は55・93%と戦後3番目の低さとなり、投票日と重なったハロウィンの行事に参加した若者たちを取材したNHKのニュースでは、7割が投票に行っていないことを紹介。この現状をきちんと受け止め、どう変えていくかを考えることが大切だと話しました。
 日本維新の会の松井一郎代表が選挙結果を受けてすぐ、憲法改定の国民投票を来夏の参院選と同時に行うと発言したことに「びっくりした」と金平氏。投票率の低さがある中で、「(改憲が)興味もなく、論議もできないまま通る危険がある」と警告しました。

政治は身近なところにある

 金平氏は、政治とは永田町の権力争いや政権政党の派閥の問題ではなく、「暮らしの中の身近なところにある」と強調。この国の主権者は国民なのに、メディアは視聴者を「お客」として扱い、テレビの開票特番も見世物やショーのように仕立てるようになってしまっていると語りました。
 金平氏はメディアの役割について、ジャーナリストの故筑紫哲也氏が残した言葉を紹介しました。まず、何よりも事実を正確かつ迅速に伝え、主権者である国民の知る権利に奉仕する。いま優先的に考えるべきことは何かを示す。強い権力を監視し、少数者を切り捨てず、多様な意見を提示することで自由な気風を保つこと。「いまの社会のありようやメディアの進んでいる道を考えたとき、これらがとても大事なことだ」と語りました。

来夏の参院選へうねりを

 大阪革新懇は、アジア・太平洋戦争が開戦(1941年)した12月8日前後に、講演と文化のつどいを開いてきました。コロナ禍が続く中、ことしも昨年と同様、会場で感染対策を講じながら開催。オンラインによる生中継を併用して開きました。
 開会あいさつで代表世話人の川崎美榮子医師は、先の総選挙で明らかになった野党共闘の効果を、来年の参院選までに国民に広げるようと呼び掛け。国会で力を伸ばした改憲勢力とのたたかいを強めると共に、若い世代に共感を呼んだジェンダー平等社会のメッセージをさらに届けようと語りました。
 代表世話人で阪南大学の桜田照雄教授は閉会あいさつで、経済政策の中心は維新が進めるカジノ・万博などインバウンド(訪日外国人)頼みの観光産業ではなく、住民生活の質を高めることだと強調。参院選に向けて維新の動きを止め、革新懇運動の大きなうねりを大阪から起こそうと語りました。
 つどいには日本共産党の宮本岳志衆院議員も参加し、紹介されました。

世相風刺を交え相撲甚句を披露
落語家・桂文福さん

 文化行事では、落語家の桂文福さんが登場。世相風刺を交えながら、十八番の相撲甚句を披露しました。
 文福さんが最後に演じたのは、結婚50周年を迎える夫婦が登場する新作落語の「金婚夫婦」。裕福でない暮らしの中の小さな幸せや、かつて楽しんだ温泉旅行の思い出を面白おかしく語り合った末に、こんなやりとりが。

夫「こんな狭い家、四畳半2間やで。すまんの、こんな甲斐性なしで」
妻「おじいさん、よろしやないか」
夫「なんで?」
妻「合わせたら、九畳(九条)守った平和な家庭や」

 こんなオチで出番を締めくくった文福さんに、温かい拍手が送られました。

相撲甚句や新作落語を披露した桂文福さん

(大阪民主新報、2021年12月12日号より)

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