おおさかナウ

2021年12月04日

総選挙の演説・ビラ 本当なの?
維新をファクトチェック 下

 

Q.地下鉄のトイレはきれいになったが

2011年3月に出た大阪市交通局の施政方針

 「民営化で地下鉄のトイレがきれいになった」と維新が演説すると「うんうん」とうなずく聴衆の姿が多く見られました。事実は平松邦夫市長当時の2011年3月に大阪市交通局が発表した「大阪市営交通事業の今後の施策展開について」にさかのぼります。
 黒字経営が2005年から実現し、全国の公営地下鉄で唯一累積債務を解消した大阪市営地下鉄が毎年の黒字を背景にして、①トイレの改修工事を計画的に実施する(32億円・2011年―15年)。②地下鉄の転落防止柵を設置する(203億円2011年―15年)。③赤字の市バス事業に地下鉄会計から毎年30億円を援助する、という方針を出しました。
 ところが、その秋の市長選挙で当選した橋下氏が①の「トイレ改修」だけを継続し、金額が多い②③は中止したのです。そのため、2019年度末までに御堂筋線の全駅に設置予定だった可動式ホーム柵の設置は未だに完成せず、市民の足の市バスは廃止・減便されて交通不便地域が大阪市内の各所に広がり、高齢者など交通弱者に大きな被害を現在も与え続けています。
 民営化の「象徴」として「トイレ改修」したものの、乗客の安全と移動の権利が置きざりになっています。

A.安全と移動の権利〝置きざり〟に

2011年3月に出た大阪市交通局の施政方針

Q.給食や教育の無償化は?

給食無償化を求める市民パレードを報じる「しんぶん赤旗」(2018年2月10日付)

 維新は「大阪の改革」に大阪市での学校給食の無償化を挙げていました。無償化はよいことです。しかし経過を見ると、市民が維新の妨害をはね返して実現したことが鮮明です。
 大阪市会への給食無償化を求める陳情は、2017年3月議会や2018年9月議会、2018年12月議会などに繰り返し提出されています。当時の吉村洋文市政は「財政状況から困難」と拒否する見解表明をしています。議会で、採択を一貫して主張したのは日本共産党です。維新は採択に反対し、廃案にしました。

 2019年の府知事・市長ダブル選挙では、日本共産党が支持した小西禎一候補は「学校給食の無償化」を掲げました。吉村洋文知事候補は「給食無償化は共産党の政策だから反対」、松井一郎市長候補は、「財源はどうするのか」と小西候補を攻撃していました。
 こうした維新の妨害を世論と運動ではね返し、大阪市で実現させたのです。府内での給食無償化は、2019年度に田尻町が最初でしたが、まだ少数です。さらに力をあわせ、世論と運動を広げ、全市町村で実施させることが求められています。

2019年4月の府知事選で学校給食無償化を掲げた小西禎一候補の選挙公報より

高校授業料の無償化も、国民の世論と運動が原動力    

2019年4月の府知事選で学校給食無償化を掲げた小西禎一候補の選挙公報より

 父母や教職員でつくる「ゆきとどいた教育をすすめる会」は、〝幼稚園から大学までのすべての学校での学費無償化などを求める〟請願署名を繰り返し国会に提出。国で無償化が始まる2010年時点で「署名数は20年間で3億人を超え、紹介議員は約200人になった」ほどの取り組みをしています。
 こうした運動に加え、2009年8月の総選挙で自民党から民主党への政権交代が行われ、翌年の2010年4月に国で公立高校授業料無償化、私立高校への「就学支援金」制度が実現しました。大阪府ではこの流れと、「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」の高校生らの運動とも連帯した私学助成削減反対のたたかいで、2010年に国の高等学校等就学支援金制度創設と、私学学費の一部無償化に踏み切らせました。
 こうして、高校授業料の無償化は世論と運動でつくったものですが、私立高校生の約5割にとどまるなど、なお課題を残しています。対象者をすべてに拡充することや私学経常費補助の拡充が求められています。日本共産党は、国に私学予算の増額をさせるなど私立高校の学費無償化を拡充するため頑張ります。

A.妨害をはね返した市民の力

Q.地下鉄民営化で市民は得をする?

 維新は民営化で大阪メトロが「大阪市に税金を払うようになった」と自慢し、民営化によって市民が得をしたとの印象をふりまきます。事実は、市営地下鉄のままでも大阪市に毎年100億円を超える納入金が可能でした。毎年200~400億円も黒字を生む超優良企業だった市営地下鉄は、その根拠法である地方公営企業法(別項)の規定に則って大阪市に利益を還元する義務がありました。
 また、地下鉄の巨額の黒字は、①運賃の値下げ、②トイレ改修の促進、③可動式ホーム柵設置の加速、④バス事業を支援、などを同時に進めることも十分に可能でした。
 なぜ法律の規定を無視して黒字を還元しなかったのか、吉村市長(当時)は「民営化に伴う地下鉄職員の退職金を積み立てるため」と説明しました。退職金は労働者の当然の権利ですが、民営化後のメトロの実態が市民と職員にとって良かったのかが問われています。
 メトロ社長の役員報酬は2449万円、交通局長の1347万円から大きく増える一方、人件費削減がメトロの経費削減の最大ターゲットとされ、人員削減により駅職員が1人体制(今里筋線)にされました。災害・事故対応での支障は明らかです。さらに、民泊事業に手を出して損失を出し、夢洲はじめ開発事業に乗り出しています。
 メトロの株主は大阪市であり大阪市民です。乗客の安全軽視と職員への労働強化への監視と改善を求める声を大いに上げる必要があります。

(別項)地方公営企業法第十八条2 

「地方公営企業の特別会計は、(略)利益の状況に応じ、納付金を一般会計又は当該他の特別会計に納付する」

A.安全重視こそ市民への還元

Q.「解雇規制緩和で経済は成長する」?

 維新は、解雇の規制緩和など労働市場の流動化を進めれば、経済成長すると主張します。
 “正社員は解雇しにくいので、企業は正社員でなく非正規雇用を進める。すると低賃金・不安定雇用が増えて、消費が低迷、景気が悪くなる。そこで、正社員と非正社員の「壁」を低くして、企業が解雇しやすくし、必要な時に労働者を集められれば、企業の成長につながり、日本の経済成長にもつながる”――というわけです。「正社員は既得権」だとする維新の議員もいます。
 経済界は、これまでも雇用の規制緩和を求め、自公政権もこれに応えて1999年に労働者派遣を原則自由化し、2003年には派遣対象を製造業にまで広げ、15年には、同じ業務でも人を入れ替えればいつまでも派遣労働者を使えるようにしました。裁量労働制も拡大、19年には高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ制度)も導入しました。しかし、労働者の賃金は下がり続け、日本は、世界でも珍しい「経済成長しない国」になってしまいました。
 企業にとって「コスト」が下がっても、全体とすれば不安定雇用が増え、経済にプラスに働きません。大企業が利益を上げ、内部留保を増やし続けても賃金は増えず、景気も良くならなかったのは、これまでの事実が物語っています。

A.労働者の賃金上げてこそ

(大阪民主新報、2021年12月5日号より)

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