おおさかナウ

2021年11月27日

総選挙の演説・ビラ 本当なの?
維新をファクトチェック 上

 

 維新が総選挙で語った維新の“改革ストーリー”は、次のようなものでした。①大阪府・大阪市は「財政破綻」していた。②「身を切る改革」「民営化」で借金を減らして財源を生みだした。③維新が生みだした財源で子育て施策を実施した、さらに、「万博など新たな投資ができるまでになった」というのも加わります。その各所にフェイク(虚偽)が織り込まれ、都合の悪い事実は伏せられます。以下、2回に分けて個々のフェイクをみていきます。

Q.大阪府・市の財政は破綻していた?

 吉村氏は橋下市長以前の大阪市は「倒産すると言われていた」と語ります。しかしそのような事実はなく、大阪市の収支は1989(平成元)年度以後32年連続の黒字です。市の借金も橋下氏が登場する8年前の2004年度(関市長当時)をピークに一貫して減少し続けました。理由は大型事業を控え新たな借金が減少したことと、借金返済用の貯金(公債償還基金)を従来からしっかり貯めていたからで、維新の成果ではありません。
 大阪府財政では、橋下知事就任時(2008年)に「破産会社」を宣言し、退任時(2011年)には「超優良企業」だと語ったことが今でも使われます。事実は橋下知事就任後の大阪府の借金は増え続け、2012年度には新たな借金をするにも国の許可が必要な「起債許可団体」に転落し、18年度にようやく解除されるというありさまでした。黒字は帳簿上での演出であり、「超優良企業」などというデマの陰には、住民サービスの切り捨てと府職員(警察官・教育含む)の賃金カット押し付けがあったことを忘れてはなりません。

大阪市は橋下市政の前から黒字で借金も減少。大阪府は橋下府政で財政立て直しどころか借金増。

Q.「退職金をゼロ」にした?

 維新の演説で必ず登場するのが「退職金ゼロ」の話です。総選挙の政見放送でも「退職金なんてない」と松井氏が語り、フェイクを全国に拡散しました。
 「4年で何千万円もある首長の退職金をゼロにした」と言ったら確かにインパクトがあり、聞いた人の心に響きます。しかし、事実はその金額を任期4年48月の報酬に分割して上乗せするためプラスマイナスゼロ、その上に、一時金の基礎額にも上乗せするので、逆に4年間で348万円の収入増になるのです。
 「退職金ゼロ」とは、実は「身が太る改革」だったのです。その事実を隠し、退職一時金という「形態」がなくなったことだけを繰り返し宣伝しての「刷り込み」です。その「効果」は、日々の生活費を節約している庶民に影響を与えており、軽視せずに繰り返し真実を伝えることが求められています。

「ゼロ」にしたが報酬に上乗せ。1期4年の総報酬は350万円増に。

Q.「身を切る改革」でも仕事やりくりできる?

保健師増員などを求めて署名提出した大阪府職労=1月15日、府庁内

 松井維新代表(大阪市長)は「身を切る改革」の実例として「大阪府・大阪市の職員は25%スリムになった。仕事は増えたけど十分やりくりできてる」と自慢げに語ります。
 しかし、事実は「十分やりくり」など到底言える状態ではありません。今年の春のコロナ第4波でも、夏の第5波でも「保健所に何度電話してもつながらない」「コロナにかかって自宅で待つが保健所から連絡がない」という状態が大阪府下で、特に大阪市で起こりました。
 保健所職員は、睡眠も食事時間も削り、過労死ラインを超える超過勤務をしてもこの状態が長く続きました。また、治療を受けられないまま自宅で亡くなるなど「医療崩壊」に陥りました。大阪市の現職保健師が、コロナ患者への連絡が何日も取れないことへの自責の念をテレビで告白し、体制強化を訴えたことも今年5月のことです。
 大阪府・大阪市ともに松井氏がいうように大幅な人員削減が行われ、どの部署も人手不足に陥るなかで起こるべくして起こった人災であり、「身を切る改革」とは「命を切る改革」だったのです。

コロナ禍で「医療崩壊」。「身を切る改革」が「命を切る」ものに。

Q.コロナ対策で頑張っている?


自ら「現場を疲弊」と書いた橋下氏のツイッター

 コロナ対策で吉村知事が「よく頑張っている」との声とは裏腹に、大阪は全国最悪の事態でした。
 維新は昨年11月に大阪市廃止を問う「住民投票」の強行のため、「大阪モデル」の基準を改悪し、赤信号が点灯しないようにしました。山中伸弥教授から「コロナ対策が科学から政治に」と懸念されるありさまでした。
 今年2月には吉村知事が第3 波の緊急事態宣言解除を前倒し、医師の懸念を無視して「重症病床確保数215床から150床への減床(3月1日)」を指示。その直後から起こった「第4波」(3月~5月)で「医療崩壊」となり、自宅待機者が一時1万8千人を超え、1198人が亡くなる(自宅で19人)などの悲劇が起こりました。
 背景には、維新政治10年間の保健所職員大幅削減、大阪市立住吉市民病院の廃止など医療・保健部門の切り捨てがあります。松井市長は職員削減を「身を切る改革」だと自慢しますが、日常業務でカツカツの保健所体制では、コロナパンデミックのような災害に十分な対応ができるはずがありません。橋下氏でさえ「大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など」(2020年4月3日ツイッターより)とつぶやいているところです。
 維新の大阪府・大阪市政は、国の予算内でのコロナ対策に終始し、自治体独自に行うべき大規模検査の推進や医療機関・中小業者への独自支援に背を向け続けてきました。大阪府が2020年度に支出したコロナ対策費は全体の0・3%だけ、国の支出4647億円と預託金6926億円でほとんど対応したのです。その結果、府は331億円の黒字計上と財政調整基金も144億円増やしました。
 吉村知事は街頭演説で「1千床単位の大規模コロナ医療センターを作った」と自慢し、「なぜこれを国がやらないのか」と国を批判しましたが、この「大規模センター」の経費に大阪府は1円も負担せず、全額国の負担です。

対策費はわずか全支出の0・3%で全国最悪の感染状況生み出す。

(大阪民主新報、2021年11月28日号より)

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