おおさかナウ

2021年08月04日

スーパーシティ構想
大門参院議員らの視察に同行して
日本共産党河内長野市議団 宮本さとし

 河内長野市が内閣府の「スーパーシティ構想」(※)の指定を目指している問題で、宮本さとし河内長野市議の寄稿文を紹介します。

「監視につながりかねない」
「自治体らしさがなくなる」

 河内長野市が、内閣府の進める「スーパーシティ構想」(別項)の指定を目指している問題で、日本共産党の大門実紀史参院議員らが7月21日、市内の新興住宅地・南花台を視察に訪れ、島田智明市長はじめ担当課長から説明を受け懇談しました。同党の西田さえ子衆院近畿比例候補、堀内照文前衆院議員、河内長野市議団が同席しました。

進む高齢化で

自動運転「クルクル」で南花台を視察する大門氏(2列目右)ら=7月21日、河内長野市内

 南花台は、1980年代、市西南地域の丘陵地に開発された住宅地です。最寄り駅の南海三日市町駅からバスで10分程度のところにあり、UR団地と民間マンション、戸建が広がっています。多いときには1万2千人ほどだった人口は現在は7千人台、高齢化率は42・6%になっています。2小学校、1中学校ありましたが、小学校はすでに統合され、さらに小中一貫校の検討が具体化されています。
 高齢化、人口減少で空き店舗が増加。買い物や高齢者のお出かけの不便も増し、インフラ整備の維持が追いつかないなど、現在の地方都市にある課題を一手に抱えた街となっています。
 市行政は、看護学校の誘致の他、5年ほど前から関西大学やUR都市機構などとも連携し、住民・行政・大学(市域外)・企業(地元スーパー)が一体となったスマートエイジング・シティ「咲っく南花台プロジェクト」に取り組んできました。UR団地の再編で空地となった土地を利用した「こども園」の移設や、公園整備、地元スーパーが主体となって女子サッカーチームのホームスタジアム建設なども計画されています。

申請の背景は

河内長野市側と懇談する大門氏(左端奥1人目)と西田氏(その隣)ら=7月21日、河内長野市内

 こうした取り組みの中で、市が一番力を入れてきたのが、電気自動車スローモビリティの「クルクル」です。7人乗りのゴルフカートを発展させた乗り物で、団地の中を走り、主に高齢者のお出かけ、買い物支援としての運行へスタートを切りました。このように南花台では、少子高齢化に対する危機感が住民とも共有され、まちづくりが進められてきました。
 これまでは、市から住民への丁寧な説明も実行されていることから、日本共産党市議団としても応援する立場で南花台のまちづくりを評価してきました。
 市当局は、「咲っく南花台プロジェクト」で培われた地域住民の高い課題解決力と実行力を土壌に、新たな技術の積極的な導入で地域づくりに革新をもたらすとして、今回、スーパーシティ構想の区域指定への申請に応募したと説明しています。

申請の内容は

 本構想への申請で市は、6つの先端サービスとして、①地域通貨/ポイント=地域の経済循環や活動創出、担い手発掘につなげ地域の持続性を高める②医療・健康=最新技術の活用で受診相談から医薬品受け取りまでが自宅で完結する③人の移動=自動運転と多様なモビリティで全ての人の自由な移動を実現する④物流・ドローン=誰もがドローンでドア・ツー・ドア輸送が利用可能となる⑤安全・安心=移動体センサー・タグなどからの多様なデータで安全を高い次元で実現する⑥教育=アバター(ネットワーク上の仮想空間に作られた分身)も活用して国際連携で子ども・若者のグローバルな学びが可能となる――を実現していくとしています。

視察・懇談で

 視察では、南花台内を走る「クルクル」に試乗し、市側から団地内の説明を聞いた後、「咲っく南花台プロジェクト」の活動拠点として地元スーパーの一部を借り受けている「コノミヤテラス」で説明を受け、懇談しました。
 大門議員は、まちづくりの課題に正面から取り組もうとしている市の姿勢は評価しつつ、スーパーシティ構想の問題点として、国や自治体が持つ個人情報と、企業が持つ買い物やヘルスデーターなどの個人情報を連携集約し、運営主体の民間事業者がそのデータを基に営利事業を展開するものであり、国民を監視する事につながりかねないこと。さらに、国から一つの枠にはめられることで、それぞれの自治体らしさがなくなることなどを指摘。
 内閣府のスーパーシティ構想にとらわれず、市独自で現在取り組んでいる「くるくる」など発展させ、市民の利便性を高めることに力を注ぐべきではと述べました。
 市当局からは、まだ申請している段階であり、国からは情報の一元化を目指す方向などの説明は一切ないとし、個人情報は守られるものとの認識を示しました。
 大門議員は、市民には利便性の向上だけでなく、伴うリスクを説明していくことの重要性を指摘しました。

本来の狙いを

 市民の利便性の向上という意味では住民からの支持が得やすい事業ですが、構想の本来の狙いが見えてくると、問題点や不安材料が浮き彫りになってきます。
 住民のみなさんにスーパーシティ構想が持っている問題点を丁寧に説明しつつ、現在進めている事業を含め、少子化、高齢化による街の課題などに一緒に取り組んでいきたいと思います。

スーパーシティ構想

 AI(人工知能)やビッグデータなど最先端技術を用いて、住民や企業などから集めたさまざまな情報をデジタルで集約し、住民サービスに利用するまちづくり。全国で31の自治体が応募。内閣府は、5地区程度を指定する見通しで、河内長野市は、南花台を候補地として応募しています。
 先の国会で、「スーパーシティ法案(国家戦略特区法改定案)」が可決。日本共産党は「住民の権利や個人のプライバシー保護がないがしろにされる」と反対し、立憲民主党などの共同会派も反対しました。

(大阪民主新報、2021年8月8日・15日合併号より)

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