おおさかナウ

2021年07月03日

公文書改ざん
「赤木ファイル」開示
森友疑惑 今こそ真相解明を

  学校法人森友学園への国有地売却を巡る財務省の公文書改ざんを強要され、自殺した同省近畿財務局(近財)職員の赤木俊夫さん=当時(54)=が、改ざんの過程を詳しく記録した文書「赤木ファイル」の写しを、国は6月22日、遺族側に開示しました。遺族側弁護団が同日、公開。赤木さんの妻雅子さん(50)が国などに損害賠償を求めた訴訟の第4回口頭弁論が翌23日に大阪地裁(中尾彰裁判長)で開かれ、ファイルを証拠採用しました。

国は第三者による再調査を
赤木さん遺族 裁判で意見陳述

 口頭弁論で意見陳述した雅子さんは、提訴の目的に改めて言及。①なぜ夫が自殺に追い込まれなければならなかったのか、その原因と経緯を明らかにする②上司の軽率な指示や判断で追い詰められて自殺する職員が二度と出ないようにする③誰の指示に基づいてどのような改ざんが行われたのか、国民に説明する――としました。

ファイル見て涙が出そうに

公表された「赤木ファイル」の写し。近畿財務局の調書について言及した財務省理財局からのメール

 提訴から1年3カ月余を経てやっと開示された「赤木ファイル」を見て、「夫が苦しい立場に追い込まれながら、赤木ファイルを作ってメモを残してくれたのだと思うと、涙が出そうになりました」と語りました。
 ファイルには雅子さんの知らない事実がたくさん記載され、夫が反対しても一方的に改ざんを指示されて苦しんでいたことが分かったと語りました。しかし、「佐川(宣寿理財局長=当時)さんの指示がどのように夫まで伝わったのか、その具体的な経緯は明らかになっていません」と指摘。国が「なすべき正しいこと」は、理財局内部のメールなどを誠実に提出し、何があったのかすべてを明らかにすることであり、国は第三者による再調査を実施するべきだと求めました。
 原告代理人の生越照幸、松丸正両弁護士は、国が提出したファイルは原本の写しで、メールの差出人や宛先に黒塗りがあることから、原本を裁判所に提出するよう要求しました。

 口頭弁論後に両弁護士が記者会見。松丸氏は、国が提出したファイルには「『別添資料にて局長説明を行いました』というものの、別添資料がついていないなど、欠けた部分がある」と指摘。赤木ファイルに基づいて指揮命令の関係を明らかにする手立てを尽くすことが重要だと述べました。
 また赤木ファイルが2017年2月16日付のメールから始まっていることに言及。安倍首相(当時)が「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁したのは、翌17日であることから、「赤木さん自身が、改ざんの出発点がここからだという認識だったと感じた」と語りました。

〝答弁踏まえ修正を〟 佐川氏が直接指示

首相も議員も辞めると答弁

 森友学園問題が国政の大問題となったのは2017年2月。日本共産党の宮本岳志衆院議員(当時)が同月15日に国会で始めて取り上げて以降、野党の追及が始まりました。安倍晋三首相(当時)は同月17日の衆院予算委員会で「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁します。
 佐川局長は同月24日の衆院予算委員会で、宮本議員の質問に森友学園との交渉記録は「残っていない」「廃棄した」と答弁。改ざんが始まるのはその2日後、2月26日です。

指定した部分削除を指示か

 2月26日午後3時48分、財務省理財局の国有財産審理室の係長(氏名は黒塗り)が送ったメールの件名には「【重要・作業依頼】」「重要度・高」とあり、近畿財務局が作成した調書などについて、次のように記しています。
 「今後開示請求があった際のことを踏まえると、現時点で削除したほうが良いと思われる箇所があります」「当該箇所をマーキングしておきました」
 その上で、近畿財務局の決裁文書に綴られている調書などを修正・差し替え、修正後の文書を本省に「できる限り早急に」メールで送るよう求めており、指定した部分を削るよう求めたことがうかがえます。

昭恵氏の名もマーキングし

財務省理財局がマーキングした箇所には「安倍昭恵総理夫人」の名前も

 森友学園との協議の経過をまとめた添付資料のうち、マーキングされた項目の一つである14年4月28日の記述はこうです。
…なお、打ち合わせの際、「本年4月25日、安倍昭恵総理夫人を現地に案内し、夫人からは『いい土地ですから、前に進めてください。』とのお言葉をいただいた。」との発言あり(森友学園籠池理事長と夫人が現地の前で並んで写っている写真を提示)
 この日、赤木さんは休日に上司から電話で呼び出されて登庁、改ざんを指示されました。

原本との照合 閉会中審査を

第4回口頭弁論後に記者会見する(左から)松丸、生越両弁護士=6月23日、大阪市北区内

 17年3月20日付の本省からのメールは、「現在までの国会答弁を踏まえた上で」、文書を修正するよう佐川局長から「直接指示がありました」と明記しています。財務省が18年6月にまとめた改ざん問題の調査報告書は、佐川氏が「改ざんの方向性を決定付けた」とするだけで、具体的な指示には言及していません。ファイルの開示で新しい事実が浮き彫りになっています。
 財務省は6月24日に衆参の財務金融委員会の理事懇談会にもファイルを提出。同日、ファイルを主題にした野党合同ヒアリング(下部参照)も開かれました。理事懇談会で野党は、提出されたファイルと財務省が持つ原本との照合や、麻生太郎財務相出席の閉会中審査などで真相解明するよう強く求めています。

森友学園への国有地売却と
公文書改ざんを巡る経緯(肩書は当時)

2013年 6月28日 近畿財務局が森友学園の籠池泰典理事長から小学校用地(豊中市内)の取得を検討している旨を聴取
14年 4月28日 近畿財務局から森友学園に資料提出を速やかに行うよう要請。その際、籠池氏は、安倍晋三首相夫人の昭恵氏から「いい土地ですから、前に進めてください」と言われたと伝える
15年 1月27日 大阪府私学審議会の臨時会で、森友学園の小学校新設を条件付きで認可適当に
  9月5日 安倍首相の妻・昭恵氏が森友学園で講演、小学校の名誉校長に就任
16年 6月17日 佐川宣寿氏が財務省理財局長に就任
  20日 近畿財務局が森友学園への国有地売却を決定。鑑定評価額9億5,600万円から8億円あまり安い1億3400万円
17年 2月15日 日本共産党の宮本岳志衆院議員が国会で初めて森友問題で質問(衆院財務金融委員会)
  17日 安倍首相が衆院予算委員会で「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と答弁
  24日 佐川氏が衆院予算委員会で、森友学園との交渉記録は「残っていない」「廃棄した」と答弁
    安倍昭恵氏が名誉校長を辞任したことが判明(安倍首相の国会答弁)
  26日 財務省の決裁文書の改ざんが始まる。
  3月10日 森友学園が小学校新設の認可申請を取り下げ
  7月5日 佐川氏が国税庁長官に就任
  11月22日 会計検査院が検証結果で国有地売却で「値引きの根拠が不十分」と指摘
18年 3月2日 「朝日」が決済文書改ざん問題を報道
  7日 赤木さんが自殺
  9日 佐川氏が国税庁長官を辞任
  12日 財務省が14の決裁文書で数十カ所の改ざんを行っていたことを認める調査結果を公表
  5月31日 大阪地検特捜部が佐川氏らを不起訴処分に
  6月4日 財務省が改ざんの調査結果を公表し、佐川氏ら20人を処分。調査結果では佐川氏が政治家に関する記述について「外に出すわけにはいかない」と改ざんの方向性を「決定付けた」と認定
19年 3月15日 大阪第1検察審査会が佐川氏らについて「不起訴不当」と議決(8月9日に大阪地検特捜部が改めて不起訴に)
20年 3月18日 赤木さんの妻・雅子さんが、国と佐川氏を相手取り大阪地裁に提訴
21年 6月22日 「赤木ファイル」が開示

 「赤木ファイル」の公開を受け、野党合同の「森友問題再検証ヒアリング」が6月24日、国会内で開かれ、日本共産党の清水ただし衆院議員と共に、国会で森友問題を取り上げ続けてきた宮本たけし前衆院議員、辰巳孝太郎前参院議員が出席しました。辰巳前議員の手記を紹介します。

真相究明 一番は政権交代
辰巳孝太郎日本共産党前参院議員

森友問題再検証チームのヒアリングで質問する清水氏。右側2列目1人目から宮本、辰巳両氏=6月24日、国会内

 私と宮本たけしさんは、国会で開かれた森友野党合同ヒヤリングに参加のため、6月24日上京しました。清水ただしさんが仲立ちしていただき、立憲民主党の原口一博国対委員長代行が快く招いてくれたのです。野党合同ヒヤリングは質問通告もなく、丁々発止のやり取りができる場として、森友事件後に一気に定着しました。野党間の情報を共有できるなど、野党共闘の象徴的な舞台でもあります。
 ヒヤリングではいくつもの重要な事実が発覚しました。一つは、今回提出された500ページ以上に及ぶ赤木ファイルは、たくさんの書類を綴じることができるパイプ式ファイルとして、財務省内に保管されていたということです。これまで赤木ファイルについて、存在の有無自体を答えなかったり、「探索中」などと言っていたものが、500ページものファイルでキチンとあったというのです。こんな重要な書類がどこかに埋もれるはずはありません。赤木さんの裁判がなければ表には出てこなかった事でしょう。
 今一つは、2018年6月の財務省調査報告書は、赤木ファイルも参考にして作成されたということです。赤木ファイルでは佐川理財局長(当時)が、改ざんを直接指示したことがメールで記されていますが、報告書に「指示」の文言はなく、「改ざんの方向性を決定づけた」というあいまいな表現となっています。これは今後、国会での追及ポイントとなるでしょう。
 ただ残念ながら赤木ファイルでは、なぜ佐川氏を始めとする財務省が改ざんという犯罪行為に手を染めたのかまでは分かりません。それは、赤木ファイルは赤木さんがやりとりしたメールや資料に限られるからです。2017年2月26日、本格的な改ざんが始まる前の、財務省内や近畿財務局とのやりとりのメールが必要です。合同ヒヤリングで提出を求めましたが、データは消去されているの一点張りでした。もちろんメールは残っているし、復元だってできるでしょう。
 真相究明には政権交代が一番の近道であることを実感したヒヤリングでした。

(大阪民主新報、2021年7月4日号より)

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