おおさかナウ

2015年04月05日

大阪市思想調査アンケート
憲法上の権利を侵害
大阪地裁判決 橋下市長を断罪

 橋下徹大阪市長が業務命令で全職員に対し政治活動への関与や労働組合への参加を尋ねた大阪市の職員アンケートは違法だと職員59人が訴えた訴訟で、大阪地裁(中垣内健治裁判長)は3月30日、設問の一部が職員の憲法上の権利を侵害していると判断し、アンケートへの回答を義務付けたのは違法と認定。慰謝料約35万円を支払うよう市側に命じる判決を言い渡しました。

日弁連なども人権侵害指摘

 職員アンケートは2012年2月、橋下徹市長名で「正確に回答しない場合は処分対象になり得る」と業務命令で実施。当時、市特別顧問だった野村修也弁護士(第2東京弁護士会)らでつくる第三者チームが担当し、22項目の設問に、消防職員らを除く全職員約3万人に記名式で回答が強制されました。労組や市民の批判に加え、日本弁護士会も「重大な人権侵害だ」と中止を求め、回答書は回収され未開封のまま廃棄されました。

威嚇力背景の強制的な手法

完全勝訴!憲法上の権利侵害を認めた判決を喜び合う原告と支援者ら=3月30日、大阪市北区内

完全勝訴!憲法上の権利侵害を認めた判決を喜び合う原告と支援者ら=3月30日、大阪市北区内

 判決は「市長は、その地位に基づき、職員に対し、職務命令を発出する権限を有しているが、いかなる内容の命令であっても発出できるものでない。職員の権利を侵害することがないよう職務上の注意義務を負っているというべきだ」と指摘。さらに拒否すれば懲戒処分にすると言及したことについて、「威嚇力を背景にした強制的な手法は相当性を欠く」としました。

 判決はその上で、アンケート22項目のうち、特定の政治家の応援の有無を尋ねた2項目は職務と関連しないとし憲法13条のプライバシー権侵害に当たると判断。労働組合の活動経験を尋ねた3項目も「労組活動への参加を委縮させる」とし憲法28条の団結権侵害に当たると認定。アンケートへの回答を強制したのは国家賠償法と民法上の違法行為に当たるとし、職員1人当たり6千円を賠償するよう命じました。

市民の方を向いて仕事する

 永谷孝代原告団長は、「原告59人で頑張ってきたことが今日の勝利につながった。職場に戻ったら判決の意義を広げ、勇気と元気を持って市民の方を向いて仕事をしようと伝えていきたい」と語りました。

画期的判決に喜び
原告・支援者ら決意新たに

勝訴判決の意義を確認しあった報告集会=3月30日、大阪市北区内

勝訴判決の意義を確認しあった報告集会=3月30日、大阪市北区内

 「橋下市長のやり方と言い分が裁判で違法だと断罪された」「原告みんなのたたかいで勝ち取った勝訴判決」。大阪市北区の大阪弁護士会館で報告集会が開かれ支援者ら150人が詰めかけました。全面勝訴の判決を確信に、「胸を張って市民のために仕事を進め、住民とともに進む大阪市をつくろう」と喜び誓い合いました。

 判決内容について西晃弁護団事務局長は、「違法な公権力の行使によって、職員の憲法上の権利であるプライバシー権と労働基本権を明確に侵害したと真正面から認めた画期的判決」と強調しました。

今後の裁判と運動に生かし

 一方で西弁護士は、判決が画期的内容であるものの、「重大な課題が混在する」と述べ、思想・良心の自由や人格権の侵害を訴えた原告側主張を認めず、「設問の一部が原告らの憲法上の権利を侵害するに過ぎない」との判断にとどまった問題を指摘。「今後の裁判、運動とたたかいに生かしていく必要がある」と語りました。

 この点をめぐっては弁護団各氏も言及。「権力組織が1人の人間を押しつぶすようなことをしてはいけない。人間の心は自由であり、それをしばりつけ、押さえつけるようなことをしてはならない」「思想・良心の自由の侵害を認めなかった裁判所の判断は重大な課題を残した。運動とたたかいで乗り越えていきたい」などと述べました。

 原告側が、職場で自由な人間関係を築くという課題をめぐり、「思想調査アンケート」が職員の人格権を侵害したと主張した点について、判決は、「人格権の内容として不明瞭なものだ」などと認めませんでした。

心理的葛藤で精神的苦痛を

 判決をめぐって思想調査アンケートの重圧や悪影響が今日まで職場に暗い影を落としている現実には触れないなどの課題が指摘されました。判決が「心理的葛藤を生じさせ、回答したものも、回答しなかったものも、同じように精神的苦痛をこうむったことが認められる」と認定した点について、弁護団が「原告たちの訴えが正しかったと認めた重要な部分」と指摘しました。

 原告団長の永谷孝代さんは「勝利の報告ができることを本当にうれしく思っています。憲法の権利を侵害する大阪市のやり方は絶対に許してはならないと立ち上がり、裁判をたたかってきてよかった。これから私たちは1人の職員として市民にとって住みよい街、住民サービスを考えて発信していきたい」と語りました。

すべての市民に向けた攻撃

 大阪労連・市地区協議会の矢野正之さんは、原告や組合員らを支援し3年続けてきた区役所前の宣伝活動を振り返り、「橋下市長のやり方は、市職員だけでなく大阪で働くすべての労働者と市民に向けられた攻撃と位置づけてたたかってきた。裁判闘争に続き政治戦でも必ず勝利していきたい」と述べました。

 大阪争議団共闘会議の松本文男議長は、「橋下氏が大阪からいなくならないとたたかいは終わらない。1日も早く大阪からすべての争議をなくすため、原告の皆さんと頑張っていきたい」と述べました。

大阪市「思想調査」をめぐる動き
2011年

12月19日

橋下市長が就任

2012年

      

1月12日

職員の労働組合・政治活動を調査する市の第三者チームが発足

2月9日

大阪市が「思想調査アンケート」を実施

2月13日

日本共産党大阪府委員会が調査中止とデータ破棄を要求

2月14日

中本和洋大阪弁護士会長が調査中止を求める声明

2月16日

宇都宮健児日弁連会長が調査中止求める声明

日本共産党の志位和夫委員長が調査中止せよと談話

2月22日

大阪府労働委員会が「不当労働行為のおそれ」と調査続行を差し控えるよう勧告

「思想調査」撤回・廃案を求める府民集会に2000人超参加

3月2日 北山良三日本共産党市議団長が代表質問で完全中止せよと橋下市長を追及
3月13日 山下芳生参院議員が「思想調査」問題を国会追及
4月2日 市特別顧問の野村修也弁護士が調査データ廃棄を表明。橋下市長は謝罪せず開き直り
4月6日 市特別顧問野村氏が労組立ち合いの下でデータ・用紙を廃棄
6月5日 市民らが「思想調査」費用返還せよと住民監査請求
7月30日 「思想調査」で市職員55人(のちに59人)が市を相手取り大阪地裁へ提訴
2013年 3月25日 大阪府労委が「不当労働行為」と認定した命令書
2014年   6月27日 中労委が「不当労働行為」と認定
7月25日 大阪市議会が市の中労委命令取り消し提訴の議案を否決。中労委命令が確定
8月6日 橋下市長が、中労委命令確定を受け、組合側に謝罪

2015年

1月21日

市労連(連合)など5労組と職員が訴えたアンケート裁判で大阪地裁が違憲判決、賠償命令

(大阪民主新報、2015年4月5日付より)

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