おおさかナウ

2015年03月15日

7,公共施設つぶし次々 <シリーズ>大阪壊し 橋下流——維新政治を問う

住民も歴史も無視して

 橋下徹氏が大阪府政・市政に関わる中で、多くの府民・市民が利用する公共施設が閉鎖、破壊に追い込まれ、貴重な研究機関も統廃合されています。

日本最大規模の施設を閉館

 橋下氏は2008年2月の知事就任直後、「財政非常事態」を宣言。「図書館以外は不要」「同じような機能の所に統合すればいい」と、日本最大規模の児童図書などの収集・研究を行っていた府立大阪国際児童文学館が閉館・移転に追い込まれました。

 同文学館は、84年に児童文学研究者の鳥越信さんが12万点の資料を寄贈するに当たり、大阪府が引き続き資料を収集し、整理・研究・公開するための施設として吹田市に開館。児童文学の研究機関としての役割を果たしてきました。

全会一致で採択の請願でも

 同文学館を育てる会が取り組んだ「当面の現地存続を求める請願」が府議会で全会一致で採択されたにも関わらず、橋下氏は住民と議会の総意を無視して、府立中央図書館への移転を強行しました。

 出版社から児童書が出されると同時に、同文学館に寄贈されていましたが、移転後には新刊の寄贈が減りました。大阪国際児童文学振興財団と同文学館が、寄贈依頼活動を行い、移転前の状態を回復したと言います。

 府が同館研究職員への補助金を減らしたため、現在では2人の研究員が週3日の研究活動しかできなくなりました。鳥越さんなど児童文学研究者らと大阪府が、収集研究を続けることを合意して設立された文学館の歴史が無視されています。

書庫スペース、限界に近づき

閉館・移転し補助金が削減された大阪国際児童文学館

閉館・移転し補助金が削減された大阪国際児童文学館

 「大阪府からも図書館からもそれ以外の人からも、児童文学の研究機関は必要だと言われています」と語るのは、大阪国際児童文学館を育てる会・副常任委員長の田丸信堯さん。万博公園の旧児童文学館の建物は100年先でも資料を収集できるように設計されていましたが、移転先の府立中央図書館は増改築ができない地域に建っており、書庫のスペースが限界になっていると言われています。

 田丸さんは、「毎年、万単位の寄贈がある文学館の資料の保存場所が今後の問題になると思います。鳥越さんや大阪府の心意気に共感し、多くの出版社が寄贈をしてくれていますが、10年、20年先には文学館の歴史を知る人がいなくなり、協力をしてくれる人がいなくなってしまうのではないかと心配」と語ります。

年間360万人の利用あるのに

廃止される可能性のある市民プール(写真は西淀川区のもの)

廃止される可能性のある市民プール(写真は西淀川区のもの)

 橋下氏は大阪市長になって以降も数々の市民施設をつぶしてきました(表参照)。

 大阪市を廃止・解体する「特別区設置に関する協定書」には記載されていないものの、「都」構想を前提に廃止される施設があります。年間約360万人の市民が利用する市民プールがその1つです。

 当初の「都」構想の、大阪市を9つの区に分ける案に合わせ、市内24の各区にある市民プールを9つに減らす案を、12年4月に「市政改革プラン」の素案として発表。維新の会は、15年2月議会に平成27年度から、これまで3年ごとに指定をしていた指定管理者を1年間のみにする条例を提出しました。

 日本共産党のてらど月美市議は、審議された委員会の中で「特別区設置」の住民投票後ただちに廃止できるようにするための『都構想ありき』で到底認められない」と問題点を追及しましたが、共産党以外の賛成多数で可決されました。

つぶすのは簡単だけれども

 市民プールで働く加藤麻菜美さん(25)は、「高齢の人が運動や、リハビリのために利用しています。『来たら元気になれる』『リハビリで足を動かすのが楽になった』と言っています」と話します。

 「プールが廃止されたら、生き生きしている人が一気に弱ってしまうのではないかと心配。つぶすのは簡単でも、つくるとなったら莫大な費用も掛かる。減らすのではなく、子どもたちがはしゃいで遊ぶことができるプールなど、増やすことこそベスト。利用者や働く人の事をきちんと考えてほしい」

 長い年月を掛けて、府民・市民らが築き、守り続けてきた施設を「お金がかかる。効果が薄い。無駄だ」と次々に切り捨てる橋下氏。このままあらゆる施設の破壊を続ければ、文化も魅力も無い抜け殻のような大阪にされてしまいます。人間らしい自治体に転換することが求められます。

橋下氏が廃止・縮小した施設(一部)

府立施設

国際児童文学館

09年度末に閉館、府立中央図書館に移転

青少年会館

09年廃止、長谷工に売却。現在はマンションに

ドーンセンタ—

機能縮小。DV等女性の法律・医療相談の廃止

総合青少年野外活動センター

10年度末で廃止

おおさか府民牧場

10年度末で廃止

大阪市立施設

弁天町・城北市民学習センター

13年度末で廃止(市民学習センターは5カ所→3カ所)

伊賀青少年野外活動センター、びわ湖青少年の家

13年度末で廃止(野外活動施設は3カ所→1カ所)

 

いきいきエイジングセンター

 

13年度末で廃止

    
 

環境学習センター

 

大阪南港魚つり園

 

大阪南港野鳥園

 

舞洲野外活動施設

大阪北港ヨットハーバー

橋下市政の今後の廃止計画(主なもの)

市民交流センター

10カ所全廃

子育てプラザ

24カ所→18カ所

老人福祉センター

26カ所→18カ所

スポーツセンター

24カ所→18カ所

プール

24カ所→9カ所

クレオ大阪

北=子育ていろいろ相談センターに統合(15年4月)、西=子ども文化センターを吸収(16年4月)、南・東=他施設との複合化を検討(時期未定)

(大阪民主新報、2015年3月15日付より)

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