おおさかナウ

2021年03月22日

民意に反し、時代に逆行
「広域一元化条例」案は撤回を
大阪市議会都市経済委員会 山中智子市議が追及

 12日開かれた大阪市議会都市経済委員会で日本共産党の山中智子議員が質問に立ち、大阪市の権限や財源を府が奪う「広域一元化条例」案の撤回を迫るとともに、カジノを核とした統合型リゾート(IR)の誘致は断念し、コロナ禍で苦境に立つ中小企業者に手厚い支援を行うよう強く求めました。

まともに答弁できない市長

質問する山中氏=12日、大阪市議会都市経済委員会

 「広域一元化条例」案は、政令指定都市の権限である都市計画の基本的な方針、高速道路や地下鉄などの交通基盤の整備に関する都市計画を決定する権限などを、府に「委託」するとしています。山中氏は、都市計画の権限はこの間、府から大阪市に移譲されてきたと指摘。条例は大阪市が持つ街づくりに関する権限を、自ら放棄して府に渡すもので、「府県が市町村に移譲するのが地方分権であり、時代の流れ。条例案はこれに逆行する」としました。
 山中氏は、大阪市を廃止・分割することの是非を問う2度の住民投票(15年5月、20年11月)で示された民意は「政令市・大阪市を存続させる」ことであり、大阪府への「広域行政の一元化」はノーだということを意味するとし、「住民投票の民意をどう考えるのか」と迫りました。
 松井一郎市長は「共産党とは考え方が違う」と言い募り、「大阪市が残る中で二重行政の解消のためのルールづくりだ」と述べるなど、質問にまともに答えませんでした。

府と大阪市は別々の自治体

 山中氏は、国の第30次地方制度調査会の答申(12年)が「二重行政の解消」の基本は、都道府県から政令指定都市への権限や事務の移譲だと明記していることを示し、「市から府への権限移譲などあり得ないし、必要なことは府と市が別々の自治体として尊重し合うことだ」と反論しました。
 また、条例案の説明資料が「二重行政」の例に挙げる、りんくうゲートタワービル(府)と旧WTCビル(市)の破綻は「政策の失敗」だとし、「ありもしない『二重行政』の弊害をあげつらい、大阪市の権限を弱めることはやめるべき。究極の民主主義と言って人も金も注ぎ込んで2度も実施した住民投票。その結果や示された民意を一片の条例でくつがえすことは許されぬ」と断じました。

カジノ誘致は断念すべきだ

 松井市長や吉村洋文知事が「広域一元化」でやろうとしていることの一つがIR誘致。しかし府市のIR推進局は2月、開業時期を明記しない実施方針の修正案を公表しました。IR事業者に求める展示施設や宿泊施設について規模の縮小や段階的な整備も認めるもので、これによるとIRの完成は45年先になります。
 山中氏はコロナ禍でIR事業者の経営が悪化し、唯一大阪進出を表明している米資本のMGMリゾーツも昨年9月期で516億円の赤字で、同年8月には同社の国内従業員の4分の1に当たる1万8千人を解雇していることを示し、「実施方針の修正は、MGMの負担を軽減し、なんとかつなぎ止めるものとしか思えない」と述べました。
 山中氏は、「大阪IR基本構想」で掲げる「世界最高水準の成長型IRの実現」などはまったく望み薄だと強調。IR推進局が「IRはコロナ後にインバウンド(訪日外国人旅行者)を拡大させ、観光立国を実現するために不可欠」と答えたのに対し、「巨大なハコモノ施設で集客し、3密状態でギャンブル漬けにするIRカジノというビジネスモデルに持続可能性はない」と批判し、誘致を断念するよう主張しました。

コロナ禍から事業者を守れ

 山中氏は、いま市政に求められるのはインバウンド頼みの巨大開発ではなく、コロナ後を展望し、カジノに依存しない観光戦略と、地域経済発展策の再構築を図ることだと強調。「現局面では、コロナに苦しむ市民や事業者を守り抜くことだ」と述べました。
 昨年4月の緊急事態宣言以来、コロナの影響は休業や時短営業を要請された飲食業だけでなく、小売業や製造業など、あらゆる分野に及んでいると指摘。「手つかず」のようになっている飲食業以外の事業者に対して、市としてしっかり支援するよう求めました。

(大阪民主新報、2021年3月21日号より)

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