おおさかナウ

2015年02月22日

4、デリバリーで全員給食  <シリーズ>大阪壊し 橋下流——維新政治を問う

給食と呼べるものではない

4、デリバリーで全員給食

7割超える生徒給食を食べ残し

自校調理で栄養価の高い中学校給食を (写真は府内公立中学校の給食)

自校調理で栄養価の高い中学校給食を
(写真は府内公立中学校の給食)

 「冷えきったお肉の油が白く固まっている」「髪の毛やつけまつげがおかずに付いていた」――中学生の子どもを持つ大阪市の母親が、友人から聞いた話です。

 大阪市は昨年4月から、それまで選択式だったデリバリー方式の学校給食を、中学1年生全員に導入しました。民間業者が調理・配送するものですが、「おかずが冷たい」などの理由で、7割を超える生徒が食べ残しています。

 「中学生たちが健やかに成長できるよう豊かな給食であってほしいと思います」というのは、学校見学で実際に生徒と一緒にデリバリー弁当を試食した女性。メインのおかずは麻婆豆腐でしたが豆腐が冷たくて固く、魚の煮物も量が少なくて、「これで足りるのかと驚いた」と言います。

 「給食をまったく食べないこともあるという生徒や、空腹のままクラブ活動をするという生徒もいます。育ち盛りの子どもたちにそんな思いをさせていいはずがありません。これで学校給食と呼べるのでしょうか」と疑問を投げ掛けます。

 デリバリー給食は元々、大阪市がスクールランチ事業として試行し、13年度から家庭弁当との選択制で正式導入されました。しかし、異物混入や「おかずが冷たい」「おいしくない」などの理由で利用率は10%以下に低迷。それなのに、橋下市政が突然、「全員(デリバリー)給食にする」との方針を打ち出したのです。

問題が多すぎるデリバリー給食

 「中学校給食は保護者みんなの切実な願いです。誰一人として“反対”なんて思いません。でもデリバリー式には問題が多すぎます」。大阪市都島区の1年女子の保護者が語ると、別の生徒の母親も「大阪市はずっと愛情弁当だと言って、給食の実施を否定してきました。やるなら小学校と同じような自校式にしてほしい。デリバリーと聞いて、ママ友みんな“エ~”っとがっかりです」。

 温かく栄養価の高い給食を生徒みんなで楽しむ…。慣れ親しんだ小学校給食をイメージしていたという母親はそう語り、2年生の長男には、卒業まで手作り弁当を持たせるつもりだと言いました。

衛生面での問題やコスト削減で

 中学校給食を調理・配送するのは大阪、大東、東大阪、松原各市の民間事業者ですが、市内4つに分けられた各ブロックごとに数千食の弁当を完成させるため、深夜から調理業務が始まり、学校によっては朝の早い時間帯に到着するケースもあります。

 食中毒防止のため、おかずは配膳室の冷蔵庫に保管され、冷えたままの給食が生徒に提供されてきました。

 昨年4月の「全員給食」導入の際、調理機械や保管設備などが不十分なまま、複数の給食調理事業者が「見切り発車」したとの指摘もあります。

 ある関係者によると、回収した使用済み給食容器を洗浄しないまま長時間放置したり、乾燥機に入らない容器が工場内に並べられたというケースも。頻繁に動物が侵入するなど衛生面でも重大な問題を抱えるある工場では、深夜勤務で慢性的な人手不足のため、長時間過密労働を招いていると言います。

 「献立は市教委がつくるが、食材買い付けは業者が行います。これが問題で、コストを下げるため、『B級・C級』と呼ばれる食材が使われることもある」と告発します。

導入促進事業を創設したものの

 中学校給食は、“子どもが笑う大阪に”と橋下市長が府知事時代から掲げてきた肝煎り政策の1つ。全国最低だった府内公立中学校の給食実施率を改善しようと、2011年度から5年計画で、未実施の市町村に初期投資を補助する「導入促進事業」を創設しました。しかし補助には上限が設定されたため、多くの自治体が校内に調理室を設ける自校式を敬遠し、デリバリーや選択制に流れました。

 大阪府教育委員会のまとめによると、デリバリー方式を導入するのは政令指定都市の大阪、堺2市を含め17市町、このうち10自治体が希望者だけの選択式です。

 大阪府教育委員会のまとめによると、デリバリー方式を導入するのは政令指定都市の大阪、堺2市を含め17市町、このうち10自治体が希望者だけの選択式です。

豊かな学び保障する中学給食を

 広がる不満の声を背景に大阪市は、小学校で調理した給食を周辺の中学校に配送する「親子式」給食を一つの中学校で試行・検証する方針を決め、関連予算を3月定例市議会に提案。しかし大阪市は、親子式や自校式給食が実現するには「10年以上の期間がかかる」(橋下市長)などとしており、市民から「日々成長する目の前の子どもたちのために予算を重点配分できないのか」との意見も出ています。

 大阪市東住吉区で3人の子どもを育てる母親が語ります。

 「家庭の事情で弁当を持参できずお腹を空かした子どもがいるのは、とてもつらいことです。学校給食は教育の一環。“おいしいね”とみんな笑顔になって心身の成長につながるような豊かな学びを保障する給食になってほしい」

「ほとんど食べない」3割も
大阪市の生徒アンケート

 昨年6月、大阪市は市内全128校の生徒約2万5千人を対象にアンケート調査を実施。それによると、給食を「全部食べている」と答えた生徒は10・8%に過ぎず、「ほとんど食べていない」は29・0%、「少しだけ食べている」は18・2%、「半分くらい食べている」が26・2%で、計73・4%が給食を食べ残している実態が浮き彫りになりました。

 課題を尋ねる設問では、生徒9702人(43・9%)が「味の改善」を求め、6634人(30%)が「温かいおかずの提供」を挙げました。

(大阪民主新報、2015年2月22日付より)

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