暮らし、府政、国政と
日本共産党の値打ち
日本共産党府議団の政策パンフ2015春季号「府民とともにくらしの改善、景気回復へ—日本共産党の前進で維新政治退場、安倍政権の暴走ストップ」発行にあたり、宮原たけし団長の寄稿文を2回に分けて紹介します。
府議団「パンフ2015年春季号」とその後の情勢にふれて(上)
日本共産党府議団長 宮原たけし
今回の府会選挙は、府民の暮らしを犠牲にした「大阪都」構想を許すのか、住民福祉(広い意味での)の充実を図る大阪府政への改革を進めるのかの対決です。選挙後に予定される住民投票も見据えた全国的にも注目されているたたかいです。
安倍政権と維新の会が呼応して、憲法改悪を進める動きを強めています。来年の参院選後にも「憲法『改正』の国民投票を」とまで公言しています。憲法改悪の拠点になるのか、憲法改悪ストップ・平和なアジアや世界と共存共栄の日本と大阪をつくるのか、という歴史的重大性を大阪のたたかいは持つものになりつつあります。
私たちはあらゆる知恵と力を振り絞り、大多数の府民の願いに寄り添い選挙勝利・「大阪都」ストップを果たさなくてはなりません。
1、安倍政権の改憲と歴史修正主義を先取りする維新の会
安倍首相の改憲発言に橋下徹大阪市長と松井一郎知事が呼応しています。「憲法改正の発議(衆参それぞれ3分の2)に協力したい」「9条も改正したい」とまで松井知事は言っています。
今度の議会に「近現代史を学ぶ施設」(仮称)の検討予算が府市折半で出されます。たたき台の文章には「大阪のめざす将来像」が触れられています。「近代に至っては『大大阪時代』を迎え、1925年にはわが国最大の都市にまで成長するなど商都としての発展を遂げてきました」「(今後の)大阪は大都市にふさわしい役割を発揮し、国内外からヒト・モノ・カネ・情報が集まる、活力と魅力あふれる都市をめざしています」と書かれています。
「東洋一」と言われた砲兵工廠を持ち、アジアへの侵略の拠点になり、大阪大空襲でおびただしい府民の命が奪われた戦争への反省は一言もありません。アジアや戦争という言葉すらありません。
開設時のテーマとして考えられているのは「東京裁判」です。進めているのは北岡伸一氏(国際大学学長・安倍内閣「安保法制懇」委員)や日暮吉延氏(帝京大教授、東京裁判研究が専門)ら大阪市特別顧問・参与らと市政策企画室です。
松井知事は、日本軍「慰安婦」をめぐる朝日新聞問題を悪用し「強制そのものに根拠がないとわかった。間違った教科書は子どもたちにマイナス」「『補助教材』を配るのが一番いい」「教科書会社にも『間違っていますよ』と言わなければ」(昨年10月21日府議会答弁)と言ってきました。安倍首相が「教科書会社に訂正を求めることはない」(同10月1日)と本音を隠した答弁をせざるを得なかったのと対照的です。
維新の会は安倍政権の憲法改悪の先導的役割を果たそうとし、安倍内閣もそれを利用しています。橋下市長と松井知事が、強権的教育行政を進めてきた中原教育長を留任させ、陰山教育委員長や小河教育委員長職務代理者に「辞めるべき」と圧力をかけているのも、こうした流れの中で見ておく必要があります。
2、「大阪都」の狙いと財源
パンフ2頁には「大阪都」構想の「効果額」(2017年から17年間)1980億円(昨年10月1日、大都市局長の府議会本会議答弁)なるものはスポーツセンターやプール、教育相談事業、住吉市民病院など市民施策の削減に過ぎないことを一覧表にしました(表)。3頁には、6年間の維新府政で1770億円もの福祉、介護、医療、商工業予算が削られた事を示しています(グラフ)。
「大阪都」構想では約1兆5千億円にも上る、カジノ関連も含めた大型開発が計画されています。リニアの大阪延伸の前倒しの調査を国が来年度予算案に計上し、府・市は、うめきた2期開発(千数百億円か)も分担して負担する覚書を結ぼうとしています。大型開発の事業費は今後増える見込みです。通称カジノ議員連盟の最高顧問のひとりを昨年まで安倍首相自身が務めていました。自民党や維新の党はもちろん民主党、公明党の議員の多くも名前を連ねています。佐藤茂樹公明党大阪府本部代表もその一人です。
これをやる財源として㈰大阪市民の暮らし関連の予算の削減や地下鉄民営化㈪約1600億円余りの府財政調整基金と府民施策の一層の切り捨て㈫大阪市解体による財源の吸い上げ—の3つが考えられています。
財政調整基金とは、府が自由に使える1600億円余りの貯金です。予算の時には取り崩し、決算では全く使わなかった、という手法で貯めてきました。それ以外にOTK(大阪府都市開発)株の売却額370億円もあります。
大型開発優先路線は1990年代に展開され、2020年代まで府・大阪市の財政危機の原因となり、橋下市長や松井知事の府・市民施策切り捨ての口実ともなってきました。
これを再び新しい言い方で復活させようとしているのが「大阪都」構想です。
3、維新政治で暮らしと福祉はどうなったか
高齢者住宅改造助成や街かどデイハウス補助金の削減、福祉8団体の補助金(わずか1280万円)の廃止は、彼らの言う高齢者の健康づくりや介護予防が全くのうそであることを示しています。
大阪市バスの敬老パスの有料化によって市バスの乗降客はどんどん減っています。橋下市政になる前の2011年10月と昨年10月では1日平均2万9千人余り減っています。高齢者が外に出にくくなることは、医療や介護の予算増加や、家庭や社会の負担増にもつながります。「成長戦略から逸脱した考え方」(「エコノミスト」記者)、前近代的なものです。
紙面の関係でパンフには書けませんでしたが、国際児童文学館やセンチュリー交響楽団、ドーンセンター、ワッハ上方などの男女共同や文化施策がほとんど削られたことは、社会の荒廃と女性差別が厳しさを増している中で大きな罪だと思います。
学校校門の警備員補助の廃止について「子どもの安全を守るのは市町村の責任」と松井知事は答弁しています。小学校3年以上で少人数学級を独自にしていないのは大阪府など3府県だけです。認定こども園の3歳児クラスの定数25人以下を維持する府の計画に、中原教育長と松井知事が介入して35人にしようとしました。公立高校生の教育費は文科省の調査で年間約16万円かかるのに安倍政権は高校奨学給付金を3万7400円(公立全日制・定時制、第1子)しか認めませんでしたが、松井知事はこれさえバラマキだと言って制服代などを支給対象から外そうとしました。いずれも維新以外の議会の反対で当初計画通りになりましたが、維新府政の子どもへの冷たさは際立っています。
4月から、府から大阪市に子ども医療費助成のお金が3億7千万円以上増える見込みです。橋下市長はそれも原資にして所得制限をなくし、自分の手柄のようにしています。一方で市の子育てプラザや教育相談事業を削減し、子どもにマイナスになることが予想されます。
特別養護老人ホームの府補助を1床あたり100万円削ったこと、2カ所の救命救急センターの補助金廃止、土砂災害予算の削減、小売商業・ものづくり予算の大幅カットなども書いています。それぞれ重大ですが、ここでは省いておきます。
次回は、「大阪都」構想による大型開発優先路線が進めば府民の暮らしと財政がどんな被害を受けるか、大阪を活性化する方向について、パンフ5頁以降を参考に書く予定です。
(大阪民主新報、2015年2月15日付より)