おおさかナウ

2015年02月01日

1、住吉市民病院
シリーズ大阪壊し 橋下流——維新政治を問う

迫る閉院、医療空白の危機

子どもが生まれ、自分も手術した

来年3月末の閉院が迫る住吉市民病院(大阪市住之江区内)。「医療空白」に住民の不安が高まっています。

来年3月末の閉院が迫る住吉市民病院(大阪市住之江区内)。「医療空白」に住民の不安が高まっています。

 「本当に困ります」——大阪市住之江区に住む北川芳江さん(28)=仮名=は、不安を訴えます。

 夫(29)との間に2人の息子に恵まれ、ことし7月には第3子を出産予定。長男(2歳)も次男(0歳)も自宅から自転車で5分の住吉市民病院で生まれました。北川さん自身も昨年夏、子宮頸がんの手術をしています。

 その住吉市民病院が、来年3月末で閉院になります。2年前に廃止を強行した橋下徹市長は、跡地に小児・周産期医療を担う民間病院を誘致するとしてきましたが、2度にわたる公募は不調に。何らかの病院を誘致できたとしても、来年4月の開院には到底間に合いません。

 北川さんの長男は生後6カ月で入院。離れると泣き叫んで治療もできないため、ほぼ24時間付き添ったと振り返ります。「この先、子どもが入院する状態になったときに、どうすればいいのでしょう。府立(急性期・総合医療センター、住吉区)には便数の減った市バスか、タクシーしかありません」

 「民間であっても跡地に病院ができるなら安心」と思っていたという北川さんは、「このままでは病院がなくなってしまう。(橋下市長は)少子化対策と言いますが、バックアップしてくれていないという不満がある。民間が来ないなら、公立でやらないと、どうしようもないのでは」と訴えます。

「二重行政」だと決め付けて廃止

 住吉市民病院は1950年に開設されて以来、住之江・西成・住吉各区を中心とした大阪市南部地域の公立の総合病院として役割を果たしてきました。同地域は民間病院の撤退などで小児・周産期医療が不足。15年度中に耐震化が必要とされ、小児・周産期医療に特化して現地で建て替えることになっていました。

 2011年のダブル選で当選した橋下市長は、同年末に設置した「府市統合本部」を「大阪都」構想を先取りした「バーチャル(仮想)大阪都」と呼び、府立病院と大阪市立病院をも「二重行政」と決め付け、統廃合を推進。まず“標的”となったのが住吉市民病院で、12年5月に現地建て替えを行わずに廃止し、府立急性期・総合医療センターに統合する方針を決定。さらに同センターに新たに小児・周産期医療を担うとして「府市共同母子医療センター(仮称)」の設置を打ち出しました。

 これに対し「住吉市民病院を充実させる市民の会」や地元町会・医師会などが取り組んだ現地存続を求める署名には約7万を超える賛同が寄せられました。橋下市長は13年2月に「小児・周産期の空白に対する区民の不安が多数ある」と認める一方、民間病院の誘致を表明。大阪市会で野党は住吉市民病院の廃止に反対する姿勢を強めていましたが、廃止条例は日本共産党以外の賛成多数で可決されました。

公立で存続こそ、合理的な解決策

 公募失敗を受けて橋下市長は「個別の交渉で誘致する」と言い出しています。大阪市議会民生保健委員会での集中審議(1月22日)で日本共産党の北山良三議員は、公募が不調になったのは、民間病院では小児科医の確保が極めて困難で、小児・周産期医療は採算が取れず経営上のリスクがあり、長期的な運営ができないからだと指摘。個別交渉では医療水準を落とすしかなく、透明性・公平性の面でも不安が大きいとし、民間病院誘致の手法は変更するべきだと主張しました。

 北山議員は「医療空白」の危険を避けるためにも閉院時期を見直するよう求めると同時に、「現地で公立病院として建て替えるのが合理的だ」と強調。橋下市長は閉院の時期は見直さないとし、「ばく大な公金を投入して、公立病院を維持するということは、日本全体の政治行政のあり方として間違っている」などと住吉市民病院の廃止に固執。北山議員は「地域の皆さんの『なんとか残してほしい』という訴えを市長はまったく理解していない」と厳しく批判しました。

     ◇

 「二重行政解消で大阪は豊かになる」と大宣伝し、「大阪都」構想に暴走する橋下・維新の会。実際に大阪でやってきたことは何なのか。シリーズで追います。

住吉市民病院問題での橋下市長の発言

11年

12月 「二重行政」だとして統合の意向

「(府市統合本部で)府市の本来の役割分担に基づく改善方法を明らかにし、順次決定していく…港湾や水道、病院や信用保証協会、産業振興など府と一体運用が可能なものは、どんどん実行に移す」(19日の所信表明)

12年

5月 廃止・統合方針を決定

「(住吉市民病院を廃止し、府立急性期・総合医療センターに集約すれば)確実に機能はアップする」(29日、第12回府市統合本部会議)

7月 存続を求める署名提出に対して

「医療の質が落ちるわけじゃない、今回の統合で。あとは地元に住吉市民病院がなくなるかどうかという話だ。議論しても難しい」(26日の記者会見)

11月 「母子共同医療センター(仮称)」設置方針を決定

「反対勢力はチラシつくって、住吉市民病院が廃止です、府立病院だけが良くなると、そればっかりキャンペーンはっている」

13年

2月 跡地に民間病院誘致を表明

「この地域で小児・周産期の空白に対する区民の不安意識が多数あることは十分認識している…跡地に民間病院を誘致することで不安を解消する解決策としたい」(22日の市議会民生保健委員会で公明党の石原信幸議員に答弁)

3月 公立病院は「でたらめ」

「こういうでたらめな公立病院よりも民間経営でしっかり経営してくれる病院が来てくれれば、それでいいじゃないですか」(6日、市議会本会議で日本共産党の北山良三議員に答弁)

3月 民間病院誘致は議会を通すため。反対世論は「ミクロの声」

「単純に議会通すための条件」「(住之江区などの)ミクロの部分で(反対の)声が沸騰して、そこを収めるために副市長はじめいろいろ考えた最後の策が、この民間病院誘致」(15日、第19回府市統合本部会議)

3月 市議会本会議で廃止条例案を可決

維新、公明、自民、民主系が賛成。日本共産党は反対。付帯決議で「現行の住吉市民病院が担っている産科・小児科等の機能存続と南部医療圏の小児・周産期医療の充実のため、責任を持って民間病院の早期招致を実施すること」と明記(29日)

14年

7月 1回目の公募で事業者が辞退。公募条件の引き下げへ

「病院事業局に任せていたが、公募条件のハードルが高すぎた。大失敗だ」(29日、記者団に)

15年

1月 2回目の公募で事業者が「不適格」に

「公募外で医療機関にアプローチする」(8日、記者団に)/「小児・周産期のみの病院は非常に中途半端」(17日、住之江区内での維新タウンミーティング)/「今後は、公募という手法ではなく、民間病院と個別に話し合い、しっかり誘致を進めたい。民間病院の要望も聞きながら、オール大阪として努力したい」(22日、市議会民生保健委員会で維新の片山一歩議員に答弁)

(大阪民主新報、2015年2月1日付より)

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