おおさかナウ

2020年09月28日

大阪市廃止の「都」構想
でたらめ試算 住民サービス低下必至
NHK討論番組 各党代表の論戦で鮮明に

 大阪市を廃止して4つの「特別区」に分割する、いわゆる「大阪都」構想についての討論番組がNHKの「かんさい熱視線」で18日放送されました。日本共産党の山中智子大阪市議団長、大阪維新の会の松井一郎代表(大阪市長)、自民党の北野妙子大阪市議団幹事長、公明党の肥後洋一朗府議団幹事長が出席。立憲民主党府連の辻元清美代表(衆院議員)もビデオインタビューで発言しました。各党代表の論戦で、「特別区」では住民サービスの低下は避けられないことや、でたらめな試算で財政運営が大変になることなどが鮮明です。

「都」構想を巡って各党代表が討論した「かんさい熱視線」=18日、NHKテレビより

「都」構想を巡って各党代表が討論した「かんさい熱視線」=18日、NHKテレビより

大阪市の廃止――
市民にデメリットだけ
百害あって一利なしだ

 最初に「都」構想への賛否について各氏が発言。山中氏は「大阪市を廃止し、バラバラの『特別区』にすることは、市民にとってデメリットしかなく、百害あって一利なし」と、きっぱり反対を表明。
 コロナ禍で市民が住民投票どころではないのに、大急ぎでやるのは、「都」構想の真の姿が知れ渡らないうちに強行したいとしか思えないと指摘。「(大阪市廃止は)いよいよ絶対にやってはいけない」と述べました。
 NHK大阪・記者デスクの石川康良氏が、「共産党は一貫して反対の姿勢を貫いている。一番の理由は」と聞いたのを、山中氏は「どこをとっても市民が不幸になる」と答えました。

時代の流れに逆行する制度

 自治体は、住民のための仕事はなるべく住民に近いところに下ろすのが時代の流れなのに、大阪市がなくなると消防・水道・下水道は府の仕事になり、住民の声が届きにくくなるとしました。
 大阪市に入る基本的な税(固定資産税、法人市民税など)や、国からの地方交付税が府に入ると指摘。府から小遣いのようにお金をもらう「特別区」は、「自立した一人前の自治体でなくなる」と説明しました。
 戦時中にこの体制にされた東京の特別区は戦後75年間、自治権の拡充へ努力してきたが、「この制度では本当の住民自治はできない。時代遅れだ。もうやめたい」との声が上がっていると紹介。「東京で『やめたい』と言っているものを、いま大阪がやる必要は本当にない」と語りました。

大阪市には二度と戻れない

 北野氏は、住民投票で大阪市廃止が可決されると、二度と大阪市に戻れないと強調。「大阪市がなくなれば、住民サービスが下がる。しっかりと反対ということで訴えたい」と述べました。
 松井氏は、維新知事・市長の下で府市の対立はなかったが、これは人間関係によるもので、「都」構想で制度を変えると発言。肥後氏は、公明党の提案で、より良い制度案になったので賛成だと語りました。

「都」構想の制度――
「二重行政」の弊害ない
カジノが「成長」なのか

 司会の近田雄一アナウンサーは、大阪市を廃止する「都」構想の制度について、成長戦略や観光業は「広域行政」として府に一元化することで、府と大阪市の「二重行政」を解消し、4つの「特別区」で身近な住民サービスを担うと解説。当初の設置コストは241億円、維持費(1年間)は30億円と紹介しました。

府も大阪市も住民のために

 山中氏は、維新が「二重行政の無駄」としてやり玉に挙げてきた大学や病院などについて、「府も大阪市も住民のために一生懸命やるのは全然悪いことでない」と指摘。「政令市としての権限・財源を持つ大阪市をつぶさなければならないような(「二重行政」の)弊害はない」と語りました。
 辻元氏は、殺し文句のように「二重行政」と言うが、カジノを核とした統合型リゾート(IR)や開発を進めると大赤字になるかも知れないと警告。教育や人に投資し、医療体制を強くすることが、街の成長や安心、経済発展につながるとしました。
 北野氏は、成長戦略には「都」構想は必要ではなく、大阪市が政令市のままやっていくのが良いと語りました。

「大阪は成長」と言うけれど

 松井氏は「辻元さんも、北野さんも、山中さんも意見が抽象的だ」と言い募りました。山中氏は、松井氏らは「大阪は成長している」と言うが、現状は府民1人当たりの所得は全国で比べて高いわけでなく、失業率は全国最下位だとし、「何で成長させようとしているのか」と反問。「まずは観光立国を」と述べた松井氏に、「結局、カジノということだ」と批判しました。

住民サービス――
財源が少なくなる中で
「どれを削るか」の話に

権限と財源をむしり取ると

討論する山中氏(左)、松井氏=18日、NHKテレビより

討論する山中氏(左)、松井氏=18日、NHKテレビより

 番組では、70歳以上の大阪市民が対象の敬老パスを取り上げ、継続を求める利用者の切実な訴えを紹介しました。大阪市が独自に実施している住民サービスについて、松井氏や肥後氏は、「特別区設置協定書」は「維持する」と明記しており、「そのまま引き継がれる」と口をそろえました。
 山中氏は「都」構想について、橋下徹氏が知事時代に「大阪市の権限と財源をむしり取る」と公言したことを紹介しました。府と「特別区」の仕事に応じて財源は配分されるというが、「特別区」で職員が増える分は含まれておらず、財源は少なくなると指摘。選挙で選ばれた区長が予算を編成しようとしても、「特別区」ごとに「どれを削るか」と相談するしかない状態になると反論しました。
 北野氏は、「協定書」には「特別区」の設置時点(25年1月1日)で「維持する」と書いているだけで、それ以降は区長を縛るものではないと指摘しました。市民プールを24カ所から9カ所へ減らすなど、市民利用施設の削減が財政シミュレーションに含まれており、「住民サービスが落ちることが前提だ」と語りました。

財政試算――
メトロを当て込む試算
「特別区」は大変になる

「特殊事情」と居直る松井氏

 「特別区」の制度設計を担う副首都推進局が8月に出した財政シミュレーション(更新版)はコロナによる税収減や経済悪化を反映していません。さらに、大阪メトロがコロナで大幅減収なのに、経営が好調だった時点の「中期経営計画」(昨年4月)を基に配当・税収を毎年53~71億円積み増す一方、市民利用施設の削減(約17億円)を前提にしています。
 山中氏は「大阪メトロの大変な黒字という、ないようなものを当て込まなければ、『特別区』は(財政運営が)できない試算だ」と批判しました。松井氏は「コロナは特殊事情で、財政シミュレーションに(メトロの黒字)を入れ込むことは全く問題ない」と居直りました。
 山中氏は、働き方でテレワークやオンラインが入るなど、大阪メトロの乗客数が「コロナ前に戻ることはないのが大方の見方だ」と反論。「大阪メトロが一番右肩上がりだった時の数字を入れるのは大甘で、こんなもので大阪市をつぶし『特別区』にしては、大変なことになる」と述べました。
 辻元氏は、「特別区」の権限は政令市・大阪市に及ばず、市民は損することの方が多いと指摘。財政試算をやり直すべきで、「(住民投票を)今やるというのは論外。大阪市民のことを考えていない、見ていない証しだ」と批判しました。

市民を大事にする大阪市に

 山中氏は、大阪市の税収が来年度500億円落ち込み、市民もしんどくなる中で、暮らしや健康、営業を守るために総力を挙げなければならないのに、大阪市をつぶす作業にかかれば、いま困っている人も助けられないと強調。「そんなことにならないよう、市民を一番大事にする新しい大阪市に変えていきたい」と表明しました。
 北野氏は、中核市や政令市になるときに住民投票はないが、今回は行われるのは「損すること、デメリットがあるからこそ」と指摘。「後で文句を言っても知りませんよ」という念押し、確認の意味での住民投票だと語りました。
 松井氏は「(『特別区』設置には)イニシャルコスト(初期費用)もかかり、人件費も増えるが、これは投資だ」と大阪市廃止に固執。肥後氏は「大阪の発展なくして日本の成長もない」などと述べるにとどまりました。

(大阪民主新報、2020年9月27日号より)

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