おおさかナウ

2020年07月25日

どう見る「大阪モデル」黄信号
コロナ対策歪める 「大阪都」構想
石川共産党府議団長に聞く

 新型コロナ「大阪モデル」の黄信号(警戒信号)が点灯しました。これをどう見るべきか、大阪府が取るべき対策は何か、日本共産党の石川たえ府議団長に聞きました。

「第2波」の危険の直視を 石川府議団長

5回にわたって大阪府にコロナ対策を申し入れてきた共産党府議団(写真は第5回申し入れ)=10日、府庁内

5回にわたって大阪府にコロナ対策を申し入れてきた共産党府議団(写真は第5回申し入れ)=10日、府庁内

――7月12日に黄信号が点灯しましたが。
石川 (点灯させたのが)遅すぎたのでは。すでに大阪は「第2波」の段階だと思います。
 7月13日時点では、直近7日間の新規陽性者数が人口10万人当たり1・72人でしたが、7月20日時点では4・81人と、1週間で3倍近くに急増しています。
 検査の陽性率は、6月はおおむね1%未満でしたが7月中旬以降は5%以上に上がっています。しかも感染経路不明者の割合が、「第1波」拡大時と比べても高い状況です。

急いで具体策を打たないと危険

石川たえminpou

石川たえ府議団長

――黄信号で府はどんな対応を?
石川 現在、ミナミに臨時検査場を設けただけで、あとは若者や「夜の街」に注意を呼び掛けているだけです。学校再開当初は時差登校が行われていましたが、今はほぼ元通りの40人授業です。府は「黄」でも40人授業を続けるとしています。
 中高年にも感染が拡大し、市中感染がすでに広がりつつあると思います。急いで具体策を講じないと危険です。
――「大阪モデル」が変更され、黄信号がつきにくくなったそうですが。
石川 「黄」点灯の基準の1つに、感染経路不明者が前週から少しでも増えたらとしていましたが、これを2倍以上に増えたらとしました。
 以前の基準なら、7月4日に「黄」がついていたのです。吉村洋文知事はそれを見越して、前日の7月3日にあわてて対策本部会議を開き、基準緩和したと言われています。
――緩和したのに9日後に黄信号が点灯したということですか?

専門家の異論を押し切ってまで

石川 それだけ感染が広がりつつあるということです。
 今回、「大阪モデル」の赤信号(非常事態)の基準も、感染者の重症病床使用率が70%を超えた場合としました。
 ところが府の専門家会議委員から、「70%に達する以前に医療崩壊は始まっている可能性が高い」など、強い異論が出されました。専門家会議の座長からは、せめて50%にという対案が出されました。それを押し切って、より「赤」がつきにくい基準にしたのです。

基準緩和の裏に「都」構想

――知事はなぜ「大阪モデル」緩和にこだわったのですか?
石川 「大阪都」構想を何が何でも実現するためと言われています。
 知事は11月に「都」構想の住民投票を行うつもりですが、もし「赤」が点灯すれば、「非常事態中なのに住民投票なんかやるのか」という大阪市民・府民の批判を免れません。「赤」をつきにくくすれば感染拡大が見えにくくなり、批判をかわせるというわけです。
 実際、松井一郎大阪市長は、緩和直後の7月7日、「非常事態(赤信号)にならない限り住民投票は行う」と述べています。
――「大阪モデル」緩和は、住民投票を確実に実施するためということですか?

協定書議決やめコロナの議論を

石川 そう考えてもおかしくないと思います。行政による専門家会議の複数の委員があれほどきっぱり反対したのに、当初の案が修正もされず通されるのは異例です。「第2波」感染拡大を覆い隠し、「都」構想を優先させるためだったと言わざるをえません。
 8月に「都」構想の協定書案を議決するための臨時府議会が開かれようとしています。私たちはその議会を新型コロナ対策を議論する場にし、協定書案の採決は延期するよう求めています。

府は緊急対策を

――感染防止のために府がいまとるべき対応は?
石川 感染症の専門家と医療現場の意見を基本に、緩和した「大阪モデル」基準を見直し、具体的な手立てを急ぐことです。

PCR検査を大幅に引き上げよ

 私たちは先日、府に5回目となる申し入れを行いました。そこではまず、1日1500~2千件にとどまっているPCR検査能力を1万~2万件に引き上げ、検査機関と検体採取場所、機器と専門職員を確保することを求めています。民間医療機関まかせにせずに、行政の責任で行うべきです。
――大阪の検査件数は多いといわれていましたが?
石川 ようやく1日1千件を超えていますが、それでも東京都の4分の1程度です。「誰でも検査したら、オーバーシュートする」などという理由で、いまだに症状のある人と濃厚接触者が検査対象の中心だからです。
 かかりつけ医が判断すれば検査する。感染拡大地域や業種はもちろん、医療・福祉従事者、鉄道、バス、消防、ごみ収集など社会生活の維持に欠かせない仕事をしている方への検査を大規模に進めることが大事です。
――コロナ専門病院を新しく建てると報じられています。これで医療体制は十分ですか?

病床と医療用資材の確保すぐに

石川 現在の重症病床使用率は10%未満ですが、中高年に感染拡大すれば、一気に埋まると専門家は指摘しています。
 府の病床確保目標1615床は、政府専門家会議による感染拡大見通しの少ない値をとったものです。それ以上に拡大する可能性があり、3千床は確保する必要があると思います。そのためには、感染者入院病院や、バックアップする医療機関への十分な補償が不可欠です。
――松井市長は、防護服がわりに雨がっぱの寄付を呼び掛けました。医療資材は足りていますか?
石川 府の今の備蓄量は、サージカルマスクでは111万枚、防護服は33万着です。「第1波」で、サージカルマスク1061万枚、防護服141万着を医療機関などに供給しましたが、現場では全く足りなかった。大量確保が必要です。
――「保健所に電話がつながらない」という声をよく聞きました。

維新府政で予算が4分の3まで

石川 各保健所の電話窓口などは補強されていますが、まだ不十分です。 かつて府内に54カ所あった保健所は、2000年に18カ所に減らされました。現在9カ所ある府の保健所の、人件費を除いた予算の合計は、維新府政の間に4分の3にまで減らされています。事務職員が減らされ保健師が事務作業に追われ、地域に足を運ぶ本来の仕事ができないという状況もあります。
 「第2波」を抑え込む鍵は、保健所の思い切った強化と病床確保だと思います。
――学校で生徒や教師が感染したと報道されています。

府は少人数学級実現を急ぐべき

石川 40人クラスのままでは、〝3密〟が避けられません。緊急に授業中の教室内の人数を減らすこと、そのための教師をはじめマンパワーと教室の確保が必要です。
 教員を2850人増やせば府内全ての公立小中学校全学年で、30人以下学級ができます。6千人増やせば20人学級が実現できます。国で議論が始まっていますが、府が独自の財政出動を行い30人、20人学級実施を急ぐべきです。
――再度の休業要請について、知事は幅広い業種には求めないと述べていますが。

休業要請には十分な補償が必要

石川 地域・業種を限定して休業要請を行うことも視野に入れるべきだと思います。当然、対象事業者への十分な休業補償が欠かせません。

「都構想よりコロナ対策を」の共同を

――一つ一つが大きな課題だと思いますが、実現の見通しは?
石川 府民世論を広げ、労働者、企業、医療・福祉・教育現場など、オール大阪で対策に臨むことです。
 その足かせとなる「都」構想は、断念する時です。私たちもあらゆる機会をとらえ、論戦と運動に全力を尽くします。

(大阪民主新報、2020年7月26日号より)

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