府内全域で「顔認証」や行動追跡
安倍政権・維新狙う大阪スーパーシティ構想
超監視社会の危険
人工知能(AI)やビッグデータなど先端技術を活用した「未来都市」の実現を目指すという政府の「スーパーシティ構想」。先の通常国会で改正国家戦略特区法が成立(9月1日施行)し、年内にも全国数カ所を区域指定するスケジュールが確認されています。大阪では2025年の万博開催地の夢洲エリアに、カジノ・IRと一体に顔認証や行動追跡などの監視システムを導入する都市計画「大阪スーパーシティ構想」が進んでいます。
学習会で大門参院議員が訴え
竹中平蔵氏が感謝した法案成立
「民間提唱のスーパーシティ法案を成立していただき、ありがとうございます」
首相官邸で6月10日に開かれた第45回国家戦略特区諮問会議で、民間議員を務める竹中平蔵氏(人材派遣大手・パソナ取締役会長)はこう語り、「法案成立も大変だったが、実行に移すのはもっと大変。思い切った改革だと自治体に徹底していただきたい」と注文を付けました。
「強固な規制を緩和する試行こそが、スーパーシティで最も大事だ」。民間議員らはマイナンバーカードの全面活用や混合診療拡大を求める発言を続け、スーパーシティの公募を秋にも始め、年内に区域指定するスケジュールを決定。諮問会議議長の安倍晋三首相は、「大胆な規制改革を一気に進める思い切った改革が必要。その代表がスーパーシティ」と語り、竹中氏らの注文通りに「岩盤規制」の見直しを関係省庁に指示しました。
法改正に先立つ昨年秋、大阪府・大阪市は2025年大阪万博予定地でカジノ誘致が狙われる大阪湾の人工島・夢洲を含むエリアを、スーパーシティにするアイデアを内閣府に提示しました。
夢洲だけでなく府全域で顔認証
内閣府のアイデア公募には府・市を含め55自治体が応募。自治体を選定する国家戦略特区諮問会議で昨年秋、松井一郎大阪市長が構想を延々とアピールし、公正・中立であるべき諮問会議一員の竹中氏が、安倍首相に前向きに対応するよう要請する一幕もありました。
大阪スーパーシティ構想は、「大阪まるごと顔パス」という監視カメラと防犯システムを連携させたシステムで、施設入場やキャッシュレス決済、公共交通に顔認証システムを導入しようというものです。
夢洲エリア限定ではなく、アイデア文書には「夢洲を起点に大阪全域で『顔認証』を導入」すると明記されています。
6月24日、大阪市内で開かれた「大阪スーパーシティを考える学習会」(あかん!カジノ女性アピール主催)で講師を務めた日本共産党の大門実紀史参院議員は、「スーパーシティ法は、成立を強く求めた維新のために安倍政権が通したもの」と指摘。「刑法違反のカジノ解禁に道を開いたカジノ法成立と同じ構図」と語りました。
人格を丸裸にする危険性がある
懸念される重大問題は個人情報の保護です。
「集められた個々のデータで個人の特定はできない」とする政府説明に対し、「個々のデータが問題なのではなく、集めたデータをAIが分析・活用することで、大問題が生じる」と大門氏は反論します。
例えば既往症などの健康データやネットの検索履歴、通販リストやクレジット決済、位置情報など、各事業体が独自に管理してきた情報が、AIによってひも付けられ分析される恐れがあります。悪意を持ってビッグデータを意図的に分析すれば、個人が特定されない保証はないと大門氏は語りました。「24時間、日常生活すべてが筒抜けとなり、個人の趣味や嗜好、思考パターンまで分析の対象となってしまう。人格さえ丸裸にするような危険性がある」と批判しました。
私たちは実験用マウスではない
世界中のスーパーシティのモデルになると宣伝され、安倍政権が先進事例と紹介したカナダのトロントでは、監視カメラで得た市民の行動記録を都市運営などに活用する計画に、「監視社会の暗黒郷にするな」と批判の声が広がり、米グーグル系企業が5月、事業徹底に追い込まれました。
中国・杭州で導入された交通管理システムでは、監視カメラによる自動撮影など住民監視が一層強化。各地で「監視資本主義の植民地化実験だ」、「私たちはIT企業の実験用マウスではない」など痛烈な批判が広がっています。
最終的には企業の利益が目的に
大門氏は、スーパーシティで新たに提供されるサービスは、最終的には企業の利益が目的だと語り、「〝便利になる〟とのイメージとは反対の事態も想定され、住民合意も形だけで保証されない」と指摘。「中国のような監視社会に日本を導くもので、プライバシーと人権の侵害を許してはならない。府民生活全般に影響が及ぶスーパーシティの問題点を語り、共同を広げていこう」と呼び掛けました。
スーパーシティ |
(大阪民主新報、2020年7月6日号より)